つのへび日記

こなやぎのブログです。2015年4月から1年間滞在した中国江蘇省・南通市のこと、手仕事、語学、短歌など。

6~7月に読んだ本

6月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:874
ナイス数:13

イスラーム入門 文明の共存を考えるための99の扉 (集英社新書)イスラーム入門 文明の共存を考えるための99の扉 (集英社新書)感想
面白く読んだ。イスラーム世界について、日本では必要以上に異化されがちだと感じる。例えば「神のみぞ知る」と訳されることもある「インシャーアッラー」、俗に言われる責任逃れの常套句というよりは「自分一人で何もかも成し遂げられると思うな」という自戒のフレーズであり、そう考えると「人事を尽くして天命を待つ」とも換言でき、急に親しさを覚えてしまう。通勤中に一周しただけなので、用語や人名などはまだきちんと把握できていない。二周目はノートに図示しながら読んでみようかな。
読了日:06月09日 著者:中田 考

アブサロム、アブサロム!(上) (講談社文芸文庫)アブサロム、アブサロム!(上) (講談社文芸文庫)感想
第二章まではしんどかったけど、そのあとだんだん面白くなっていった。樋口一葉かよ!みたいな一文の長さ、原文もこんなんなんだろうなと想像しつつ。様々な人物による語り=騙りの体裁を取っているが、今後新たな語り手にバトンが渡るのだろうか。下巻も楽しみ。
読了日:06月21日 著者:ウィリアム・フォークナー

基礎から学ぶ 音声学講義基礎から学ぶ 音声学講義感想
とりあえず今の自分に必要そうだった17章まで読んだので、一応の読了とする。これを読み始めた当初の狙いは、英語をなめらかに発音するための手がかりを得ることだったが、実際それ以上の収穫があった。たとえば中国語の一部の音の、子音の舌の位置を勘違いしていたことがわかったり、発音はまるきりノーマークだったスペイン語の音声について知れたりなど。今は破擦音がきれいに出るように練習しているところ。
読了日:06月30日 著者:加藤 重広,安藤 智子


7月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2386
ナイス数:40

役に立たない読書 (インターナショナル新書)役に立たない読書 (インターナショナル新書)感想
すべてに首肯したわけではないが、面白かった。『学文(がくもん)の置き所、臍の下よし、鼻の先わるし』いい言葉だな。読書は基本的に自分だけのいとなみなので、すぐに人から言われたとおりにあれこれできるものでもないし、それにしたがう必要もない。本書に対してもそれは同じ。自分も、読書より面白いことがあれば明日にでもやめてしまうかもしれない。でもそのくらいでいいんだとおもう。見返りを求める行為は基本的に報われないので。
読了日:07月02日 著者:林 望

アブサロム、アブサロム!(下) (講談社文芸文庫)アブサロム、アブサロム!(下) (講談社文芸文庫)感想
上巻でフォークナー文体を受け入れる準備が整ったので、下巻はだいぶ読みやすかった。上巻で複数の人物から語られたサトペンやジェファソンの歴史が、下巻では主たる語り手のクェンティンと学友によって自在に語られ、そこから新たな物語が立ち現れてくる。最後の系譜、年譜と対照させると面白いが、その系譜、年譜は「真実」だと果たして言えるのか?などと考えるのもまた楽しい。
読了日:07月04日 著者:ウィリアム・フォークナー

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たちヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち感想
前書きにあるように、本書はごく私的で主観的な回想記だ。しかし私的な随筆であっても、その書き手が十分な知性と論理性を備えている時、そこには並ならぬ価値が宿ることになる(それこそが読まれるべきエッセイの条件だと私は思っている)。そういうわけで、読み始めの印象は
少し予想外だったものの、「ケンタッキーのがばいばあちゃん」的中盤を経て至る自己実現と同時に浮き彫りになる周囲とのギャップ、生まれ育ったコミュニティとの心理的隔たりなどの鮮明な描写は面白くも切なくもあった。地方出身者は多少身につまされることもあるはず。
読了日:07月08日 著者:J.D.ヴァンス

