『ゴールデンカムイ』を読んでる
皆このタイミングで『ゴールデンカムイ』を読んでる。
「このタイミング」というのは、連載がいよいよ佳境に入ったので最初から最新話までヤンジャン!アプリから無料で読めるよ、という太っ腹過ぎるキャンペーン期間のことだ(9/17まで⇒9/20まで延長)。
私も例に漏れず、卯野さん(id:macchauno)のエントリでそれを知って読み始めた。
山の日代休~お盆もずっと読んでた。その間ワクチンの2回目接種があったりして、熱が38度出た。読むのをやめて寝て、熱が下がったらまた読むことを再開した。
8月何してたかっていうと主にゴールデンカムイ読んだり観たり(アマプラで2期まで無料)してたわよ
— いさましいちびのknyg🌱 (@tnhby) 2021年9月1日
アニメ版はあまりにアレなエピソードをアクを掬うように自然に除きつつ、原作をわりと忠実に再現しててよかった。3期からめちゃ絵がきれいになってるらしくとても観たい…そして連載の方めちゃ佳境…!
連休が終わってからも読みつづけて連載に追いついた。木曜日は会社でお昼休みにアプリを開きたいのをぐっとこらえて、帰宅してすぐに読んだ。先週は休載で、明日はまた新しい話が読める。終わりに向かう寂しい気持ちもあるが、こんなに毎週心待ちに読む物語が、相当感性の鈍ったこの年になってもあるということがうれしい。
『ゴールデンカムイ』のことは前々から面白そうと思っていて、電子マンガサイトの無料キャンペーンで最初の2巻+3巻の初めまで読んだとき「うおーおもしろ! 完結したら一気に読もう」と読みたい気持ちを温存させていた。これはマンガ愛好家からすると許しがたい、だめなマンガ読者の典型的な有りようで、連載中に何かしらの形で(出来れば経済に寄与する形で)賛辞を送らないと意味がないという。ある意味それは正しいが、私はたいていの場合「ぜんぶで大体何巻ですよ、いまは全体の何パーセントくらい読みましたよ」と適宜示してもらわないと愛せないというか、愛そうと決めることができないというか、とにかくそうさせてほしいのだ。
そういう向きにもこの「完結間近!一気読み!」というキャンペーンは刺さったのだろうし、だからこそ皆が読んでいるに違いなく、今まで興味を持ちつつ様子をうかがってきた多くの読者をここで獲得して最終回までの気分を盛り上げる、というのはなかなかどうしてものすごい戦略だなー、と感心した。
狩猟、サバイバルグルメ、軍事、新撰組、近代史、強いヒロイン、大自然の脅威などなどいろんなオタクの食指を動かす要素が『ゴールデンカムイ』にはちりばめられているが、和人とアイヌ、北海道アイヌと樺太アイヌ、アイヌの宗教観と東北マタギのそれ、樺太の中のポーランド人、極東ロシアの中の少数民族など、作中の言葉を借りるなら「ちょっと違ってちょっと似ている」ことの豊穣さを丹念に描いているところに私は惹かれる。
言語ひとつを取っても、読み始めた頃はアイヌ語の面白さにのみ目を奪われていたけど、物語が進むにつれ、それと同等に日本の他の地域の方言の多様さ面白さにも気づかされる。九州生まれ九州育ちで大学時代も関西だったので、これを読むまで新潟の方言にも佐渡と本土で微妙な差異があることなど(言われてみれば勿論あってしかるべきなのだが)思い及びもしなかった。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%A0%E3%82%A4/dp/B07FCY7RWPwww.amazon.co.jp
ちなみにアマゾンプライムビデオでは、アニメ1・2期がプライム特典で無料なので、未見の方は2期で鯉登少尉が話す早口の薩摩弁シーンだけでも見てほしい。3期では樺太編に入り、ロシア語を話す月島らが見られるようなのでそれも楽しみ(有料で見られるがいまのところ未見)。
以前岩波文庫で読んだパナンペ・ペナンペ物語も出てきて面白かった。この本は片方のページに日本語訳、もう片方にアイヌ語(ローマ字表記)のパラレルテキストなのがいい。文法は対して分からなくてもosomaを見つけてニヤニヤしたりできる。
最終回まで楽しんで見届けたいとおもう。
あなたと話がしたい
あけましておめでとうございます。
このブログもずいぶん放置していました。
長い文章を書くリハビリをかねて、近況報告を。
今の仕事(貿易事務)は今年で4年目、さいわいこのコロナ禍の中にあっても忙しくさせてもらっていました。
というか、この頃は、ちょっとあれ?と思うくらい忙しくなっていました。
春頃はまだ良かったのです。
こちらが勤務体制の大きな変更を余儀なくされていた頃、主なお仕事相手の国も停滞していたため
こちらでは新体制についてのアイデアをあれこれ考えることにリソースを割けました。
在宅勤務中に豆を煮たり、蒸し料理を作ったりする余裕もありました。
夏にこちらの緊急事態宣言も解除され、世界も軒並みいったん正常に動き始め
お仕事相手の国は、今までの分を取り返そうという勢いで猛烈に稼働を再開した頃
こちらは相変わらず生産性の上がらない在宅↔出社の交代勤務と、
「いやいや、仕事ができる人はどんな環境でも遜色なくやれるはず」という理想のあいだで板挟みになっていました。
しんどいと思っていたけれど、いわゆるエッセンシャルワーカーに比べれば、仕事が減ったりなくなったりしている人に比べれば、自分はこれでもずいぶん楽をしているじゃないか。
確かにこの頃は、大嫌いだった残業も当たり前のようにしているけれど
いつまでも続くわけじゃなし、
私がそれを嫌だと言ったところで他の誰かが代わりにしんどくなるだけなのだから
それなら、有能な自分がこれまで通り引き受けていればいいんじゃない?
