つのへび日記

こなやぎのブログです。手仕事、語学、短歌、読書や映画など。

話題のインドカレーレシピをさっそく試してみました。

我が家のインドカレー

「基本のカレーって玉ねぎとトマトの旨味をスパイスで食べる料理という認識」わかる! ところでブクマ2000超えてるけど、そろそろ国会に持ち込めるのでは?/ 作った→ http://kn.hatenablog.jp/entry/2016/06/22/162642

2016/06/17 17:02

この「はてな匿名ダイアリー」の記事、最初はよくあるめんどくさいウンチクおじさんによる俺のカレー論みたいなウエメセエントリかと思い、「えらい伸びてるなー」とタイトルをぼんやり眺めるだけだったんですが、この伸び方は尋常ではないなと開いてみたら、包容力の高い書き手の人格もあいまってすごくすごく魅力的な内容で、さっそくその日のうちにブコメで紹介されていたアメ横の豆・スパイス卸の大津屋のネットショップでスパイス四種を注文しました。

一応注文する前に、カルディのサイトからギャバンから出ているそれぞれのスパイスの価格をチェックし、比較をしたのですが、送料(864円)込みでも大津屋のほうが安く、しかも量が多い(大津屋はすべて1袋100gが最小単位、ギャバンは物によって65gとか80gとかまちまち)という結論に至ったので、大津屋にしました。

注文から二日後、時間指定の通りの夕方にスパイス到着。
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ほかに必要な材料はすでに準備しており、あとはスパイスを待つのみだったので、さっそく次の日の昼に作りました。

以下、匿名ダイアリーのレシピで実際に作るときに気を付けたこと、作ってみて気づいたことなどを書いていきます。
がちがちに引用するのは増田に悪いので、レシピ全文はこちらからご覧くださいね。
やりとり含め、とてもいいエントリだと思うので。

まず、元の記事には「慣れたら30分で出来る」と書いてあるので、初めからスピード感を意識して取り組みました。
主な流れは、

クミンを炒める→玉ねぎを炒める→おろしたショウガとニンニクを加える→トマトを加える→火を止めスパイスを加える→スパイスを炒める→具材を加える→水を加えて10分弱火で煮る

ですが、すべての工程に「次行程に進むサイン」を書いていてくれてるので、それを見逃さないようにイメトレします。
するとこうなります。

クミンを炒める(パチパチする)→玉ねぎを炒める(端が軽く焦げる)→おろしたショウガとニンニクを加える(香りがまろやかになる)→トマトを加える(ドロドロになる)→火を止めスパイスを加える→スパイスを炒める(2分くらい経つ)→具材を加える(火が通る)→水を加えて10分弱火で煮る

これを元記事を読みながら何度となくイメトレして、本番では一度もスマホを見ないですむようにしました。紙媒体でも何でもそうですが、レシピをちらちら見ながら作るとどうしてもスピードに乗り遅れてしまうし、それに伴って失敗のリスクも上がるので、工程を完全に頭に入れてから作り始めるのはおすすめです。時間がない方は、作る前の晩に寝ながらイメトレしてみてください。

当日は、作り始める30分くらい前から米を研いで浸水させておきました。ターメリックライスを作りたかったのですが、うちでは3年くらい前から鍋でガス炊きしているので、同時に作ったのではカレーへの集中力が落ちると思い先に炊くことにしました。

ちなみに米のガス炊きは、1合につき1カップ前後の水を入れて初めは強火→沸騰したら弱火→水分がなくなって鍋底からチリチリ音がしたら火を止めて20分蒸らす、です。フタはずっとかぶせておきます。できれば30分くらい浸水させてからのほうがおいしいです。量が少ないと芯が残ることがあります。2合以上炊くほうが安定する気がします。

炊飯用の鍋に点火して、米を炊いている間に材料を切りました。今回は初めて作るレシピで絶対に失敗したくないので、切ったあとのそれぞれの材料を小さい皿やボウルに入れて用意することにしました。ずぼらなので普段はあまりこういうことしないのですが、おいしいカレーのためなので話は別です。パウダースパイスと塩も計量して一つの器に合わせておきました。