現代中国経営者列伝 (星海社新書)現代中国経営者列伝 (星海社新書)感想
あとがきにある「好きか嫌いかではなく、中国は『面白い』」という著者の弁に大きく同意。本書に登場する経営者達の軌跡は多分に誇張も含まれているだろうけど、破天荒なエピソードの多くに「中国ならさもありなん」と思わされてしまう。コラムや本編の随所に見られる最新(刊行時)トピックも有益。都市/農村戸籍の廃止、著作権保護への急速な動きなど、中国も今なお着々と変化している。個人的には、HUAWEIへの好感度が前より上がった。
読了日:07月12日 著者:高口 康太

その他の外国語 エトセトラ (ちくま文庫)その他の外国語 エトセトラ (ちくま文庫)感想
現代書館から出ていた同名書籍の文庫化ということだが、そちらを未読だったので新鮮に楽しんだ。とはいえ、単行本収録分の文章は今の自分には違和感を覚えるくだりも少なくなかった。氏の他の著作と既視感がある、自称変わり者アピールが鼻につく、という向きには、第四章のチェコ講演旅行記だけでもぜひ読んでいただきたい。
読了日:07月21日 著者:黒田 龍之助

リオデジャネイロに降る雪――祭りと郷愁をめぐる断想リオデジャネイロに降る雪――祭りと郷愁をめぐる断想感想
昔大学のゼミの指導教官から言われた「巧い文章が書けるということは、論文を書くにあたっても何よりの強みになる」という言葉を思い出した。著者はエモい論文を書くことでも(一部の界隈で)知られているが、やはりというかなんというか、こうした散文では本領発揮というところだろうか。底抜けに明るいリオの風景を愛着たっぷりに描写しつつ、それが回想録という点によって愛着は別の色、つまり本書で幾度も登場する「サウダージ(哀愁)」をも纏うことになる。引用される数々の詩や紹介される楽曲からイメージが何層にも広がるのもまた愉しい。
読了日:07月23日 著者:福嶋 伸洋

Murder on the Orient Express (Poirot)Murder on the Orient Express (Poirot)感想
買って放置していたものの、実写映画リメイク版を製作中と知り再挑戦。鑑賞前に読み終われればと気長に取り組むつもりだったけど、面白くて思ったよりずっと早く読み終わってしまった。原書の効果かどうかは判らないが、読み進むにつれ「この物語を何の前情報も無しに享受できた人々はなんて幸せだったんだろう!」と思い、当時の書評などを読んでみたくなった。さすがに粗筋や結末は知っていたが、幕切れがこんなにあっさりだとは思わず驚いた。現代だとPC的にアウトよね、という民族主義的、性差別的な描写はかなり多く、時代だなあ、と。
読了日:07月30日 著者:Agatha Christie

オリエント急行の殺人 (創元推理文庫)オリエント急行の殺人 (創元推理文庫)感想
ペーパーバックで読んだ内容の細部確認用に古本屋で購入し、追いかけるようにしてこちらも読了。何しろ古い…。保母だとすべきnurseが看護婦とされていたり、原書でかなりテンションが上がった場面も説明が無さすぎて、これ当時の人は置いてきぼりだったのでは?と心配になったり。自分は普段翻訳ものの小説をあまり読まないのでこれが古さゆえかどうかはよくわからないが、作中の欧米人が「おじゃんになる」とか「小田原評定」とか慣用句使ってるのを読むと奇妙な感じがして気が散ってしまう…。
読了日:07月30日 著者:アガサ・クリスティ

読書メーター



通勤時間に本を読む習慣がついたので、先月はよく本を読みました。
先々月やそれより前は、どちらかといえば英語や中国語の勉強をすることが多かったのですが、語学の勉強はやっぱり好きなだけ声を出せる環境でするのが一番だとこのごろ思っているので、勉強は家でやり、それ以外の場所、交通機関の中や、朝の始業前や昼休みの会社では本を読むことが多いです。この頃は。

最近の語学の勉強について。
英語や中国語にはシャドーイング用の教材を使い、それ以外はDuolingoなどのアプリでマイペースに勉強してます。前者は、シャドーイング用音声教材を通勤時に聞きながら口を動かしてみるというようなことをこの前まではしていたものの、実際に音声に出す訓練とは似て非なるものだと気づいたので最近はそれはあまりやっておらず、先に書いたように家でやる時間をなるべく確保できるように努めているところです。結局スピーキングというのは口の形+息の振動が具現化したものなので、息=声量が不十分な状態での口パクのトレーニングではあまり意味がないのではないかという結論に至りました。
英中以外では、最近は広東語とポルトガル語を物見遊山的に楽しんでいます。

