つのへび日記

こなやぎのブログです。手仕事、語学、短歌、読書や映画など。

2014年1月の読書/玉村豊男『料理の四面体』ほか

2014年1月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:950ページ
ナイス数:9ナイス

料理の四面体 (中公文庫)料理の四面体 (中公文庫)感想
良書だとか珠玉だとかはこういう本にのみ使われるべきだ、とか叫んでもみたくなる、物凄い本。料理本のドグラ・マグラや~!というとちょっと違うが、なんにせよ奇書。タイトルの概念は先に知ってから読書に臨んだのだけど、第一章からすでに、アルジェリアでのヒッチハイク体験から一直線に豚の生姜焼きに終結する鮮やかな手腕にやられてしまい、語源や地理歴史の蘊蓄と諧謔をふんだんにまとった論を夢中で読みました。四面体のみならず、8種類の材料で112種類のソース等も大いに楽しく、毎日の料理にまた新鮮な気持ちで取り組もうと思った。
読了日:1月31日 著者:玉村豊男


妖怪になりたい (河出文庫)妖怪になりたい (河出文庫)感想
初めて幽霊らしきものを見た幼少の頃、戦争体験、紙芝居描きから貸本マンガへの転業、脱貧乏、つげ義春ほか他漫画家との交流、大好きな南の島のこと、そして妖怪のこと…など時系列もバラバラに蒐めたエッセイ群。戦争中に銃を失くしちゃった人、私が知ってる限りでは水木先生で二人目。もう一人は田中小実昌。捨てたって書いてたかもしれないが。戦争ではマジメもちゃらんぽらんもみな兵隊にはならねばならず、水木先生やコミさんのような人が生き残ってこうして読める文章があるということが、現代のちゃらんぽらんにとってはありがたいのです。
読了日:1月26日 著者:水木しげる


ためらい (集英社文庫)ためらい (集英社文庫)感想
寂れた村に滞在する青年が、彼の友人に会いに行くことをひたすら逡巡するだけの話がなぜこんなにも面白いのかというと、それだけのプロットだからこそ面白いのでしょう。青年の独白体によって時系列は掻き回され、妄想と現実の線引きは許されず、彼が連れている息子の存在が辛うじてかれを浮世に留めているように見える(まさにかすがいのように)。あとがきにあった当時の仏紙書評文、袋小路に陥った作家として一旦は貶すも「トゥーサンの袋小路の方が、たいていの作家たちの見事な成功よりも面白いという点にこそ、文学の不公平がある」に惚れた。
読了日:1月23日 著者:J・P・トゥーサン


ケルトの島・アイルランド―自然と遺跡 (ちくま文庫)ケルトの島・アイルランド―自然と遺跡 (ちくま文庫)感想
著者は大学教授を退官のち地図や旅のエッセイを多く手掛ける人。手書きの地図や写真多数で、実際の地理地形を歩いて旅したレポートをメインに、浅学者向けにも土地にまつわる歴史を簡単に解説してくれてもいるのがありがたい。地形への愛情というか情熱と言うか、偏愛がすごくて、例えば小さい丘の連なりを説明するさいに「彼女たち」と呼んでいたりと、世の中には色んなフェティシズムがあるのねという意味でも世界を開かせてくれる一冊。1985年当時ですでに、ゲール語が殆ど現地で話されていないという事実が悲しくも印象的でした。
読了日:1月18日 著者:堀淳一

読書メーター

 

 

『料理の四面体』の存在は去年読んだブログ記事で知って衝撃を受け、このたびタイミングが合ってやっと読めました。

サラダの果て、はじまりの料理/新入生のための一人飯ハック 読書猿Classic: between / beyond readers

日々料理をしていると、やる気期とマンネリ期が交互におとずれるもので、最近はだいぶ惰性でお弁当や朝夕のご飯作りに取り組んでいたんだけれど、読後まだ作っていないレシピや試していない味付けが世の中にはたくさんある!という希望がわいてきて、前向きな気持ちを取り戻しました。おすすめ。

料理の四面体 (中公文庫)

料理の四面体 (中公文庫)