長いことブログを放置してしまっています。
とりあえずこのままでは今年の読書記録もままならないので、2017年のまだここにまとめていなかった本の記録だけでもやっておこうかな、と思った次第です。
2017年(1年分)の読書のまとめは以下のリンクからも。
https://i.bookmeter.com/users/17108/summary/yearly
以下、2017年8月〜12月の読書記録です。
読書メーターの「まとめ」機能は「先月分」もしくは「去年分」のまとめのみ生成できるので、この期間の分はAmazonのリンク+読メの自分の感想のコピペにします。
2017年8月(3冊)
語学書しばり、もっと言うと「原則」白水社しばりという書評集。公平にも検定対策本まで取り上げられていて、実際に受験しないまでも初中級のおさらいやレベルチェックに取り組んでもいいかもな、などと思わされてしまう。自分が密かに良書だと思っていた地味な本(話題にも特にならず重版もされていない)を黒田先生も褒めていて、でしょでしょ!と嬉しくなったり、狭義の語学書にとどまらず語学学習をテーマにした小説なども取り上げられていて、まんまと読みたくなってしまったり。ぜひ次は、版元の縛りに囚われないものを上梓してほしい!
2017/8/31読了
存在はずっと前から知っていたが自分には合わない気がして手を付けなかった本。入った喫茶店に置いてあったので読んだが、直感の正しさを確認した。カタログとしては楽しいかもしれないが、日本語からの収録語「ぼけっと」や「侘び寂び」などの解説が恣意的で拡大解釈すぎて不信感があるため、他の語に対しても同様の疑念がつきまとう。以前、改訂にあたりいくつかの語の意味を一般から公募した国語辞典に寄せられたものを見て、大喜利かよ…と脱力したのだが、それを思い出した。あと読みはカタカナでなく国際音声記号で表記してほしい。
2017/8/20読了
途中ブランクを挟みつつ、ようやく読了。ただの箱であるコンテナがいかに物流・海運へ革命をもたらしたか、というのが本書の主たる内容で、こう書くといかにも地味なのだが、実際読んでいると、人間的魅力に富んだ一人の起業家の一代記というような側面もありつつ、お上たる行政機関・港湾局VS民間企業たる海運会社の攻防や、さきの明暗を分けることになる各主要港のコンテナ輸送への反応の違いなど、ディテールの面白さがたまらない。10年前の本なのでデータの古さは否めないが、産業や物流の現代史を知るには類書のない貴重な読み物だと思う。
2017/8/19読了
2017年9月(8冊)
- 作者: ハン・ガン,川口恵子,きむふな
- 出版社/メーカー: cuon
- 発売日: 2011/06/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
とても面白いものを読んだという満足感。3つの短編の連作で、最初それとは気付かなかったのもあり、表題作だけで割と良くあるヘンテコ風な幻想小説かな、と決めつけてあやうく読むのを止めるところだったが、その次から俄然面白くなってきた。本作は自らの過去作品からの翻案とのことだが、あらすじを読む限り、元の小説のような寓話性を徹底的に排除したこちらの方が、より鋭く凄みを帯びていて成功しているのではないかと思った。もうすぐ出る著者の新刊が気になり、その布石としてこちらを手にとったのだが、これならかなり期待できると感じた。
2017/9/28読了
やっと読めた。途中ちょっとしんどかったけれど、後半は勢いが付いてかすらすら読めた。漠然と、ヨーロッパの言語は歴史的にまずラテン語とギリシャ語が双璧なのかと思っていたけれど、それはある単語の語源を遡って調べたときにたいていラテン語かギリシャ語に行き着くからそう思いこんでいただけで、実際は後世のラテン語と英語の関係のように、ラテン語もまたギリシャ語から色んな語を借用しているというのを知れたのが一番の収穫。著者が毒舌で好みの文章なのと、最終章でラテン語に触れるための具体的ツールを示してくれているのもよかった。
2017/9/26読了
カモ少年と謎のペンフレンド (白水uブックス―海外小説の誘惑)
- 作者: ダニエルペナック,Daniel Pennac,中井珠子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
黒田先生の『寝るまえ5分の外国語』で紹介されていたのが読んだきっかけ。児童文学ということもあって、すんなり読了の運び。カモとかあさん、ぼくと僕の両親や先生とのやりとりなども笑えるし、中盤以降の展開もドキドキ感があり最後まで飽きない。まだ仏語は勉強してないけど、原書探してみたくなってきた。四部作ということもあとがきで知り、そちらの残りも読んでみたい。
2017/9/24読了
ドイツ語エッセイ 笑うときにも真面目なんです (音声DL BOOK)
- 作者: マライ・メントライン
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/08/11
- メディア: 新書
- この商品を含むブログを見る