米が炊きあがったので火を止めて、蒸らしているあいだにいよいよカレー作りです。材料を作る順番通りにガスレンジの端に並べておきました。いつも中華を作るときには一番最初にショウガとニンニクを入れるので、それらを玉ねぎより先に入れてしまいそうで怖かったからです。

油→クミン(パチパチ)→玉ねぎ、まで順調だったのですが、ここで少し失敗。玉ねぎを炒めすぎました。二口あるうちの強火力コンロの方で作っていたのですが(これも、おいしい中華が作りたかったのでこのタイプを買ったのでした)、体感2分くらいで端が焦げてきたにも関わらず「元記事には8分くらい炒めるってあったよね…」と時間の長さに囚われるあまり、時機を逃してしまいました。4~5分くらい炒めた時点でショウガとニンニクを投入したのですが、フライパンの温度が上がりすぎ、玉ねぎも水分がかなり飛んでいたためか、あっという間に焦げ付いてしまいました。「玉ねぎの端が焦げ始め」たタイミングだと、なじませるのに十分な水分があったはずです。増田も元記事で書いているように、それぞれ使う器具の熱伝導の高さやコンロの火力によって時間は変わってくるので、「次に進むサイン」を最優先に作るべし、ですね。

その後は特に問題なく煮込み作業まで終わりました。今回の具材は、ゆでておいたひよこ豆の冷凍がフリージングパック一つ分あったので、前の晩から冷蔵庫に移して解凍しておいたのを使ってチャナマサラ(チャナ=ひよこ豆で「ひよこ豆のカレー」)にしました。『カレーのすべて』(柴田書店)には、水と一緒にひよこ豆のゆで汁も加えるよう書いてありますが、ゆで汁は全部冷凍前に切ってしまったので、今回はナシです。

煮込んでいる10分の間に、炊きあがった米にターメリック、塩、バター、レモン汁を加えてターメリックライスを作ります。私はこれまで、ターメリックはただの色付け要員だと思っていましたが、今回届いたばかりのターメリックの袋を開封したとき、ふわっと強い香りが鼻を衝ち、うわあ、と感動しました。今まではS&Bか何かの卓上スパイスを使っていたので、この芳香が全然分からなかったし、炊く前の米にぴっぴっと適当に二、三振りするだけでした。今回は、『カレーのすべて』のレシピ通りに炊きあがったあとにしっかりした量(小さじ半分強)を加えました。油に溶けやすいとあったので、ターメリックを入れた中心にバターを落として、混ぜ合わせるようにだんだん広げていくと、うまく米全体にいきわたりました。

10分経って、煮込んでいたカレーの火を止めて、仕上げにレモンをひと絞り。ご飯を炊き始めてからここまで、トータル45分。次はあと5分短縮できるようにがんばろう。

さて、ピクルスも仕込んでおきました。前日朝から24時間漬けていたゆで卵のピクルス、ゆで卵を漬ける前に同じ瓶で漬けていたオクラと小玉ねぎも。オクラは一晩、小玉ねぎは4日くらい漬けたかな。小玉ねぎは上下を落として皮をもう1枚むいて半割り、オクラはがくをそいで先を落として塩ずりしたもの。
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チャナマサラ、完成!
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ラッシーも『カレーのすべて』からのレシピ。ヨーグルトと水と砂糖を混ぜるだけ。レシピではミキサー推奨でしたが、ボウルと泡立て器でも問題なく出来ました。シェーカーがあると便利かもしれません。レシピの比率はヨーグルト1に水1.2でしたが、それだとちょっともったりした「飲むヨーグルト」みたいなものになるので、気持ち多めに水を入れて、今回はシャバシャバしたラッシーにしました。

このカレーの味ですが、本当に「日常的に食べるカレー」だと感じました。特に強烈なパンチがあるわけでもなく、全然辛くない、万人に優しいカレーという感じ。でも一口ごとに「おいしいね」「すごいね」「感動だね」とぽろぽろ言いながら食べました。こんなすごいレシピが無料で手に入って、そのままスパイスも注文できて家に届いてしまうなんて、インターネットすごい!

