読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

つのへび日記

こなやぎのブログです。2015年4月から1年間滞在した中国江蘇省・南通市のこと、手仕事、語学、短歌など。

6/28水戸岡鋭治トーク@熊本市現代美術館(覚え書き)

感想メモ 長文 日記 熊本 汽車 イベント情報

九州に住んでいてよかったと思うのは、水戸岡さんの電車にたくさん乗れることです。

実家に住んでいた10代のころから、ハウステンボス号などにはふつうに乗っていたのですが、そのころは電車のデザイナーのことなど気にかけたこともなく。

 

関西在住時に、和歌山電鐡たま電車(リンク先はFlickr)に乗って以来の、浅いファンですが、小さな電車はかわいく、大きな電車は美しい、鉄のかたまりなのに柔らかい、そんな水戸岡デザインに魅せられてきました。

あそぼーい! - つのへび日記

憧れのSL人吉 - つのへび日記

夢の食堂車、肥薩おれんじ食堂で鹿児島へ - つのへび日記

 

そして、去年の初めにJR博多シティ内で開催された展覧会が、ついにやってきました!

熊本市現代美術館|水戸岡鋭治からのプレゼントーまちと人を幸福にするデザイン展

 

初日のトークイベントは大盛況で、15分ほど遅れてしまった私は立ち見になってしまいましたが、生で水戸岡さんの話を聴くというのがそれはもう死ぬまでの夢の一つと言って差し支えないほどの体験だったので、一切苦になりませんでした。

トークは主に聴衆からの質問に答える形式で進んで行きましたが、質問とか話しかけるとかいう恐れ多いことが出来ようはずもなく、ひたすら聴きに徹しておりました(はるか後方にいたため質問の順番が回ってこなかったというのもあるのですが)。

 

市電開業90周年事業として、今秋から氏がデザインを手掛けた電車が走ることにちなんでの展覧会なので、内容は以前のものに加えて、熊本の街づくりについての試論やドローイングのコーナーが新設されています。JR博多シティでの展示と同様に、会場内にはレールが敷かれ、ミニトレイン「赤いつばめ電車」が子供たちを載せて運行しています。

 

以下、印象に残った話をいくつか抜粋します。別々の質問で出た回答を一つにまとめたり、ことばを補完した部分もありますが。

 

新市電について

熊本の人は自分たちの街を、外へほとんど自慢しないのではないか。街を歩いていても静かでしょう。あまり話さないイメージがある。

もっと街の素晴らしさを自慢した方がいい。特に熊本城をバックに市電がカーブしながら入ってくるところなど、日本の他のどの町にもない、文化財にしてもいい位のすごい景色だ。これらの、何が素晴らしいか、何が美しいものなのかというようなことを子にきちんと言って教えなければならない。

僕が電車のデザインをする時に一番力を入れるのは窓枠。きちんとした額縁に納めてあげることで、今まで見ていた何気ない景色が「こんないいものだったのか!」と気付く。新しい市電に乗って、自分たちの街の良さに改めて気付いてほしい。

 

景観保護のために

初めて江津湖に行った時、本当に感動してスケッチを50枚くらい書いた。天然の湧水で、水前寺公園から下江津の方まで広汎な湖を形成しているというのは誇れること。日本一の湖になれますよ。こういうことを、行政がやってくれるからとか、国が、地域が、役人がやってくれるからとか思っていてはいけません。一人ひとりが、良くしていくんだ、いい景観をいいままで保存していくんだという気持ちでいないとダメになってしまう。

そのためには一人ひとりがもっと学習して、勉強していかないといけない。子供のケンカでも、口げんかをもっとするべきだ。口で勝てないから手を出す、これが一番いけない。大人でも、説得するだけの言葉を持てなくて、知力が足りないから、すぐ武力に訴えようとする。この状態が一番みっともない。日本人は理解と同意をすぐ混同するが、「君の話はわかったが、僕は反対だ」から始まる、発展的な議論ができるようにならなければいけない。

 

夢の列車

一番のお気に入りは787系。今考えても、素人同然の僕がどうやってあんな列車を作れたんだろう、あんないいデザイン誰が作ったんだろうとさえ思うような、一番良くできた車両。

実現できないと思うが、究極の夢は、その787系で九州をだらだら一周する旅客列車を走らせること。好きな所で乗って、降りて、旅館に泊まるような旅が出来る列車。

もうひとつ作りたいのはファミリー寝台車。夜になっても消灯しなくていい、寝ないで夜通し家族でぺちゃくちゃおしゃべりして、お腹が空いたら停まった駅の夜鳴きそばをすすったり…そういう旅をプロデュースしたい。

 

デザインについて

僕には絵ごころなんていうものはない。お金を貰って、言われた通りの絵を描いているというだけなので(会場笑)、自分の内にあるものを表現するとか、そういうことはできない。ただ、僕の描く線はフリーハンドだ。直線でもフリーハンドで描くと、そこに無限性が生まれる。脳は頭にあると皆思ってるが、脳は先端(手指)にあるんだから、手を動かせ、手で描けと僕は言っているんです。キーボードなんて馬鹿でも同じように押せるんだから。

(100年残るデザインとは?と質問した方から「水戸岡さんのデザインが100年先も残るよう願っています」とのコメントを受けて)えー…それはありません(会場笑)。

電車の部品は100年なんていう年月に耐えられるようなものじゃない。もって2,30年でしょう。僕は、今いる同時代の人に、僕の列車に乗って旅をしてもらって、その旅の思い出をそれぞれに作ってもらうということ、ただそれだけですね。

 

一時間ちかいトークはこれだけではなかったのですが、特に印象に残ったことの中から抜粋しました。ちびっこ、デザイン志望や機械科の学生、鉄道ファン、氏と同世代の方などさまざまでしたが、終始和やかでした。ちびっこから「新800系はカッコ悪いと思うんですが、なぜあんな顔(出目金)にしたのですか」と突っ込まれて氏が苦笑いする場面もありました。(ちなみに回答は「カーデザインの流行を受けて、自分でもああいうのを作ってみたくなったから」とのこと)

 

会期は9月15日までと長く、小中学生は入場無料。

今後もサイン会や市長とのトークセッションなどイベントが続きます。

すでに図録も買ったけれど、少なくともあと一回は行ってしまいそうです。