つのへび日記

こなやぎのブログです。手仕事、語学、短歌、読書や映画など。

九月の長い朝と夜

今までの人生で一番長く感じた9月が終わった。
その理由は前の記事でも触れた、資格試験の合否判定待ちの期間だったからだ。
kn.hatenablog.jp

私が社会保険労務士、いわゆる社労士の試験を受けたのは8月下旬で、合格発表が10月初旬。
9月はまるまる、受験を終えた開放感と結果不明のモヤモヤを抱えて過ごすことになる。*1

去年に続き、2回目の挑戦だった。
社労士試験は午前の選択式と午後の択一式の2つから成り、選択式(いわゆる穴埋め問題)は8科目すべてで5点中3点以上、択一式(五肢択一)は7科目すべてで10点中4点以上という基準点を超えることにくわえて、それぞれ65%前後の総得点も要求される。

去年の私は選択式で5点中2点しか取れなかった科目が3つもあったのに、難度によって基準点が下がる「救済」という一縷の望みを捨てきれず、合格発表まで悶々として過ごした。
結果は各予備校予想の通り、救済なし。択一式でも合計で1点足りなかったので、どのみち不合格だったのだが。

救済を待つというのはつまり「他の受験生も自分並みに出来ていないといいな」という、いわば人の不幸を願うような行為で、私は去年のその1ヶ月でずいぶん自分の徳を下げてしまったように感じた。(※個人の感想です)
人の不幸、というような強いことばを使わないまでも、救済のボーダー上で1ヶ月近く過ごすのははっきり言って精神衛生によろしくない。
だから、今年絶対に合格する、しかもただの合格ではなく掛け値なしに良い点を取って、発表まで心安らかに過ごす。などと、不遜な願望をひそかに抱いていた。
逆に言うと、掛け値なしに良い点を取りさえすれば、余裕の9月を過ごせると思っていたのだった。

かくして臨んだ試験の自己採点結果は、選択式が38/40点、択一式が49/70点。科目ごとの基準点割れもなく、まさしく「掛け値なしに良い点」であった。
……であったのだが、こうなると心配なのがマークミスで、試験終了後一週間くらいは本気で怯えていた。今まで一度もマークミスなどしたことないのに、だ。

ささいなことが一々気になってくる。たとえば、選択式の見直しの最中に、問題用紙の真ん中ほどに位置するある科目の設問のひとつでふと熟考してしまい、試験終了の合図で我に返ったこと。あれ以降の科目はちゃんと確認できていただろうか。
たとえば、択一式の見直し途中で解答を変えた設問。あのとき別のマークを修正して、正答をひとつつぶしてしまったのではないか。その科目は自己採点では4点だったから、一つでも回答が違っていると基準点を割ってしまう。大丈夫だろうか。などなど……。

良い点さえ取れれば、9月をもう少し安穏と過ごせると思っていたのに。
人は、というか生き物は、よろこびや幸福のなかにも不安を見出すことに全力を尽くす性質があるのかもしれない。

小人閑居してなんとやら、ではないけれども、頭が暇になればその隙間に不安だとかそういう良くない感情が充填されてしまうので、九月はとにかく全力で暇を埋めた。
これまで平日に朝2時間、夜1時間勉強していたのが丸々空白になってしまったのだから、何となくぼんやり埋まる規模のすきまではないのである。心して埋めねば。

というわけで主に編み物をしていた。

謎に色違いで2色作った。

コットン糸のエコバッグ。一つは半年ほど前のそんなに勉強の強度が高くなかった頃に片手間に編んでいて、糸始末を残すのみだったのだが、今回の暇つぶしで一気に仕上げた。

くるっと折りたためる。かわいい。

レシピはこの本から。

背景になっている深緑のクッションも、同じ本から。去年お尻が痛くなったので、本格的な勉強再開前に編んだ。
全体の8割か9割は家で勉強していたので、このクッションが今年の受験生活を文字通り支えてくれた。