辛いのが好きな人にはやはりちょっと物足りないかと思うので、クミンと一緒にホールの唐辛子を1本か2本、スタータースパイスにして炒めるといいかも。私は次回そうしてみます。

ちょっと書いておくつもりだったのに全部書こうとしたらすごく長くなりました。とにかく一言でいうと「すごくおいしいからぜひ作ってみてください」ということです。あと「次へ進むサイン大事」!

カレーのすべて―プロの味、プロのテクニック

カレーのすべて―プロの味、プロのテクニック

読み物としても面白い。元記事のスパイスの配合がいかに洗練されている、絞り込まれたものかも分かります。
レビュー等見ると、どうやらカレー本は東京カリ~番長の『カレーの教科書』と本書がツートップのようですね。『カレーの教科書』は未読です。

[新版]私の保存食手帖 (ESSEの本)

[新版]私の保存食手帖 (ESSEの本)

ピクルス液の配合はこの本から。
私が使っているのは初版のほうですが、梅仕事や他の保存食づくりにも、大変重宝してます。


続編書きました!
kn.hatenablog.jp

ごく小規模なハーブ栽培の記録(~2週目)追記あり

当面金欠でなおかつ時間だけはあるので、趣味と実益を兼ねてハーブ栽培を試みました。
毎日それらの様子を撮っているのですが、続けて見られたら面白いかなと思って、2週間ごとくらいにこうしてまとめていくことにします。

というわけで、それぞれの植物についてそれなりに調べたことを以下簡潔に書いておきます。

バジル:一年草。気温20度以上で発芽。春に種まき~晩秋まで収穫できる。草丈が20センチほどまで伸びたら摘心して枝を増やす(こうすることで葉っぱの収穫量が増える)。風通しが大事なので、混み合う下の葉は切り落とす。日光が大好きだけど乾燥には弱いので、日当たりのいいところで育て、水は乾かないようたっぷりあげる。成長したら液体肥料を週に一回与える。アブラムシ注意。

パクチー:一年草。種まきは春か秋。花をつけるのは夏だけなので、春まきは開花後の秋には枯れてしまう。寒さに強く冬を越せるので、秋まきのほうが長く収穫できる。水はこまめにたっぷり、ただし根腐れしやすいので注意。肥料は、春まきの場合必要なし(生育サイクルが短いので)。秋まきは、越冬後の春に即効性の化成肥料を与える。

ルッコラ:一年草。発芽しやすいので、真夏と真冬以外いつでも種まき可。アルカリ性の肥沃な土を好む。花を咲かせると葉はとうがたって硬くなり、葉の量も増えないので、つぼみが出来る前に茎ごと摘み取ると、おいしい葉をたくさん収穫できる。日当たりが良すぎてもやはり葉が硬くなるので、真夏は明るい日陰で育てる。肥料は1000倍希釈の液体肥料を週一回。アブラムシ・アオムシ注意。

参照したのは、これらのサイトです。
http://kateisaiennkotu.com/
http://www.yasashi.info/index.html

使ったキットはこちら。東急ハンズで買いました。

ルッコラだけ出てこなかった…。エコハーブという商品名だった気がしますが。代わりに同じメーカーのを貼っておこう。
育てるグリーンペット ベジ ルッコラ GD-44503

育てるグリーンペット ベジ ルッコラ GD-44503

以下、1日目から14日までの記録。













Twitter貼り付け」で自分のツイートを出したけど、なぜかとびとびにしか表示されなかった…。追ってそのうち埋めるとします。→埋めました!(6/22追記)
早く収穫したいな!