港へ(日記+短歌の目3月の自作ふりかえり)

f:id:isachibi59:20170320115218j:plain

3連休中日の昨日、天気が良かったので博多港へ遊びに行きました。

先月から2年ぶりの会社勤めをしています。
はじめての商社、はじめての貿易のお仕事です。

さいわいにも、いまのところ毎日楽しく働いているのですが、ようやく全体の流れが把握できるようになってみると、オフィスの中でただ座ってソフト操作で右から左へ商品を流したり、書類を取り交わしたりするだけの業務をもう少しリアルに感じたいと思うようになりました。

そういうわけで、空港は利用でもそれ以外でも何度となく使っているので、はじめて港へやってきたのです。
♪船に乗るわけじゃなく~ というやつです。


スピッツ / みなと

もちろん物流が動いているようすを目の当たりにできれば一番よかったのですが、基本的に港の倉庫や船会社などは土日はお休み。
でも、港がまったくお休みというわけではなく、韓国やフィリピン行きの客船、クルーズ船、そして玄界島壱岐対馬への往来をする市営の船やフェリーなどが運航していました。

壱岐対馬行きフェリーなどは、博多港を真夜中に発って夜明け前に着くという便などもあって、どんな人達が使っているのかな、と停泊するフェリーを見ていると、朝から出掛けて一釣り終えたらしき格好の人々がたくさん降りてきて、納得!

f:id:isachibi59:20170320115303j:plain
ガラス越しに撮ったので、この写真だけ青っぽくなってます。

海上保安庁や福岡県警の船も停泊していました。

f:id:isachibi59:20170320115647j:plain

商業施設「博多ベイサイドプレイス」ではちょうどイベントをやっていて、小さい子供連れの家族がたくさんいました。
空港とか港とか、大きいのりものがたくさん見れるところは嬉しいだろうなあ。

神戸のハーバーランドほど大規模ではないものの、楽しめました。次回来たときは、取れ取れのお魚の寿司バイキングを食べてみたい。

短歌の目ふりかえり

今回のお出かけで、「お仕事のことをじかに感じてみる」ということの他に、もう一つの目的がありました。
それは、まだ作っていなかった今月の短歌の目の短歌を、この一日を使って作ってみるということです。

kn.hatenablog.jp

旅行詠、ということになるんでしょうか。旅行というほど遠くへ出かけたわけではないけれど。

以下、一部解説です。

わかばきらきら光る那珂川のここは最果て見晴らせば海

北原白秋の「草わかば色鉛筆の赤き粉の散るがいとしく寝て削るなり」が中学生のころくらいからずっと好きなので、いつか「草わかば」で始まる短歌を作ってみたいと思っていました。

それで、本当は、港まではバスで行って、港を離れる際に那珂川沿いを歩いて天神へ遊びに行ったので、結句を「振り向けば海」にしてしばらく考えていたのですが、テーマ詠一首目だし始まりを予感させるようなものがいいなあと思って、実際歩いたルートとは逆向きにしてみました。

あまたの人あまたの舌を操ってみなとは異国へひらかれたドア

language(言語)の語源はラテン語のlingua(舌)だったりします。
港を意味するportも、もとはラテン語で門を表すportaで、現代イタリア語でもドアや扉を指す語です。
韓国語や中国語、港の雑踏は色々な言語が混じっていてにぎやかでした。
江戸の関所もこんな感じだったのかもなどと思いました。

百千鳥ゆきかう人の三連休中日は等しく午刻となりぬ

春の季語「百千鳥」を使ってみたくて。
あと、今回はどこかに「春昼後刻」というフレーズを入れた歌を作ったろうと思っていたんですが、どうにもズバッと決まらず、この辺で手を打ちました。