なんて思っていました。
ここまで読んだらお察しの通り、それから2ヶ月もしないうちにだめになってしまい
幸い「だめ」を自覚していて対策候補をいくつか考えていた矢先に、
「だめ」に気づいてくれた同僚の声かけのタイミングの良さとか、
その時考えていた「対策」を話した後のその人や周囲の人の迅速さや適切さとか、
クリニックへの予約を入れる踏ん切りを与えてくれたある出来事とか、
たまたま1件目から良いクリニックを引き当てることができた運の良さとか、
他の同僚や上長の人の良さ、聡明さ、そんな様々なものに助けられて、
ドクターいわく「正常以上、病気未満」だった状態を脱しつつあり、
仕事も時間や量を定時・定量以内にセーブしつつ、何とか続けられています。
自分にとっては生まれて初めてというレベルの深刻な不眠がだんだん良くなっていった頃、
私には知りようのない苦しさというものを少しでも理解したいという気持ちから
手に取った本があります。
居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者:東畑 開人
- 発売日: 2019/02/18
- メディア: 単行本
沖縄のデイケア施設で、大志を抱く若き臨床心理士が向き合った「ケア」と「セラピー」の現実を
つとめて読みやすく、門外漢にもわかりやすく、笑いを多く交えつつも同時に切実に綴った好著です。
文中、「ケア」と「セラピー」の違いについて言及した箇所、そして施設の「メンバー」同士が互いにケアし合うくだりを読んで
ああ、私はケアされているんだなと思ったのでした。
ケアはサービスとは異なり、一方が他方へ与え、他方が一方から享受するという片道切符ではありません。
誰かをケアすることで、同時にまた自分の心身もその人からケアされているのだと。
その意味で、貨幣経済とは別の原理が「ケア」には働いていると著者は言います。
上記でサービスを例に挙げたけれど、たとえば接客業における店員と客とのやりとりにおいても、
相互に「ケア」が生じうる場面もあると思うのです。
いや、無人レジでもない限り、多かれ少なかれそこには「ケア」があると思います。
時としてそれは無意識におこなわれます。
例えば12月のはじめに届いた母からのLINE。
その朝、母は自分で焼いたというお菓子の写真を送ってきてくれました。
私は何週間も前にシュトーレンの材料を取り寄せたのに何をするにも無気力で、手つかずのままでした。
そのことを書き、それでも努めて明るく「今日できたらいいな!」と送ると、
母からは「出来たら見せてね。楽しみにしてます」と。
母には私を助けたとか、ケアしたという自覚はなくても
私がこの時、母に出来上がりを見せたいという気持ちで行動できたことは
母からケアを受け取ったのだと思います。
このマンガの4巻「PTSD」の章にも、『居るのはつらいよ』同様
「いる」ことが相互のケアへ作用する場面が出てきます。
人は人に癒やされる。
(余談ですが、このマンガの1巻を読んで
「カジュアルにカウンセリングを受けてみてもいいのでは?」と思ったのが
私の「対策」であり、対策を考えはじめたきっかけです。
結局その後、1ヶ月近く何もできずにいたのですが…)
声をかけられてヘルプを出してから数日後、同僚と個人メールのやりとりを始めました。
数年来同じ部署で働きながら、互いの情報をほとんど知らなかった人と
情報や感情の交換をするのは単純に面白くて、
相変わらず仕事は忙しいけれど、だんだんと日曜の夕方に絶望することもなくなっていきました。
自分のしんどい感じや状況をTwitterで小出し小出しにつぶやく一方で、
同僚と、ゆっくり長いメールのやりとりをしていて考えました。
インターネットの海に小瓶を放り投げるような
「分かってくれる人が分かっていいねをつけてくれる」コミュニケーションを、私は良しとしてきたけれど
もしかしたら私はずっと、対話がしたかったのかもしれないな、と。
もしかしたら皆、いや、皆とまではいかなくても
本当は「対話」を必要としている人が、この中にはたくさんいたりするのかな?