→その後はこちら(7/6追記)
kn.hatenablog.jp

清廉でうつくしい、中国映画『胡同の理髪師(原題:剃头匠)』感想文

市役所での転入手続きも済んだので、先日さっそく市の図書館で貸出カードを作りました。
図書館のサービスはなかなか良くて、もう少し使いなれたらそのうちこれで一つ記事を書こうかなーと思っています。


総合図書館は大きくて、中に喫茶店、学習室、飲食スペースのほかミニシアターも入っていて、収蔵している映像資料・作品から月替わりでプログラムを組んだものが上映されています。

今月はアジア映画名作選ということだったので、気になる映画の上映に合わせて、貸出カードを作りに行ったというわけです。

その映画『胡同の理髪師』のあらすじはこちら。(引用:福岡市総合図書館映像ホール・シネラ 映画解説から)

93歳のチンさんは12歳の時から北京の古い街角で理髪師として働いてきた。客は馴染の老人たちだが,知り合いは次々に引っ越していく。そして近く家が取り壊されることを通知される。北京市の胡同に暮らす老人たちを丹念に描いた作品。チンさんは俳優ではなく,胡同に暮らす現役の理髪師。消えつつある街並みを哀惜を込めて描き出す。

予告編はこちら。

映画 「胡同(フートン)の理髪師」 (06 中/0802 日本公開) 予告編


この映画は上海国際映画祭でメディア大賞、インドのゴヤ国際映画祭で「金孔雀賞(映画通でないので、それがどのくらいすごい賞なのか解りかねますが…)」を受賞したということで、日本でも2008年に岩波ホールなどで上映されたようです。

以下の感想では内容に触れますので、ネタバレが嫌な方は読み飛ばしてください。




映画は剃刀を当てる音から始まります。丹念に顔を剃られている男性が、最後にタオルで顔を拭かれて「舒服啊(気持ちいい…)」とつぶやく。そんなシーンから幕を開ける本作は、物静かで、ノスタルジックで、衒いのない美しさに満ちています。

主人公のチンさん(敬大爷)を演じているのは、本物の「剃头匠」である靖奎氏で、登場する近所のホルモン屋なども実在する(した?)ようです。幹線道路は大きな輸入車で渋滞する一方、チンさんがリアカー付き三輪車で往来する「老街」の界隈はまだ昔ながらの狭い胡同が残っています。つけっぱなしのテレビからは北京五輪まで1000日弱のニュース、その沸き立つ声を聞きながらのんびり麻雀を打つ老人たち。話題は亡くなっていく友人のこと、心配な子どもや我が身のこと……。

チンさんはまさしく清廉潔白といった人物で、どんなに物価が高騰しても理髪代はいつも5元(90~100日本円)、子への不満をもらす友人には「彼らの世代も大変なんだよ」とたしなめ、愚痴をこぼす息子にはそっと自らの蓄えを渡すなど、温厚そのものです。同志の訃報に接するたびに、やがて来る自らの死を思い、できるだけ迷惑をかけず、さっぱりとしていなければと決意を新たにし、役人から自分の家を「取り壊し」と認定されても「なあに、自分が生きているうちはありえないよ」と嘯く一方で、身分証の更新で「20年有効」の新しいIDカードを受け取ってしまうところなどに、おかしみがあります。

北京市郊外に住む子世代の生活(潔癖なくらいにきれいな家に住み、フォルクスワーゲンに乗る)とチンさん達の胡同の対比もよくできていたと思います。それから、ご覧になった方で上記の「息子に自らの蓄えを渡す」シーンで、息子がろくに礼も言わずにチンさんの元を去ったところに違和感を感じた方も少なくないかもしれません。中国だと、家族や親しい間柄では、あまり感謝のあいさつはしないんですよね。本作中でも、殊更に「ありがとう」「すまないね」とチンさんが何度も声をかけていたのは、自分の肖像画を描いてくれた「友人の孫」の美術学生という、少し遠い間柄の人物くらいです。



ネタバレ終わり。

くすっとするシーンあり、しみじみと美しい場面もあり、とても引き算が美しい映画だなあと思いました。
監督はハスチョロー(中国語表記:哈斯朝鲁)。珍しい名だなと思いましたが、蒙古族なんですね。百度百科によると、ハスは「玉」、チョローは「石」を、それぞれモンゴル語で表すそうです。モンゴルでは父親の名を自らの姓にするそうなので、どちらかが彼自身のファーストネームなのでしょう。

