2月は毎日書くのが目標でしたが、色々あって頓挫し、ついには、ぱかっと一週間以上空いてしまいました。
そのあたりのことはまた次の機会に譲るとして、ブログを更新しなかったあいだにやっていたことのうちの一つで、今回のエントリをしたためたいと思います。
私たち夫婦は日本にいるころはずいぶん本を買ったものですが、そのほとんどは店頭での購入でした。「ずいぶん本を買ったものだ」とか偉そうに言っていますが、大半が積読なので、偉くもなんともありません。
中国に住みはじめてからは、本の調達をどうするか問題が…。アマゾンジャパンだと、書籍だけなら海外発送もしてもらえますし、hontoでも可能なのですが、いかんせん海外配送料は安くありません。できれば、なるべく低価格で手に入れたい…。
そんな時、出版社のWebサイトを定期的に見るのが趣味の夫が、見つけてくれました。
http://www.bookservice.jp/layout/bs/common/html/bargainbook/
このブックサービスというサイトは、もともと取次会社*1の一つが運営していた*2オンライン書店で、この「バーゲンブック」では、汚損ほかの訳アリで出版社へ返品できなくなった(であろう)書籍が定価の半額くらいまで値引いて販売されています。
しかも、見つけたのがちょうど年末の謝恩価格セールをやっていた時期で、通常より点数が多くなっていたバーゲンブックの中に夫が欲しい本があるというので、私もついでに何か買ってもらおうかと見たところ、なんと、ずっと読みたかった本が出ているではありませんか!

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「語学エッセイ」なるジャンル分けをしていいものかどうか分かりませんが、私はそのようなものを読むのが好きで、これだけでまた一つエントリを書けてしまうのですが、その中でも黒田龍之助先生の書かれるものはよく買って読んでいます…と言うとまた偉そうですが、何しろ刊行点数が多いのです。

- 作者: 黒田龍之助
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その黒田先生のエッセイのどれかで(手元になく思い出せない…すみません)、この、およそ40年前の女子学生によるフィンランド留学記のことを知りました。『フィンランド語は猫の言葉』、もうタイトルからしてかなり魅力的だと思ってしまうのは、私が猫好きだからでしょうか。いや、それだけではないはずです。
ずっと読んでみたいと思っているものの書店に行く時には忘れていたり、はたまた覚えているときに行った書店には在庫がなかったり、そんな本が誰にでも一冊や二冊あると思いますが、私にとって『フィンランド語は猫の言葉』もそのような類の本でした。
それが今、こうして思い出せた上に、謝恩セールで半額とな!フィンランド留学の本を中国留学中に読むというわけわからなさもなんだか面白いかも、ということで注文することに。
ちなみに、配送料をケチったのだったか、そもそも国内配送のみだったのか、ちょっと失念してしまいましたが、ともかく配送先は私の実家に指定して、この前の春節に両親が持ってきてくれました。せこい。
著者の稲垣美晴さんがフィンランドのヘルシンキに滞在していたのは1970年代末の合計約三年間で、本書では食文化の違いや現地の人々との交流などといった滞在記・旅行記の基本要素はしっかり押さえながら、そこにとどまらずフィンランド語の特徴やヘルシンキ大学での講義の内容(フィンランド語の音声学から、方言や古語にいたるまで!)にも言及し、しかもつとめて明るいタッチで書かれているので(謎の腹痛に苦しんだことや、冬の間の尋常じゃない寒さや一ヶ月以上にわたる太陽が全く出ない期間のことさえも!)、最後までとても楽しく読み終えました。
夏の間の太陽が沈まない「白夜」は知っていましたが、その逆もあるとは…。確かに、白夜があるということは、逆もあって当たり前なのですが思い至りませんでした。想像するだにつらいですが、彼女は「東京と違って、ヘルシンキは真っ暗!」と、どこか楽しげなんですよね。
帰国する少し前、著者は周囲から勧められてフィンランド語の作文コンクールに応募します。その内容から、私がこの本で一番好きな個所を一部抜粋。
フィンランドは物価の高い国。でも私はフィンランド語を無料で使うことができる。フィンランド語を使ったからといって、税金を納める必要はない。言葉はすべての人への贈り物だ。もし今誰かに、フィンランド語は難しいかときかれたら、
「いいえ。ゲームのように楽しいわ。だって文法が十分に複雑なんですもの」
と答えるだろう。
とても感動したので、Wechatで中国の友人にも紹介しました。(拙訳)
芬兰的物价很贵,可是我可以免费用芬兰语。我们不用交税为芬兰语。语言是给所有人的礼物。如果谁问我芬兰语难不难,我就能回答:
不难,很好玩得像游戏。因为那的语法差不多复杂。
ちなみに、読後ちょっとフィンランド語に触ってみようかなと思いましたが、東外大にも阪大にも専攻がないようで、それらのオンラインコンテンツにもなく、今のところDuolingoにもなかったです。残念。
kn.hatenablog.jp
http://how-to-learn-any-language.com/e/languages/finnish.html
これによると、フィンランド語話者はおよそ500万人強、そのほとんどは初歩的な英語ができ、優れた英語話者も多いので、言語としての必要性はあまり高くない、とのことです。そ、そんな…さみしい…。
「かもめ食堂」、アルヴァ・アアルト、marimekkoなど、女子受けするキーワードで彩られがちなフィンランドですが、Twitterの駐日フィンランド大使館さん @FinEmbTokyo のつぶやきなどでも、フィンランドやフィンランド語のユニークさはずいぶん広く知られるようになったと思います。そしてそのずっと前に、こうして異文化と外国語を楽しんでいた先輩がいらっしゃることはとても痛快で、素敵なことです。
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