バッグを編んだコットン糸が余ったので、他の色も買い足してスマホポーチを作った。

IGで見かけた猫モチーフを作ってみたかったので。
裏側。糸もチェーンも100均で購入。

モチーフつなぎは経験が浅くて見様見真似。もう少しカドをカドらしくしたかったとか反省点はあるものの、それを措いてもやっぱり自分で作る小物は愛着もひとしおで、ポケット付きの服で外出する時にも携行してしまうほどには気に入っている。

編み物のお供には音楽や動画。辻井伸行さんのピアノはつい聴き入ってしまうので勉強中のBGMには不向きで長らく遠ざけていたが、編み物中に手が止まってしまっても、何も困ることはない。

www.youtube.com
彼の英雄ポロネーズとラ・カンパネラが大好きなのだが、どちらも公式にはなかったので自重。
動画は色々観まくっていたが、長くなるので別の機会に。

読書もした。『自省録』は直前期前のまだ余裕がある頃に中ほどまで読んでいてそのままになっていたのを、最後まで読み終えた。

講談社学術文庫版と迷い、どちらもKindleでサンプルを読み比べて、こちらの岩波文庫版にした。

気に入った箇所の抜き書き。これをやるとあっという間に時間が過ぎる。
受験期間の座右の銘にしていたことば。

社労士試験は運の要素が強い試験だと言われることがあるが、それは範囲の広範さに比して設問数が少ないことに(おそらく)由来する。
”Luck is what happens when preparation meets opportunity” という(大好きな)言葉があるが、「運気を上げる」というのは結局のところ「実現可能性を上げる」ことに他ならない。
「たまたま見ていたところが試験に出た」という人は、要するに日頃からたくさんのところを見ていたのだ。
私は自分のことをどちらかといえば幸運な人間だと思っているが、その楽天的な性質はここでは甘えにつながる気がしたので、「どんなにその日がアンラッキーでも合格するための勉強」を念頭に置き、上記2つの警句をつねに意識しながら取り組んだ。

話が逸れたので、暇つぶしの話に戻す。
夜はこれまで勉強時間捻出のために帰宅後即シャワーを浴びていたのを、湯船にゆっくりつかることにした。

クナイプのバスソルトは基本的にごっついサイズで売っているので、7日分いろいろなアロマを試せるセットを買ってみた。

ホップ&バレリアンとか、ロータスジャスミンとかは単体で買ってもいいくらい好みだったけど、着色料そんなにいらんからもう少し安くならんのか?と思わなくもない。
でも、2~3種類買ってローテしたらかなり楽しそうである。2~3種類買うならどれにするか?と考える時点ですでに楽しい。もう少し熟考してから決める。

それからこれも直前期の手前まで『バンオウ』という漫画にハマっていたのだが、自分でも将棋の勉強をしてみたくなった。

8巻完結なので人にもおすすめしやすい。ぜひ。

まずは無料のアプリで詰将棋をぽちぽち解いている。詰将棋は将棋ではないと言われれば返す言葉もないのだが、いかんせん根性がないもので……。

そういうわけで、朝から編み物に没頭し、日中は仕事、昼休みには本を読み週末にそれを書き写し、夜ゆっくり湯船につかり眠くなるまで詰将棋のアプリを解く……という毎日を過ごすうちに、マークミスへの不安はどんどんしぼんでいった。
冷静に思い返せば、選択式も択一式も、最後まですべてマークのチェックは終えていた。択一式の解答を変えた1問は変えたことで正答が誤答になってしまったのだけれど、その前後の問題も元々正答だったから、仮に修正箇所がずれていたとしても4点取れていることに変わりはない。

たぶん大丈夫だろう。そう思えるようになった頃には月が変わって、発表の日となり、私は反芻しすぎて暗記してしまっていた自分の番号を合格者番号一覧から見つけた。

相変わらず画角が決まっていませんが。

ド平日の、しかも月初で業務が多忙な日だったのでゆっくりランチともいかず、その日はとりあえずお昼休みにミルクレープを食べた。
そして週末を迎え、少しずつ書き溜めていたこれを仕上げて投稿しようとしている。
投稿後は、予備校へ投稿するための合格体験記を書きます。本当にうれしい!

*1:ほんの数年前までは合格発表は11月で、受験生は発表まで2カ月強待たなければならなかったらしい。キツすぎる……。