ある人は悪い心を海中へ「放て」と言った「捨てろ」ではなく

JKの頃にドはまりしていた尾崎放哉の句「何か求むる心海へ放つ」より。
語呂が良くてそう書いたけど、私自身は「何か求むる心」は悪いものでもないと思っています。

限りある生とて選ばぬままの書がふと甦る未知の地踏めば

沖給仕として生涯を送った独学者、港の哲人であるエリック・ホッファーのことが気になっているうちにリバイバル的に本が出たりしてちょっとしたブームみたいになってしまい、嫌気がさして読まないことにしていたのですが(自分のこういうところは本当に良くない)、港でそのことを思い出して、今が彼を読む好機なのでは、という考えに至りました。
一度捨てた書を拾うチャンスはけっこうあるのかも。



春昼後刻

春昼後刻

尾崎放哉全句集 (ちくま文庫)

尾崎放哉全句集 (ちくま文庫)

短歌の目3月に参加いたします。


f:id:isachibi59:20170319212316j:image

 

 

1.草

 

わかばきらきら光る那珂川のここは最果て見晴らせば海

 

2.あま

 

あまたの人あまたの舌を操ってみなとは異国へひらかれたドア

 

3.ぼたん

 

ふなびとも船みる子らのちちははも心にぼたんからくさの春

 

4.鳥

 

 百千鳥ゆきかう人の三連休中日はひとしく午刻となりぬ

 

5.雷

 

コンテナの積まれて旅を待つさまは雷おこしか田の字に似たり

 

テーマ詠「捨」

 

ある人は悪い心を海中へ「放て」と言った「捨てろ」ではなく

 

限りある生とて選ばぬままの書がふと甦る未知の地踏めば

 

2月の短歌の目、自作のふりかえり(解題) +読書メモなど

tankanome.hateblo.jp
kn.hatenablog.jp

元ネタがあるものだけ、簡単に種明かしというか解説を。

鬼は外出て行ったきりふるさとの人ただ老いてゆく節分会(せつぶんえ)

好きな寺山修司の短歌、「かくれ鬼の鬼とかれざるまま老いて誰を探しにくる村祭り*1」から連想しました。

たましひがちょっと抜け出ては戻るやうにシ♭ドレソレドシ♭鍵が波打つ


Debussy - Rêverie


ここ数か月の「短歌の目」では、あんまり自分で納得のいく出来のものが詠めなかったり、思いつくのにやたらと時間がかかったり、かかりすぎて締め切りに間に合わずに参加できなかったりと散々だったのですが、今月はぱっぱっと出来ました。トータルでも一時間かからなかったくらい。自分で好きだなと思うものも多くて、満足です。畢竟ことばとことばの連なりは化学反応のようなもので、長考してもいいものが出来ない時は出来ないし、いい組み合わせを引き当てられるのに、かけた時間はあまり関係しないのかもしれません。

別のエントリで書こうと思って準備中ですが、いい作用をもたらしたものとしては自分の環境の変化がありそうです。できるだけストレスのない生活を、と内向きに、守りに徹していたのをやめたのです。あまりにもストレスのない生活は、同時に刺激も足りなさすぎたのかなと反省しました。



それから、この本を読んだことも、おそらく良い作用をもたらしました。

詩と短歌と俳句を選んでいるのは、それぞれ池澤夏樹氏、穂村弘氏、小澤實氏です。知っているものも知らないものもあり、楽しめました。
特に短歌でいえば、個人的に印象的だったのは次の歌です。

吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ

この短歌は、林芙美子の短編「清貧の書」の作中に、とても印象的に挿入されていたことから、ずっと覚えていた大好きな一首だったのですが、この本で初めて若山牧水の作であることを知りました。

清貧の書

清貧の書

「清貧の書」は、短くてすぐに読める、しみじみと佳い作品ですので、未読の方はぜひ。
青空文庫のWeb版はこちらから。


他に『近現代詩歌』に収められている短歌で好きだったものおよび作者は、以下に。

わが胸の鼓のひびきたうたらりたうたうたらり酔へば楽しき 吉井勇

美しき亡命客のさみえるに薄茶立てつつ外(と)は春の雨 岡本かの子

シルレア紀の地層は杳(とほ)きそのかみを海の蠍の我も棲みけむ 明石海人

春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ 前川佐美雄

*1:私はこれで覚えていたのですが、「かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて~」「かくれんぼ鬼のままにて老いたれば~」と、上の句が微妙に違うバージョンもあるようです。本で確かめようにも、売ってしまったのか見当たらず…。