本書はまず語学講座テキストのために書かれた外国語(日本語)のエッセイがあり、それに母語(ドイツ語)を足して書籍化したものとのこと。初読として、左側のドイツ語ページの気になる単語を拾い読みしつつ、右側の日本語エッセイを楽しく読んだ。ドイツ語は今のところ優先順位低めだけど、いずれ学習のために再読したいなあ…。柔らかくキャッチーなテーマばかりで、Twitterで時折見る時事などへの鋭い視点を持った文章ももう少し読みたかったなあ、とも。音声データも聴けるとのことで、そちらも(学習の折には)楽しみです。
2017/9/19読了
Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis
- 作者: J. D. Vance
- 出版社/メーカー: William Collins
- 発売日: 2017/06/01
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
邦訳を読んだ後でのチャレンジ。いかにも教育を受けた人の文章らしく(自分には)語彙レベルがまあまあ高めだけど、その中に時折挿まれるヒルビリーらしい会話文やジョークが、ともすれば深刻になりすぎるようなテーマの本書のテンポをほどよく軽快にしている。こういう、一文が長い「賢い文章」のライティングスキルは是非とも身につけたいと思った。匆々と読み飛ばした箇所も少なくない割には読むのに時間がかかりすぎたので、もう少しスキルアップしてから再挑戦します。
2017/9/17読了
昆虫が苦手で写真を見るのもつらいという方には無理強いはしないが、「そこまで興味はない」くらいの人には是非とも勧めたい(そして虫好きにしたい)。美しいカラー写真や豊富な知識だけでなく、虫を求めて異文化圏に飛び込む著者一行の臨場感、素敵な収穫を得たときのわくわくや喜びなどがストレートに伝わってきて楽しかった。もっとこの本の世界に浸っていたい、本というものに終わりがあるのはつまらないな、という気持ちを物凄く久しぶりに味わった気がする。
2017/9/15読了
- 作者: サラローズ,Sarah Rose,築地誠子
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2011/12/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 15回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
茶の木とその製法を最大の輸出物であり知的財産として頑なに守り、外部に漏らすまいとした清朝の中国。東インド会社に雇われそれらを盗み出すべく未知の中国内陸部へと分け入る、叩き上げのスコットランド人プラントハンター。彼の冒険を主軸に、貿易や紅茶産業の歴史、英国の園芸文化などをも広く描写したノンフィクション。最高に面白かった。今更ながら世界史に興味が湧いてきた。務めを終えたプラントハンター・フォーチュンが幕末の日本を訪れた際の旅行記もぜひ読みたい。
2017/9/13読了
新渡戸稲造と斎藤秀三郎の章目当てで手に取ったけど、他の章に取り上げられていたどの人物も魅力的なエピソードに満ちていて、面白く読んだ。鈴木大拙の最後の言葉が英語だったなんて知らなかった。あまりに有名な白洲次郎とホイットニーのやりとりや岡倉天心のボストンでの事件など、どうしても派手な説話にばかり目が行くが、本書中のどの人も全くの天才肌というわけではなく、皆たゆまぬ努力をしていた点を見逃してはいけないと思った。幾度も挿入される著者の教育論には概ね同意するけどちょっと煩く感じてしまった。
2017/9/6読了
ちなみにこの頃(2017年9月)から読書メーターでの読んだ本分類をNDC準拠で始めています。自分でもちょっと気持ち悪いとおもう。
2017年10月(2冊)
『紅茶スパイ』で本書の存在を知ってその流れのまま読んだ。『紅茶スパイ』でのフォーチュンの活躍が彼のハイライトだとすると、本書で綴られた日本や中国での旅は「余生」ということになりそうではあるが、さても充実した余生であることよ。多くの有名無名の人との交流、山川草木の描写、そして(嫌味なのかどうなのか判らない紙一重の書き方による)中立で冷静な視点が一貫していて、とても良い。異文化と接した時の最も規範的な態度のひとつをも、本書には見た思いがする。
2017/10/16読了
本書は、トーマス・マンがWW2前夜から死の直前まで書き綴った日記を、池内紀がダイジェスト的に解説したもの。ダンディで冷静沈着、権力に阿らないマンの戦争への姿勢は、本邦の永井荷風のようだ。一方で後年自らの創作力の衰えを自覚し、巷で再評価されだしたカフカを読み漁っているのは微笑ましい。読後、各章扉の写真を年代順に見ていると物悲しい。亡命生活の不便や苦労は勿論、戦後のドイツ国民からの非難はさぞ堪えただろう。明晰だったマンも、晩年はかつての妻の両親同様ある重要な決断がすぐには出来ず鈍化していたのも印象に残った。
2017/10/4読了
2017年11月(4冊)
フィリピンを知るための64章 (エリア・スタディーズ154)
- 作者: 大野拓司,鈴木伸隆,日下渉
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2016/12/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