ちなみに、主演の靖奎氏は今でももしかしてご存命なのかしら、と調べてみたところ、2014年11月付で訃報を伝えるニュース記事がありました。
101岁“剃头匠”靖奎离世_北京新闻·城事_新京报电子报
享年101歳、前月の下旬から肺炎で入院されていたとのこと。入院中も自分の子どもたち(実際は3男3女をもうけていた)の電話番号をそらで言えたりとしっかりされていたそうです。
記事によると、2007年からは近隣友人の逝去や自身の体力の低下のために、出張の散髪はせずに、もっぱら来た人に施術していたとのこと。映画のヒットのおかげで、テレビに取り上げられたり、国内外から会いに来る人がいたりと、ちょっとした有名人になっていたようですね。

映画の原題は「剃头匠」ですが、剃头刮脸といえば、昔ながらの理髪と顔そりをセットで行う、今の日本の理容店でおこなう施術を指すようです。現代中国では「理发(理髪)」ばかりを目にします。中国語の理には「いじる、かまう」の意味があるので、ヘアセットとかパーマとか、オプション的なことを元々指したのかもしれません(あくまで個人の印象で、未検証です)。

中国語のセリフについての解説等はこちらのサイトに面白いものがあります(ネタバレもあります)。
胡同の理髪師(剃头匠)_人民中国
このサイトにもあるように、劇中で話される北京語は、「老北京(生粋の北京っ子)」特有の、語尾のr化、nとngの顕著な区別などがたくさん味わえます。私は上海よりの地域に住んでいて、テレビもほとんど見なかったので、とても耳新しく、面白く聴きました。

この映画、DVDも出ているようですが、大きな声では言えませんがYouTubeで全編見れることを発見してしまいました。(ただし、英語と中文の字幕のみ)

The Old Barber 剃头匠 HD国语中字1280高清

これだけでも雰囲気は十分味わえるかと思います。
福岡市の総合図書館でも今月あと一度上映があるようなので、お住まいの方はぜひぜひ(料金は大人500円です)。

胡同の理髪師 [DVD]

胡同の理髪師 [DVD]

胡同物語(フートン) 消えゆく北京の街角

胡同物語(フートン) 消えゆく北京の街角

定住しました。

久々の更新になるので、さくっと近況報告を。
中国から帰国することになった事情は、こちらに書きました。

kn.hatenablog.jp

ビザの期限が切れる4月末に、日本に帰国しました。
南通の家から空港までは、何度となくお世話になった友人の両親が車で送ってくれました。
ママが空港のターミナルで泣き出してしまって、こちらもぐっとくるものがありました。

引っ越しを手伝ってくれた時、「このまま一生中国に住めたらいいのに!」とはしゃいでいたママ。

kn.hatenablog.jp

ママの娘=私の友人は、現在日本で仕事をしながら生活しているので、やはりさみしいのだと思います。九州の地震のこともとても気にかけていて、私が「日本へ帰ったら、まずは熊本へ行って家の片づけをするよ」と言うと、大変心配してくれました。

そんな涙の別れを経て、夕方過ぎに福岡空港着。
この日はひとまず博多で一泊して、次の日から熊本へ。
当時は九州新幹線が復旧したばかりで、全席自由席の変則ダイヤで運行していました(おそらく現在も)。
熊本にはかれこれ一ヶ月ほど滞在しました。その間に家の片づけをしたり、福岡へ行って新居を契約したり、熊本の住居についての手続きをしたり。
熊本市中央区の私の住居は、引き続き住む分には問題がなかったので、私たちの中国滞在中に管理をしてくれていた身内を賃貸名義人にする手続きをしました(職場から近いので、便利だからということで)。久しぶりにつかのま一緒に生活した飼い猫も、そのまま家ごと身内にゆずりました。猫は家につくと言いますし、もはや中々のおばさん猫なので、引っ越しがストレスになってしまうと判断しました。

