つのへび日記

こなやぎのブログです。手仕事、語学、短歌、読書や映画など。

社労士試験についての覚書、または合格と不合格のあいだ(前編)

はじめに

過去の投稿でも触れたが、今年の社会保険労務士試験で合格することができた。

名前隠しのふせんは科博のグッズです

合格発表から1カ月経ち、成績通知書と合格証の受け取り(これらは例年同送されるらしいのだが、今年は合格発表日の前日に新内閣が発足して厚生労働大臣が変わった関係で、合格証だけかなり遅れて届いた)、教育訓練給付の手続きなど諸々ひと段落したので、ようやく「合格体験記的なやつをいっちょ書いてみるかー」という気になってきた。
本当は前々から着手したかったのだけど、何だか気持ちが入った大長編になりそうで、ちょっと自分への冷却期間がほしかったというのもある。

勉強法を説く人のなかには、まず他人の合格体験記を読むことを勧める向きもあり、私も他の人の努力のあとを読むことそれ自体は好きだ。
好きなのだが、なかにはやはり再現性に乏しいなと感じるものもある。
たとえば、法律系学部の履修経験があり、仕事は社労士事務所で短時間勤務、育児も介護もなく自身の学習時間をたっぷり取れるという人がいるとして(特定の個人をイメージしたわけではありません。念のため)、その人が書いた合格体験記を読むときの私は、女性誌や生活雑誌の節約特集で「家族3人で食費2万円台!」とうたいながら「米と野菜は実家から送ってもらってます!」とネタばらしされた時と同じ顔をしているとおもう。

そして文系学部卒で法律学習未経験、まったく関係ない仕事*1でフルタイムの営業事務という私とて、見る人が見れば「チートじゃん、参考にならないよ」と思われるだろう。

自分で言うのもなんだが、同僚に「積んでるエンジンが違う」*2と評してもらえるていどには、ふだんから周囲には「勉強ができる人」として扱って頂いている。じっさい暗記はもともと人より少し得意な自覚はあるし、文章を正確に早く読むのも得意だ。社労士試験でもとりわけ午後の択一式は3時間半という長丁場だが、そのなかで60ページ以上ある問題冊子の5肢×70問を捌いていかねばならないので、時間はたっぷりあるように見えて全然ない。やはり読解力とそのスピードは明確にこの試験に対する自身の強みだったとおもう。
しかし、暗記に関しては意識してさらに強化したし、試験本番では3時間半集中を持続するための工夫もした。それらがあって初めて合格できたに違いないので、ここではそうした「不合格と合格の差分を埋めるために自身がやったこと」を中心に書こうとおもう。

前提

前述したとおり、私が卒業した大学の学部は法律系ではないため、もしくは/また、かつ/ならびにの使い分けのような条文特有の文法や表現等から勉強することになった(これはこれでとても面白かった)。
しかし、10年以上前に独習でFP2級を取得しており、社会保険、主に年金科目の学習経験はあった。
また、以前から労働法には関心があって自分で書籍を読んだりなどもしていたので、当初は社労士の勉強はそこからの地続きという感覚だった。

水町勇一郎『労働法入門』は旧版を読んだ当初とても感銘を受け、新版も買い直して読んだ。
労基法、労契法、労組法などのポイントもまとまっていて労働判例からの引用も豊富なので、この本を読んでみて扱う内容が面白いと感じた方は、社労士試験の勉強もきっと楽しめると思う。もちろんそこには、本書では扱われない労働保険、社会保険社会保障関係の諸法令の膨大な暗記と理解ももれなくセットで付いてくるのだが…。

私はここ数年はあまり大きくはない商社で貿易事務・営業事務をしているのだが、労働法面白いよみたいな話をたまに同僚にしていたところ、組合活動に興味があると思われて、誘われるがままに3年ほど支部の役員をしたりもした。
これもその後の社労士試験の勉強にそれほど直結したわけではないが、法改正ごとに労働協約就業規則の変更などを討議することになるので(近いところでは産後パパ育休など)、テキスト等で見た時「あーあれね!」となったものも多く、やはり学習のハードルは相当に下がったように思う。

基本データなど

私は2回目の受験で合格した。それぞれの勉強時間などは下記の通り。

受験年 2023年 2024年
学習期間 2023/2~8(7カ月) 2023/11~2024/8(10ヶ月)
総学習時間 720時間 980時間
使用教材 市販テキストなど 予備校の通信講座など
模擬試験 4回受験(LEC) 2回受験(大原)

