つのへび日記

こなやぎのブログです。手仕事、語学、短歌、読書や映画など。

ビジネスで使える素敵なボールペンを考える前に、万年筆の欠点3つを洗い出してみた

(最終更新日:2022/8/27)

きっかけは増田

「社会人だったらもう少しいいペン使った方いいんじゃないか」   先輩から..

モンブランは本体だけじゃなくメーカー修理の費用が高すぎるから、二択ならパーカーかな。若い人ならクロスお勧め!でも個人的にはウォーターマン推し。

2015/11/18 00:18

 

ゆうべ、この「はてな匿名ダイアリー」のエントリを読んでいて、ブコメだけでは語り足りなかったので、今日は好きなボールペンのことを書きたいと思います。思ったのですが、書いていると前書きがあまりにも長くなってしまったので、今回のエントリはその前章である「なぜ社会人のペン=ボールペンなのか?万年筆じゃだめなのか?」という部分にとどめておきます。

愛してやまない万年筆にも、欠点はある

私は基本的に万年筆ユーザーです。

上のエントリのブコメにも万年筆派が多数いらっしゃいましたが、万年筆ユーザーとて、会社勤めをしていればボールペンを使う必要に迫られます。

なぜ万年筆ではボールペンの代わりができないか? というと、理由はいくつかあります。

欠点1:インクが消える可能性がある

万年筆で使用するインクの多くは水溶性です。

そのため書類への書き込みには向きません。

 

昔の海外の映画などでは万年筆で署名していますが、書き手のクセが筆跡に現れやすい万年筆は他人に真似されにくく、そのために誰もがそれぞれ自分の万年筆で署名していたという背景があります。

また、当時のインクも現在の多くのメーカーが使う染料インクとは異なる成分なので、現在重要書類に使ってもいいという理由にはなりません。

とはいえ、「ボールペンで」という指定がとくになければ、自己責任で使ってもいいのかなと私は思います。

向きか、不向きかでいえば、不向きですけど。

欠点2:ビジネスのスピード感に合わないキャップ式

万年筆は原則としてキャップ式なので、使うたびにキャップを開け閉めしなければなりません。

そして、キャップを外しっぱなしにすると、ペン先が乾いてしまい、次に書こうとしたときにインクが出にくくなったり、使い続けるうちにインク詰まりが発生する原因になったりします。

 

自分の時間に悠々と使うならともかく、やはり仕事中となるとキャップ式の筆記具はいささか非効率です。

キャップを落としたり、机の上で行方不明になったりしたら、それを拾ったり探したりするのも煩わしいです。

それでも万年筆を使いたいなら

上記2点の欠点については、解決案が一応あります。

そして、残念ながらカバーできない決定的な欠点ももう1点あるのですが、それは後述します。

解決策1:インクが消える→消えにくいインクを使う

第一の欠点は、乾くと水に溶けなくなるカーボンインクや顔料インクを使用することで回避できます。

国産だとセーラーやプラチナから出ています。

これらは一般的な万年筆のインクよりも、黒々とはっきりした色が出ます。

乾けば消えにくいという特性だけでなく、その「しっかりした発色」が好きで、これらのインクを愛好する人も多いようです。

このあたりは、普通の油性よりもゲルインクを好むボールペンユーザーにも通じますね。

 

(カーボンインク、顔料インク、ナノカーボンインクはそれぞれ異なるものですが、これらの「非水溶性インク」を以下まとめて便宜的に「カーボンインク」と書きます。)

注)非水溶性インクは自己責任で 

ただし!乾くと水に溶けないというカーボンインクの特徴は、そのまま欠点にもなります。

カーボンインクを入れた万年筆を、毎日使い続ければ、即ちインクを流動させ続ければ問題はないのですが、何かの都合でしばらく放置してしまうと、ペン先はがちがちに固まります。

 

普通の万年筆インクならば、しばらく水につけておくとまた使えるようになりますが、なにしろカーボンインクなので、文房具屋さんに行って洗浄してもらわないといけません。

下手を打つと、メーカー修理が必要になるかもしれません。

 

そしてメーカーは基本的に、純正インクの使用を推奨しています。

他社インクを入れて生じた問題はユーザー責任ですよ、という感じです。

直してはもらえますが、ユーザー保証期間内でも、実費になる可能性が高いです。

解決策2:キャップ式が仕事向きじゃない→ノック式万年筆を使う

第二の欠点については、パイロットからノック式万年筆「キャップレス」が出ていますので、それを使えば問題なし。

私も一本欲しいとずっと思い続けてます。

 

スマートな機能性から、最近出来たものかな?と思ってしまいますが、意外と歴史があって、何代もマイナーチェンジを繰り返しているロングセラーなんですよ。 

中には上記1の解決策と組み合わせて、カーボンインクを入れたキャップレスを仕事用に使うという万年筆ユーザーもいます。

ただ、パイロットからはカーボンインクは出ていないため、これをやっちゃうと自動的に前述のユーザー責任コース一直線なので、気を付けてください。

それでも万年筆が不向きな理由:第3の欠点

と、このように上記の欠点をカバーしてもなお、万年筆がビジネスに不向きな理由があります。

それは一つに、万年筆最大の利点「インクをペン先に流すことによって、筆圧をかけずに筆記できる」という機構そのものによるものです。

 

つまり、万年筆のペン先は、「筆圧をかけずに書ける」というよりも、筆圧をかけられないようにできているのです。

もし強い筆圧をかけるとペン先が歪んでしまい、紙との接地面に違和感が生じたり、インクの出が悪くなったりと、メンテナンスが必要な状態になってしまいます。

 

お仕事で伝票類を扱う方であれば、もうお分かりかと思います。

筆圧をかけられないとなると、複写式の書類に記入ができません。

「自分の仕事には複写式の書類なんてそうそうないから、その時はボールペンを使うよ」というのも、あまり効率のいいことではありません。

 

上記の匿名ダイアリーのエントリのような方なら、契約書類へのサインなどに際して、胸に差しておいて顧客にお貸しするというシチュエーションを想定し「良いのを使え」と言われているのかもしれません。

それならペン先がユーザーの書きグセになじむ万年筆は、貸し借りに不向きであり、やはり不向きということになります。

 

結局「誰がどう握っても、筆圧さえかけてペン自体に問題がなければちゃんとインクが出る」ボールペンの気安さは、ビジネスシーンにおいては大変優れているものだと思います。

 

そして、契約の場面などでやや重量感のある、金属の硬質な感触を伝えるペンを「どうぞ」などとうやうやしく渡されることで、雰囲気にメリハリが生まれ、相手に「何か特別なことをしている!」という印象を持たせることができていいんじゃないでしょうか。

 

次回のエントリでは、好きなボールペンをいくつか挙げたいと思います。

左利きの万年筆ユーザーたる私が勝手に選ぶので、そのようなバイアスがかかっているものとして読んでもらえればうれしいです。

⇒書きました!