編み物が好きで、小学三年生頃から毎年寒くなると何かしら作っています。
今年は婚姻一年目だし、なにか大作でもと思い立ちセーターを編むことに。
いいデザインを探して手持ちの手芸書を漁っていたところ、目に留まったのがガンジー模様でした。
他にも参考資料がないかしらと調べてみましたが、無いんですこれが。
フィッシャーマンズセーターといえば99%がアランセーターと言ってよく、ガンジーセーターについて書かれた書籍は一、二点、それも既に絶版でした。
そこでいくつかのサイトを参考に(後述します)、図案起こしから始めて編み上げました。
ガンジーセーターの定義と「エリスキー・ガンジー」
普通ガンジーセーターというと肩などの一部を除き模様のないプレーンな生地らしいのですが、私が見た細かい装飾模様のガンジー模様は、ガンジー諸島の中でも特にエリスキー島という地域で編まれているものだそうです。
そのエリスキー・ガンジーは、北欧のフェアアイルのような多色使いではなく、単色の糸で表目と裏目の組み合わせによって模様を作る点ではアランセーターと同じですが、より細密でその分厚みが出にくいのが特徴です。
ジャケットの下に着てももたつかないようなものを作りたかった私には、その点でも好都合でした。
本来は細い糸でみっちり編むことで防寒性を高めるのが狙いで、ガンジーヤーンなる重めの専用糸で編むということですが、現在入手困難なこと、それだと上記の着用方法に適いにくいことを鑑み、細目でも柔らかめのタスマニアンメリノを使用しました。邪道かもしれませんが…
機能的で大胆な編み方
模様もさることながら、面白いのはその構造です!
セーターの編み方は通常、前後ろ身頃を一枚ずつと袖を二枚編み、すべてをはぎ(綴じ)合わせて襟を編み込み完成、とされていますが、ガンジーセーターは違います。
まず輪針で身頃を編みはじめます。裾の方から脇下まで編み上げ、一旦前身頃と後ろ身頃を別々に編み、肩で接ぎ合わせます。
そうすると袖無しのベストのような形になりますので、肩の目を拾い袖をこれも輪針で手首の方まで編み上げます。最後に襟ぐりの目を拾い編むのは同じです。
これも、激しい動きの多い漁師の仕事ですぐに磨耗しても、目を拾い易くして手早く修繕できるようにということですが、はぎ、とじ作業がどうにもまだるっこしくて苦手な私にはうってつけでした。
パーツを何枚も作ればそれだけ必要になる編み終わり編み始めの糸の始末も少なくて済みますし、それに大きな身頃をやっとこさ一枚編み上げたと思えば同じようなのをもう一枚…という徒労感がないのはかなり嬉しい!
完成
襟はボートネック気味に。ガンジー諸島はイギリスですが、胸の切り替え部分より上にはイタリアの装飾模様を取り入れました。
脇のマチと、波をあらわす肩のところのガーター編みはガンジーセーターの特徴。
あえてこの編み方の短所を挙げるとすれば、編み進むにつれ棒針にかかる生地のかさがどんどん増えて行くので、持ち運びにくいという点でしょうか。重くてかさばりましたが、病院の待合や、職場の休憩室や、乗り物での移動中、帰省先の実家でもちまちま編んでいました。案外いけます。
祖父と編み物のこと
小さい頃から編み物をしていると、「おじいちゃん譲りね」というようなことをよく言われました。
祖父は私の生まれるずっと前に亡くなっており、とても謎の多い人です。何しろ祖母と結婚するまでどこで何をしていたのか、はっきりしないし、戸籍すらないというのです。
その代わりに伝説めいたエピソードばかりが残っており、「字が物凄く上手で毛筆を能くした」「手先が器用で魚を綺麗に食べた」「祈祷師の助手のようなことをしていた」「さる名家から勘当されて出奔した」等々の大小のエピソードの一つとして、「編み物が得意でセーターを一日で編んだ」というのがありました。
それを夫に話したところ、「おじいさんは漁師だったのではないか」という新説が。
船上に暮らす人は余暇によく編み物をするのだそうで、父に確かめると、「そう言えば、九州に来るまでは船の料理人をやっていたと聞いた気もする」とのこと。
あまりに謎めいた祖父の人物像が一つ明らかになった瞬間でした。
そして今回の帰省中、私の編む様子を見た父が一言。
「父さんも、そうやって輪っかの針で一気に編みよった。」
やっぱり祖父は海の男だったんだ!と確信しました。
長くなりましたが、飽きずにやりおおせることができたので、また来年も感じの違うセーターを編んでみようかなと思っています。
参考図書・サイト
Wikipedia-セーター>フィッシャーマンズセーター
ブリテン諸島の編物(2)

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