短歌の目2月に参加いたします。

tankanome.hateblo.jp

 

1. 洗

重曹で洗えば落ちる染みもありこころはたぶん陶器ではない

 

2. 鬼

鬼は外出て行ったきりふるさとの人ただ老いてゆく節分会(せつぶんえ)

 

3. 入

入ったら戻れぬ仕掛けの前に立ちすでに仕掛けの動作すを知る

 

4. チョコ

ゲレンデはさすがに無理ですチロルチョコならば溶けなくもない恋です 

 

5. きさらぎ

雪ふったりやんで照ったりふったりで今また晴れてるきさらぎ十日

 

テーマ詠《夢》

ないことになった一世(ひとよ)が一夜(いちや)ごとどこかに増えてゆく罪の朝

たましひがちょっと抜け出ては戻るやうにシ♭ドレソレドシ♭鍵が波打つ

 

*

 

kn.hatenablog.jp

 

福岡でのairbnbをシミュレーションしてみました

ブログ書かなきゃ、短歌詠まなきゃと思いつつ、どちらも出来ずにもう2月になってしまいました。

今年もよろしくお願いします。という今更なごあいさつも、ここはひとつ、旧正月文化圏だと思っていただければ…(それでも遅いけど*1)。 

 

kn.hatenablog.jp

これがもう一年前のことだなんて。時間がたつのは早いですね…!

今年は向こうで過ごせず残念でした。来年の春節は遊びに行けるかな。

 

いろんな話題を書こうと思いつつペンディング中なのですが、気になったよ→調べたよ→結論づけたよ、が私の中で完結している掲題のものを今回は書いていきます。

airbnbというか、いわゆる「民泊」の話です。 

きっかけ

身内に、マンションの部屋をいくつか所有していて、いわゆる大家さんをやっている人がいるのですが、そのうちの一つ(ワンルーム)がもうすぐ空きそうなんだ、という話をされました。

家賃はけっこう安いのですが、築年数もそれなりだし、近くに大学などもないしで、このままだと空き部屋のままになるかも、と。

 

じゃあ、airbnbなんかで民泊にするのは?と提案してみたところ、もし実際にやるなら管理は私に委託するから、ひとつ調べてみてよ、という流れになりました。

確かに、物件からの距離もそのオーナーに比べれば近いし、在宅でちまちまお仕事してる私は時間も捻出しやすいということで、承諾。

もちろん、利益が出たら委託金をたくさんいただくぞーという下心ありきです!

 

情報収集

身内と会って話したその日のうちに、とりあえず大型書店へ行って民泊ビジネス関連の書籍やマンションオーナー向けの雑誌などをざっと見ました。

 

ただ、書籍に関しては「民泊で楽しく国際交流~☆こだわりのお部屋を作っておもてなし!」みたいなフワフワした本か「横行するヤミ民泊!これが民泊ビジネスの実態だ…!」みたいなルポ系の本かの両極端なものしか見つからず、前者には概ね良いことしか書いてないし、後者は実際やった人の声に乏しいしで、消化不良…。

 

とはいえ、基本中のいくつかはつかめました。

例えば、民泊の一形態とは言ってもホストとゲストが同居するホームステイ型の場合は参入障壁が低いこと、細かい制度は自治体によって異なることなど。

 

そういうわけで、次に調べたのは福岡市のウェブサイトです。

 

福岡市の民泊制度

民泊が関係する法律は、旅館業法、建築基準法、消防法の三つで、実際に申請をして許可をもらうのは各自治体からです。

とはいえ、福岡市は大阪や東京のような民泊特区ではないので、国の決めたルールにほぼ準拠することになります。申請先は市の保健所です。

http://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/seikatsueisei/life/kurashinoeisei/ryokan.html

2016年に、旅館業法の一部規制緩和がおこなわれ、宿泊所に必要だった最低延べ面積は従来の33平米から一人当たり3.3平米に引き下げられました。また、義務づけられていた帳場(フロント)の設置もなくなりました。これで、20平米ちょっとしかないワンルームマンションでも、民泊が参入可能になったということです。

 