ちなみに震度5弱と6弱を受けた鉄筋造アパートの5階はこんな感じになります。蔵書家の方、ご注意ください。本棚は高さ180センチのものが2台、高さ1メートルのが2台あって、そのうち低いもの1台のみ直立していました。あとはこのありさま。
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本棚をどかしたところ。
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すっかり恐ろしくなったので、私たちはかなり本を処分しました。はっきり数えたわけではないのですが、捨てた本が200冊超、古書店へ売ったのが100冊超、ブックオフへ売ったのがだいたい150冊くらいです。ブックオフもほとんどの店が店内に被害を受けていて、辛うじて開店したものの買い取りは行えないという店もありました。一か月の滞在中に営業と買取を再開したところがあったので、そこへ持っていきました。

本棚もダメージがあったので、低い1台だけを残して震災ごみに出しました。家の周りを散歩していると、いろんなものが震災ごみに出ていました。座椅子とか、ブラウン管テレビとか、ほとんど廃品回収扱いかな?というようなものもたくさん。

余震は一日に何回もありました。ほとんどが震度1かそこらでした。しばらくは揺れるたびに目が覚めたり怖かったりしたけれど、だんだん鈍感になっていきました。寝てる間に揺れても気づかないことが多くなりました。人体って不思議ですね。

先月末に福岡に引っ越しました。夫の仕事(日本語教師)が見つかりやすいと思ったからです。日本語教師だけでなく、雇用そのものが多いので、私もいよいよ逼迫したら就職活動をするかもしれません。今は、中国にいたときにお手伝いしていた日本語学校の教材作りを有償で引き受けてぽつぽつやったり、悪名高い(笑)クラウドワーク系の翻訳のお仕事を拾ってきたりしています。

ものすごく甚大な被害があったわけでも、大地震のその時に現地に居合わせたわけでもない自分がこんなこと言うのもおこがましいのですが、日本にいる以上、「どこで大地震が起きるか」というのは「ちょっとだけ傾斜がかかったギャンブル」でしかないのかもしれないなあと思いました。もちろん福岡も例外ではないと思います。ミニマリストってほどじゃないけど、物はもたないに越したことはないかなーなんて思い始めています。期せずして、中国1→中国2→熊本→福岡と、今年に入って3回も引っ越しをしてしまったゆえの結論でもありますが。

すっかり更新に間が空いてしまって、タイミングを計っていた感じがあるんですが、これからまたぽつぽつエントリしていこうかなと思ってます。私は元気です!以上です。

なんと帰国することになりました。

ここのところ、というか3月くらいからコツコツやっていたビザの更新のための諸々作業に追われ、そのために一時帰国までしていたというのに、急転直下、就労ビザの準備をしていた会社(外国語学校)の内部のごたごたに巻き込まれる形で、この会社からはビザが発給できないという事態になってしまいました。oh…

もう少しだけ具体的に言うと、いくつかの語学部門を運営するその語学学校から日本語部だけが独立することになったのですが、中国の法律では、新しい会社は創立後一年間はビザを発給できないそうです。でないと、ペーパーカンパニーを利用したビザの発給乱発が横行するから…なのかな? この国だと時節柄アウトなワードですね、ペーパーカンパニー…。

夫の就職先の学校ですが、私は夏ごろからちょいちょい遊びに行っていて仲のいい先生も何人かいたので、そのうちの一人から3月ごろにざっくりそのあたりの事情の勃発から経過を聞いていたのですが、まだ事態もそこまで進んでおらず、「ともあれ私の夫のビザを最優先で」ということでまとまっていたので、あまり心配はしていなかったんですけどね。まさかこんなことになるなんて。

先方からは他の手段でのビザ取得(例えばM(訪問商用貿易、なぜか代行業者を使って取れるらしいです。4/25訂正しました)ビザとか、彼らの知人の会社を通じてとか)をいくつか提案されましたが、それらはかなり黒に近いグレーな手段であり(いや、はっきり黒かも)、実態に合わないビザを持っているのがばれたら最悪二度と入国できないという場合もあるので、丁重にお断りしました。

かくして、帰国やむをえず、と決まったのはおとといで、ショックで昨日はマイクロソフトのゲームばかりやって過ごしました。部屋の片づけしなきゃいけないのに。ジグソー楽しい。