複数の書き手が様々なテーマから一つの国を論じたシリーズの一つ。(日本を含む)他国による何度かの占領をはじめとしたフィリピンの歴史や社会問題、料理や消費性向などの文化や経済、最終章では日本との繋がりまで、一通りを浚える。お仕事に必要…というほどではなく個人的な興味が半分以上で読んだが、概ね楽しめた。書き手によって章の質に差があるのはこの手の本の宿命なので、こちらが気をつけて読むほかない。「フィリピンのビジネス英語力は156ヶ国中で世界一!」とほぼそのまま書かれていたのには英米は?調査方法は?と呆れた。
2017/11/30読了
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/12/31
- メディア: 文庫
- 購入: 26人 クリック: 894回
- この商品を含むブログ (233件) を見る
序盤の構成から意表を突かれる。思ったよりずっと私小説で、読みながら田中小実昌の『ポロポロ』を想起した。読者は物語を外から見ることを余儀なくされるがゆえに、本作における時間旅行者というテーマはあくまでSFからの借用物にすぎないのだが、戦争やその周辺の人間を淡々と描くのにこれほど誂え向きの道具もあるまいと思わせられる。ヴォネガットの創作を読むのは『タイタンの妖女』『猫のゆりかご』に次いで3冊目。ハヤカワSFの電書半額セールのおかげで、「いつかは読まねばならない本リスト」からこのたびめでたく除外されたのだった。
2017/11/30読了
- 作者: アーネストヘミングウェイ,Ernest Hemingway,高見浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (51件) を見る
原書を読む前にわざわざもう一度買い直して再読。案の定ほとんど忘れていて驚く。初読時は、とにかく青年時代を描く筆致のみずみずしさをまばゆく感じたものだったが、今読むとある種の哀れっぽさからくる滑稽さをも感じないでもない(その後の顛末を思うと不謹慎なのだが)。愛人を作ったことがハドリーとの、そしてパリ時代との離別を招くのだが、自業自得にもかかわらず妙に言い訳がましく被害者気取りで、そのあたりにも、甘やかな夢たる若い時代を振り返る晩年の作家の、救いがたい絶望さえもにじむようで。ともあれ、好きな本には変わりなし。
2017/11/20
回想小説、探偵小説、そして母恋いの小説と分類したくなる長篇。ある重要人物との再会には違和感が否めなかったが、両親との邂逅を試みる「儀式」に彼は必要なパーツであること、これが「かたりの小説」であることを考えると納得した。回想の1930年代ロンドンの二階建てバス、幼少期の小さな冒険、上海バンドなどに心くすぐられ、それだけ最終的に明かされる、両親失踪の真相や主人公が自ら獲得したと信じていたものの正体が残酷で堪えた。英語的には、回想の形を取るためit...that主体で進み、読みやすい。時系列の混乱に注意。
2017/11/14読了
2017年12月(10冊)
江戸時代の長崎。大店の植木屋で働く熊吉は、兄弟子たちから押しつけられる形で出島のある屋敷での仕事へ通いはじめる。仕事とは薬草園造り、そして屋敷の住人は蘭方医のしぼると先生。物語全体の構成も良かったが、特に熊吉の目を通して描写される登場人物の植物愛や学問への情熱、お滝や高野長英など実在人物のキャラクターがとても魅力的だった。 『紅茶スパイ』の読後なので、熊吉が考案したのはウォードの箱(的なもの)だなとか、『紅茶~』のフォーチュンは本書には登場しないけど日本でシーボルトに会ったんだっけなどと楽しんで読んだ。
2017/12/30読了
アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール
- 作者: 読書猿
- 出版社/メーカー: フォレスト出版
- 発売日: 2017/01/22
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (27件) を見る
ともかく全ての項目を要約しノートに取り終えたので、これを以て読了とする。古今東西の発想法の紹介が本書の主な内容ではあるが、だからといってクリエイティブで生業う人だけの物というわけでもなく、例えばさくらんぼ分割法などはタスク管理、スケジュールの立て方や実践などにも有用だったりする。つまり、およそ人の活動というもので全く創造的でないもの、発想する余地のないものというものはほぼないのだとも言える(例えば本の読み方ひとつにしてもそう)。年内の「読んでる本」消化キャンペーン第2弾。
2017/12/28読了
タイを知るための72章【第2版】 (エリア・スタディーズ30)
- 作者: 綾部真雄
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2014/07/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
タイにはうるち米(炊飯)圏ともち米(蒸し飯)圏があること、チェンマイは京都をハイブリッドにしたような街だということ、93%は仏教徒だがムスリムやキリシタンも数%いること、仏教徒の中には華人も多数いて独自の宗教文化を擁していること、カンボジアとの長く続く領土紛争などを初めて知った。タイは本文中のことばを借りれば「中進国」で、先進国を自称する我々はついかの国の人たちを「純朴で、温かく、信仰心に篤い」などと一言でまとめがちなのだが、それもタイ王室が喧伝し都市部の人々が信じている幻想では、という視点が一番の収穫。