それぞれの受験結果を並べたところ。

SNSに挙げたものをそのまま載せます

具体的な学習内容については語ろうと思えばいくらでも語れるのだが、ここでは割愛してもいいかなと考えている。
2023年にやったことはいくら字数を費やしたところでしょせんはすぐさま結果にあらわれるものではなかったし、2024年は後述するが教材選びの時点で半分勝ったようなものだと思っていて、私がやったことと言えば推奨スケジュールを愚直に実行しただけだ。
スケジュール管理や調整、それを実行しつづけることへの工夫や苦労はそれなりにあったが、それはいずれ別の記事にすればいいかと思っている。
そういうわけで、これから自分が合格のために決めて/変えてよかったことをいくつか書いていく。

※最初は一つの記事にまとめるつもりだったが、1つめ(下記)を書いた時点で4000字を超えてしまったので、投稿を分けることにする。あまり引き延ばしても何なので、前後編におさめることを目指す。(追記:おさまりました!)

よかったことその1. 独学での合格をあっさりあきらめた

本当に雑で乱暴な括り方をしてしまうのだが、社労士試験に臨む人はほぼすべて「国家資格で人生一発逆転勢」か「そこそこ勉強できる資格エンジョイ勢」のどちらか(あるいは両方)に分類されると私は考えている。そしてそのどちらにも「独学で合格すること」を目指し、それにこだわる人は一定数存在する。
私は後者で、これまで取得したすべての資格は市販のテキストやアプリ等を使った自学自習で何とかなっていたため、社労士試験も何とかならないかなーと考えていた(ならなかった)。

2023年はあと一歩力及ばずで不合格だったので、「このままやれば来年は合格するのでは」と独学を継続することも一瞬考えたが、この数点の当落上におそらく何百人もいること(特に選択式の1点の重みは大きい)を思うと、「このまま同じ勉強をしてもまたギリギリ落ちるだろうな」とおもった。

市販のテキストであっても知の集大成には違いないし、それを考えると「独学」も純然たる独学とは呼べないが、いわゆる予備校の社労士試験対策講座は、当たり前だが、何年も社労士試験を研究し、受講者の合格がそのままビジネスの成功につながる「社労士試験のプロ」によって作られている。
週に40時間弱を仕事に費やし、残りの時間をかき集めて勉強し合格しようとする私一人ではとても実現できないようなメソッドの開発、知見の集積がそこにはあるのだ。
受験の機会は年1回。時間はお金で買えないが、プロの教材を買うことで将来失う時間を節約することはできる。


www.youtube.com

資格の大原の「社労士24+直前対策」コースを選んだのは、1回目の受験時にyoutubeで観た社労士24のお試し版講義がとてもよかったから。
社労士24は「全科目の内容を24時間で講義」がコンセプトのWeb動画(テキスト冊子付属)で、とにかく金沢講師の講義が軽快、明瞭で面白い。ユニークな語呂合わせもかなり良かったのだが、市販のテキストベースの独習ではとりあえず気合いで丸覚えしていたようなことも、背景やしくみを示されて根幹からスッと理解できて、しかもそういうものが一つや二つではなかった。あらためて本教材を購入後に労基法の最初から視聴し始めたとき、冗談ではなく「こんなに分かりやすかったら受講者全員合格するのでは?」と思ったほどだった(もちろんそんなに甘い試験ではない)。

社労士24が付いているコースはいくつかあったが、必要そうなもの(科目ごとのトレーニング問題集(択一・選択それぞれ)、大原全統模試2回、法改正対応テキスト、統計・白書・判例対策テキスト、直前演習等)が最低限ついていて、雇用保険教育訓練給付の対象である「+直前対策」のコースに決めた。
私は今まで雇用保険の恩恵を受けたことがなく、修了後に受給手続きをするぞと意識することで、制度を身近に感じて学習内容を自分ごとにしたかった。

コースには科目ごとのトレーニング問題集(択一・選択)、模試2回、法改正対応テキストと統計・白書・判例対策テキストも付属していて、問題集の冒頭に書いてある「使い方」や社労士24の配信スケジュールに素直に従い、その通りに勉強した。

後編へ続く。(後日更新予定 → 更新しました)
kn.hatenablog.jp

*1:同期合格者のSlackがあるのだが、メンバーの自己紹介を見る限り、今のところ私と同じ商社勤務の合格者はほかに1人だけだった。

*2:大っぴらには言えないが、この褒め言葉は実はかなり気に入っている。