これからどうしようかなあ。国内外の何人かからは、再び中国へ戻ることを熱く、熱く期待されている現状なのですが、実際退職後のキャリアとしてならともかく、働き盛りの男女が稼ぐお金としてはこちらでの給与は(日本円で考えると)かなり心もとない、とは思い始めていた矢先でした。じゃ、心もとなくないだけのお金を稼ぐことが、日本でだったらできるのか? うーん。…有料note? 私が趣味半分で作った日本語会話の教案とか、売れるのかな。45回分で初級文法が全部入っていて、基本的に先生と生徒1対1の会話文なんですが、途中で飽きて、生徒が先生を探すけど見つからないまま終わるというメタっぽい話で1課書いたり、最後は落語『芝浜』のあらすじで使役・受身・使役受身を総復習するというシロモノなんですけど、売れるかな。ちなみにメタっぽい方は、同じく落語の『らくだ』からヒントを得ました。
本当を言えば、翻訳でちまちま食べていきたいですが、夫の仕事が見つかったりしてもしまた中国へ行くのなら、(2016年4月現在)グーグルやグーグル社のサービスを使えないためにフリーの仕事をしにくくなるし。どうしよう。

というわけで、先のことは全然分かりませんが、とりあえず来週帰国します。しばらくは、熊本の家の片づけをします。励ましてください。

シーズンオフだけど「見帰りの滝」へ行ってきました。(後篇)

こちらの記事の続きです。

佐賀県唐津地区が誇る(なけなしの)名所の一つ、見帰りの滝。
ことに相知町にとっては、マンホールにしちゃうくらい、これしかない!といっても過言ではないこの町のアイコンだったりします。いや、他にもあるよ!ありますとも……。

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あまりにも見事な滝なので帰り際にも思わず振り返って見てしまう、というのがその名前の由来なのですが、遊歩道とは名ばかりのまあまあハードなぬかるみ道(これは雨上がりなのが原因)を行けど、なかなか滝は見えてきません。

子供のころは毎年のように来ていたところで、遊歩道のルートもまったく変わっていないはずなのに、こんなに長かったっけ? そして、記憶の中の風景より、なんというか…ずっと自然に還って行っているような気がしました。
前日~前々日の風雨で、細い枝がいっぱい落ちているところを踏みしだきながら歩いていたからそう思ったのかもしれません。でも、昔腰かけることができた岩には緑色の苔がふかふかに生えているし、この新緑の季節だから、だけが理由なのか、この緑に包まれた、原始的なたたずまいは。

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そこはかとなく漂う屋久島感…。いや、ジブリ感?

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あとふた月か三月もすれば美しく咲くであろうあじさい。
落花の赤が美しい。

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そしてようやく、滝が見えました。


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これを撮ったのは、滝を見るために作られた長い吊り橋の上ですが、吊り橋のちょうど真ん中に立つと、松の木が重なってきれいに見えませんので、遊歩道寄りで撮っています。
ここから、これまで歩いてきた渓谷側を撮ったのがこちら。

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滝へは、上の写真で見える一番奥のコンクリート歩道の、さらに奥の岩場まで近づくことができます。顔や体に当たる微かなしぶきが気持ちいい!
このころには、晴れ間が見え、日差しが気持ちよくなっていました。
誰もいないのをいいことに、滝を背に、乾いた広い岩に寝そべってみたり、でっかい岩に助走をつけてよじ登ってみたり。

帰りは渓谷を挟んだ反対側、舗装道路のほうを歩いていきます。

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滝の脇には、不動明王。「鯉供養塔」の文字が読めます。夫がさっき食べた鯉こくの鯉を悼んで合掌…。

舗装道路へ上がる前の石段。雨で散った桜の花びらが地面にも、岩肌の苔にもたくさん貼りついていて、きれい。

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この世の中にある大抵のものは大人になると小さく感じるのに、子供のころ遊んでいたときよりも、ずっと大きく険しく感じました。また今度帰国したら、きっと来よう!