2017/12/23読了
英検1級語彙・イディオム問題500 (英検分野別ターゲット)
- 作者: 旺文社
- 出版社/メーカー: 旺文社
- 発売日: 2006/03/01
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
年内の「読んでる本」消化キャンペーン第一弾。正答率はともかく、ひとまず模試以外は一周。別の語彙本を来年10ヶ月くらいで仕上げてからいずれ二周目をやる。
2017/12/20読了
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,Jr. Vonnegut Kurt,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (38件) を見る
帰りのバスの灯りが暗いので、その時間は紙の本でなく電書を読むことに決め、これはその2冊目。しかしあまりの面白さに最後の方は家に帰り着いてからも読み続け、読み終えたのは今朝のあかるいバスの中だった。IQで序列された人々、自動機械化された生活、落伍者の末路は軍人かドジ終点部隊(公共工事請負)というアメリカで、持てる者たるポールの違和感は徐々に膨らみ、ついに秘密結社に担ぎ出されるが…。示唆に富むフレーズも多くあり、皮肉で妙に明るい結末が深く印象に残る。あとがきには著者のGE社での日々がモチーフとあり、笑った。
2017/12/12読了
例えば中国語の発音や語彙が地域によって違うように、スペイン語にも国や地域で違いがあるというのは、うっすら一年くらい独学している身には知識としてあったが、著者の留学体験としてこのように「メキシコのスペイン語」の具体例を挙げられると、本当だったんだ、こんなに違うんだ!と驚く。英語翻訳者ならではの学習の動機もいい。全体に軽妙で、さらっと読もうと思えば読めるが、メキシコの歴史への真摯な言及あり、スペイン語文法解説あり、ラテンアメリカ文学の紹介ありで、緩急自在でもある。巻末の文献リストや単語索引も得した気分になる。
2017/12/4読了
ユリイカ2000年6月臨時増刊号 総特集=田中小実昌の世界 みんなコミさんが好きだった。
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2000/06
- メディア: ムック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
小島信夫の寄稿が良かった。ウイリアム・サローヤンの創作心得。「O・ヘンリーのような落ちのあるものは書かない」等々。堀江敏幸と池内紀の対談も良かった。「浪曲師朝日丸のこと」は以前どこかで読んだことある。何かのアンソロジーだろうか。
2017/12/2読了
2017/12/2読了
死語を媒介とした再生の物語、というと些か陳腐だが、これは着想の勝利という他ない。ことばへの過剰な感受性から失語症となった女は、経験から未知の言語との邂逅がそれを癒すと信じ、カルチャースクールで古典ギリシャ語を受講する。講師の男は徐々に視力を失いつつあり、それを他人へは隠しながらも静かに受容しようとしている。薄い膜を隔てて世界と接しているような彼らが、偶然の事故からふれあうという すぐれたプロット。ボルヘスへのオマージュが随所で、主要人物二人が妙齢でなく中年という点、物語を寓話たらしめない生活感も良かった。
2017/12/2読了
- 作者: ドナ・ハート,ロバート W.サスマン,伊藤伸子
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2007/06/28
- メディア: 単行本
- 購入: 8人 クリック: 62回
- この商品を含むブログ (45件) を見る
かつての狩猟仮説(ヒトの祖先は能動的に他の生物を狩って食料とし、攻撃的で仲間同士でさえ闘争した)がもたらしたイメージ「狩るヒト」と真っ向から相対する「狩られるヒト」論を例証する一冊。二足でぺたぺた歩く脆弱なヒトの祖先は、主に大型ネコ科にとって恰好の獲物であったが、彼らは食べられる(狩られる)ことによって防衛手段として共同体での生活を覚え、知能を獲得していった…というのが「狩られるヒト」説の主旨。中盤は哺乳類・爬虫類・猛禽類による霊長類(ヒト含む)「食べられ」の事例が豊富。くどい箇所も多いが面白かった。
2017/12/2読了
この時田中小実昌づいているのは、前月読んだヴォネガットのスローターハウス5と『ポロポロ』が全くの無関係ではないように思われて「コミさんは『スローターハウス5』を読んでいたのかな?」と文学徒の血が騒ぎ図書館で調べものをしていたからです。結局ヴォネガットの別の作品についての解説エッセイしか見つからず、この件は保留になっています。
それから、日頃読書していると買ってちょっと読み始めたものの進まず放置する本が溜まっていくと思うのですが、去年の12月はその年のそんな「読んでいる本」に入れっぱなしの本を消化する月とする試みをやってみたらけっこう上手くいったので、今年もそれをやろうかと思っています。煤払い的な。新年の読書をすっきり始められる気がするのでおすすめです。