つのへび日記

こなやぎのブログです。手仕事、語学、短歌、読書や映画など。

大旦那様の「ザ・人たらし」な感じがとてもよい(『あさが来た』第70話の感想)

もし私がTwitterを使える環境にあるのならばたぶんさらっとツイートしてると思うのですが、そこはそれ、中国在住の悲しさで、Twitter始め他国の主要SNSにはアクセスできないので、つぶやくことはできず、でも今の気持ちをちょっと書き留めておきたいので、今回は掲題の内容についてちょっと書こうと思います。

日本にいたときはこの数年テレビを持たなかったのもあり、ドラマを見ることはあまりなかったのですが、中国に来てからは、逆に現在放送中のドラマがどんなものか、誰が出ているか、などに以前より少し詳しくなりました。

一番大きい理由としては、時々交流している中国人の日本語学習者のあいだで、人気があるコンテンツの一つがドラマだからです。

日本のアニメ、漫画、ゲームなどにもファンはいますが、やっぱり本国同様に、いや、本国以上に、これらを好きな人は自他ともに「オタク」という認識を持っているようです。そして若い人が多いです。

ドラマはいわゆる「リア充」層からも、30代以上の世代からも、広く人気があります。そして情報が早い!

中国に来る前は、勝手なイメージで「昔のテレビ番組が人気があったりするのかな~」と思っていたのですが(原因の一つとしては、私と同世代の中国の友人が「酒井法子が好き」という、なかなか「ベタ」な発言をしていたからかもしれません)、実際に「ドラマが好きです」という人にあって何が好きか聞いてみると「天皇の料理番」や「デスノート」などと、当時放映中のドラマの名前がたくさん挙がって、とても驚きました。
やっぱりインターネットのおかげか、ドラマもバラエティも、日本とほぼリアルタイムで視聴している人が多いです。ちなみに今期は「5→9」が人気があったようですね。

本題に入ります! 

今年下期の連続テレビ小説『あさが来た』を初めて視聴したのは、国慶節期間中に遊びに行った上海のホテルで付けたテレビでたまたまやっていたからでした。たしか第8話あたりで、ヒロインが子役から大きくなったばかりでした(というのも、後から知るんですけど)。

それから数日間何となくずっと気にかかっていて、結局その次の週くらいにはじめから全話鑑賞して、追いついて、今はほぼ毎日、当日~一日遅れくらいの時差で、視聴しています。

キャストが皆はまり役だし上手だし、キャラクターも魅力的だし、毎回15分のストーリーもとてもよくできているし、10年ぶりくらいに朝ドラを楽しんで見ています。(ちなみに前回はまったのは『純情きらり』でしたが、後半戦争が始まってしばらくしてからは見るのがつらくなって離脱してしまいました。今回はどうなるか…)

これまでは、自分でにやにや楽しんだり、夫に半ば無理矢理見せたり、Yahoo!のリアルタイム検索で「♯あさが来た」で他の方の感想を見て楽しむだけだったのですが(これならTwitterの書き込みや画像が見れるのです)、このたび、昨日12/17放送の第70話にものすごく衝撃を受けたので、語りたくなってしまいました。(以下、ドラマの内容を含みます)

これまでのあらすじとしては、ヒロインあさの嫁ぎ先・加野屋が経営する炭坑で事故が起き、事故を仕組んだ納屋頭(炭坑夫のリーダー格の一人)・サトシは鉱山から逃亡。サトシは実はあさの夫・新次郎の幼なじみであり、加野屋の元番頭の一人息子・松造でした。彼の一家は暖簾分けされて独立したものの、ほどなく経営に失敗し離散しており、サトシ=松造は自分達を見殺しにした加野屋をずっと恨んでいて…というもの。

昨日は、松造は新次郎と邂逅を果たし、あさの説得もあってその場で二人に謝罪。それから加野屋の大旦那・正吉にも侘びに行き、和解するという内容でした。

松造が口火を切る前に、正吉が謝罪します。あの時、松造の一家を助けられなかったこと。商人同士のしきたりとは言え、借金の依頼を拒絶したことをずっと後悔していたこと。そして松造の前に出された茶菓子は、彼の父の好物でした。すでに亡くなっている彼の人柄を褒める大旦那。促されて茶菓子を食べながら涙に暮れる松造……。

人情味たっぷりのものすごくいいシーンなんですが、何というか、私は感動というよりも「大旦那様、恐ろしい!怖い!」という気持ちが先に立ってしまいました。だってもう、隙がなさすぎる。老獪、というんでしょうか。

相手が謝罪しさえすれば丸く収まってしまう場で、すんなり謝らせてくれず、逆に自分から過去の非について持ち出し情にたっぷり訴え、とどめに茶菓子という小道具!

もちろんこれらの行動には真心があってのことなのかもしれませんが(これまでの流れから、そう解釈するのが至極真っ当でしょう)、いや、真心ありきとしても、無意識にこういう人心掌握術に長けた行動をさらっとやってしまうところが、大阪一の大店の主人の最晩年というに相応しく、なんかもう、怖いなあ!と思ったわけです。

そして、見る方にこういう解釈の余地を与えてしまうキャラ造形と演技をやってのける近藤正臣という俳優、ただただすごいです。もし、今までの正吉像が、ヒロインをただただ全肯定して応援する100%いい人!という扱いなら、まず「こんな好々爺が大阪一の両替商?」とどうしても説得力に欠けますし、件のシーンはこんなに深みのある場面にはならなかったと思います。
いつもは私に誘われて仕方なしに見ている夫にも好評で、曰く「先代の円楽がやる人情噺を聴いてるみたいで、ほんのちょっと、実は腹黒い?と思わせるところがすごくハマり役」だそうです。

というわけで、もし未見の方で興味が湧いてきたという方はぜひ年末の総集編をご覧ください!

中国では『阿浅来了(「阿」は女性や子供、仲のいい人の名前の前に付ける親称で、「あさちゃんが来た」という感じ)』と訳されてファンも多い本作ですが、なにせメインの大阪弁船場言葉)のほか京都弁、薩摩弁、筑豊弁などの方言が多いので、私の周りの日本語学習者にはあまり人気がないのです。

というわけで、今日もこれから最新話を見ようと思います…。