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おまけ。でっかいカタツムリのオブジェがそこかしこに。唐津ワンダー。

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シーズンオフだけど「見帰りの滝」へ行ってきました。(前編)

帰国4日目。昨日から、唐津の実家に寄せてもらっています。魚うまい。

夫がまだ一度も行ったことがないということで、今日は九州一の瀑布という「見帰りの滝」へ行きました。

見帰りの滝(唐津市相知町) | 観光情報検索 | あそぼーさが

日本の滝百選にも選ばれた唐津市相知(おうち)町の見帰りの滝。春は桜、夏は深緑、秋は紅葉がそれぞれに滝を彩ります。特に見ごたえのあるのが6~7月のアジサイ。ブルー、ピンク、紫など40種約40,000株にものぼるアジサイが九州一といわれる豪快な滝と見事な風景を演出します。滝一帯は見帰りの滝公園として整備され、滝をいろんな角度から眺めることができます。
(上記リンクより)

…などと、よそよそしい紹介をしてみましたが、正直言って超地元スポットです。どれくらい地元かというと、義務教育のころに美術の授業でスケッチしに来たくらい地元です。しかしそのことは措くとして、今日私たちが「見帰りの滝」の最寄り駅であるJR相知駅から徒歩で滝へ行き、それからまた相知駅へ帰ってきたよ、ということを前後編に分けて記します(一度に書くつもりが、長くなってしまったので)。
これからアジサイの見頃になると、「見帰りの滝」は唯一の繁忙期…もとい、ベストシーズンを迎えるので、ぜひぜひ、行ってみてください。

というわけで、まずはJR相知駅からスタート。

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「見帰りの滝まで車で5分」とあります。私たちは車がないので、歩きます。ちなみに歩くと一時間弱かかります。それにしても、情報がアップデートされている気配のない観光案内。最近(といってもここ10数年のこと)できた温泉が載ってません。

まあ、観光というより町民が使う感じだしなー。

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駅から歩きはじめて、10分経過したあたり。何もありません。後ろのほうの山々も、靄がかかっていてこの時はよく見えません。
とはいえ、雨が降る気配はないので安心して歩きます。
実は歩いて自分たちだけで目指すのは初めてだったので不安でしたが、所々に案内板が出ているので道には迷いませんでした。

さらに20分経過。バス停がありました。

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一日3便。そして躍る「日祝運休」の文字。

川沿いの道まで来るともう安心。川の上流に向かっていけば滝です。
子供のころ遊んだ覚えがある渓流。平日だからか、今日は誰もいません。飛び石がぬるぬるしてて結構怖い。

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そんなこんなで、ようやく滝の入り口に着きました。が、お腹が空いたのでここにある旅館兼食事処でご飯を食べました。

佐賀 相知町 あじさいの宿|都荘 -相知の郷土料理

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うな丼。うまい。肝吸い超うまい。夫は鯉こく御膳を食べました。
写真がなくてすみません。上記のリンクから見られます。リンクのお品書きの中には、要予約のものもあるので、注意です。

うなぎ。実は中国(南通)の日本食レストランで一度だけうな丼を食べたのですが、なんかぶよぶよしてておいしくなかったんですよね。たぶんその時食べたのは鰻魚という、鰻ぽい川魚だったんじゃないかなーと思います。煮物にしたらけっこうおいしい魚ですが。たとえ味が似ている魚だといっても代替にはならないものなのだなとその時思いました。


体力が戻ったところで、いよいよ滝へ。この先は、車も通れる舗装道路と徒歩用の遊歩道に分かれています。
意気揚々と遊歩道を歩きだしたのですが、なかなか「遊」というほど気楽に進めるものではありません。前日までの雨で道が悪くなっているのもそうですが、そもそも険しい。そしてなかなか強引。

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たとえばこんなところとか…

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こんなところとか。よそ見できません。もはやこれ、遊歩道じゃないだろ!などとツッコミを入れつつも、足元に気を付けながら進んでいきます。

片側は渓流、もう片側は苔むした岩肌。まだまだ滝は見えません。

後半へつづく!