福岡市の申請の流れを見てみると、その建物が宿泊施設として建築基準法や消防法に照らしても問題がないかの審査を通すことや保健所の認可、施設の近隣住民への周知等を経て営業開始、となるようです。申請費用は22,000円。また、申請時に必要な書類も、施設所有者=運営者の場合とそうでない場合などで異なります。

 

その他、簡易宿所営業の決まりとして、宿泊者の旅券のコピーを一定期間保管すること、宿泊施設と運営事務所の双方に通信機器を置き常時連絡可能にすること、施設の玄関ドアやポストに宿泊施設運営の旨および運営者の氏名と連絡先を大きく明記すること、などがあります。

 

このあたりで、自分の氏名や連絡先を誰でも見られる場所に大書しないといけないのかー…とひるんでしまいました。少しハードルが高いなと感じましたが、苦情などの窓口を作っておく必要は確かにありますよね。逆に言えば、こうした掲示無しにやっているところは未申請のままやっている違法民泊ということになります。

 

損益分岐点の算出

とりあえず必要な手続きがざっと分かったので、かなりざっくりですが損益計算をしてみました。

 

まず初期費用として、申請費用+家具家電購入費用(ベッド・冷蔵庫・電子レンジ・電気ポットやファブリック類)+必要ならWi-Fi工事費として、大まかに80,000円。

毎月出て行く費用として、変動分は無視してとりあえず10,000円(水道光熱費、通信費、部屋の掃除や維持にかかる消耗品費用など)。

 

収益の想定は、良いときと悪いときの2パターンを用意。

良いとき=毎月の土日フル稼働で月8日。

悪いとき=月3日稼働。

宿泊費は立地等から相場通りの5000円として、airbnbの手数料3%を差し引き、一泊を4850円としました。

 

それで18ヶ月運営すると仮定してみた結果がこちらです。
f:id:isachibi59:20170208122416j:image

※部屋所有者である身内への報告用に作成したものです。なんとなく入れなきゃいけない気がして「いらすとや」さんのカットを使用。

 

結論→賃貸のままが良さげ

毎週末コンスタントに埋められたとすると、初期費用は3ヶ月で回収できて黒字に転じますが、家賃収入との差分は1年半でたった5万円という結果になりました。この裏で、私がルームクリーニングや備品の補充、受付のあれこれをやってると思うとなかなか厳しいものがあります。

 

そして、月3回しか稼働できない場合。一年半やってやっと初期費用回収という惨憺たる結果に。

 

もちろん、実際やってみたら上手くいくかもしれません。平日も埋まるかもしれないし、送迎オプションを付けるとか、掃除代をいただくとか、収益アップを図る余地もあります。また、稼働が少なければ実際の費用も減るので厳密な計算ではありません。

 

ただ、物件の立地が博多区にありながら主要駅や空港からめちゃくちゃ便利に接続しているというわけでもないことと、毎月の費用はかなり低く見積もっているのにこの結果ということ、それにサンクコストとしての私の行動費用の報われなさから言うと、今まで通りの賃貸の方がはるかに有益だという結論が出ましたので、身内にもそのように報告しました。

 

余談ですが、この件をネットで調べていると、福岡市や周辺でこっそりやっている人もけっこう多いようで、それもまた他人事ながら心配になりました。所有物件ならまだしも、中には民泊目的で借りた賃貸物件でも○ヶ月で費用回収できるよー!みたいな記事があったりして、ひやひや。

 

2017年中にはいわゆる民泊新法が通常国会へ提出予定という話もあるようですし、私としては、再検討するとしてもそれまで待とうかな、というところです。

*1:今年の旧正月は1月28日からでした。

短歌の目12月に参加いたします。

tankanome.hateblo.jp

 

1. おでん

面倒くさい奴になりたいおでんなら牛すじまたはロールキャベツに

 

2. 自由

図書館の本読む自由上書きの脳の中身は借りパクでいい

 

3. 忘

もういくつ寝ては忘れるぬばたまの夢の数だけ生を背負へり

 

4. 指切り

一目ごとに切れないままの指切りが編み地にできてゆく冬の雨

 

5. 神

もう背伸びしなくてもいい歳になり歩いて帰る天神の街

 

テーマ詠「冬休み」

 

大晦日働く母を見送ってもう一度目でレシピを浚う

 

 

超ギリギリになりました。

来年もよろしくお願いいたします。