そんなことを考えたのです。
あなたのことをもっと知りたいな、と思う人が私にはたくさんいるな、とも気づきました。
はてなや他の何かで相互の方、ゆっくり双方向のやりとりをしませんか。Twitterで相互の方はDMをもらえたら返します。
よろしくお願いします。
2017年8~12月に読んだ本
長いことブログを放置してしまっています。
とりあえずこのままでは今年の読書記録もままならないので、2017年のまだここにまとめていなかった本の記録だけでもやっておこうかな、と思った次第です。
2017年(1年分)の読書のまとめは以下のリンクからも。
https://i.bookmeter.com/users/17108/summary/yearly
以下、2017年8月〜12月の読書記録です。
読書メーターの「まとめ」機能は「先月分」もしくは「去年分」のまとめのみ生成できるので、この期間の分はAmazonのリンク+読メの自分の感想のコピペにします。
2017年8月(3冊)
語学書しばり、もっと言うと「原則」白水社しばりという書評集。公平にも検定対策本まで取り上げられていて、実際に受験しないまでも初中級のおさらいやレベルチェックに取り組んでもいいかもな、などと思わされてしまう。自分が密かに良書だと思っていた地味な本(話題にも特にならず重版もされていない)を黒田先生も褒めていて、でしょでしょ!と嬉しくなったり、狭義の語学書にとどまらず語学学習をテーマにした小説なども取り上げられていて、まんまと読みたくなってしまったり。ぜひ次は、版元の縛りに囚われないものを上梓してほしい!
2017/8/31読了
存在はずっと前から知っていたが自分には合わない気がして手を付けなかった本。入った喫茶店に置いてあったので読んだが、直感の正しさを確認した。カタログとしては楽しいかもしれないが、日本語からの収録語「ぼけっと」や「侘び寂び」などの解説が恣意的で拡大解釈すぎて不信感があるため、他の語に対しても同様の疑念がつきまとう。以前、改訂にあたりいくつかの語の意味を一般から公募した国語辞典に寄せられたものを見て、大喜利かよ…と脱力したのだが、それを思い出した。あと読みはカタカナでなく国際音声記号で表記してほしい。
2017/8/20読了
途中ブランクを挟みつつ、ようやく読了。ただの箱であるコンテナがいかに物流・海運へ革命をもたらしたか、というのが本書の主たる内容で、こう書くといかにも地味なのだが、実際読んでいると、人間的魅力に富んだ一人の起業家の一代記というような側面もありつつ、お上たる行政機関・港湾局VS民間企業たる海運会社の攻防や、さきの明暗を分けることになる各主要港のコンテナ輸送への反応の違いなど、ディテールの面白さがたまらない。10年前の本なのでデータの古さは否めないが、産業や物流の現代史を知るには類書のない貴重な読み物だと思う。
2017/8/19読了
2017年9月(8冊)
- 作者: ハン・ガン,川口恵子,きむふな
- 出版社/メーカー: cuon
- 発売日: 2011/06/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 23回
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とても面白いものを読んだという満足感。3つの短編の連作で、最初それとは気付かなかったのもあり、表題作だけで割と良くあるヘンテコ風な幻想小説かな、と決めつけてあやうく読むのを止めるところだったが、その次から俄然面白くなってきた。本作は自らの過去作品からの翻案とのことだが、あらすじを読む限り、元の小説のような寓話性を徹底的に排除したこちらの方が、より鋭く凄みを帯びていて成功しているのではないかと思った。もうすぐ出る著者の新刊が気になり、その布石としてこちらを手にとったのだが、これならかなり期待できると感じた。
2017/9/28読了
やっと読めた。途中ちょっとしんどかったけれど、後半は勢いが付いてかすらすら読めた。漠然と、ヨーロッパの言語は歴史的にまずラテン語とギリシャ語が双璧なのかと思っていたけれど、それはある単語の語源を遡って調べたときにたいていラテン語かギリシャ語に行き着くからそう思いこんでいただけで、実際は後世のラテン語と英語の関係のように、ラテン語もまたギリシャ語から色んな語を借用しているというのを知れたのが一番の収穫。著者が毒舌で好みの文章なのと、最終章でラテン語に触れるための具体的ツールを示してくれているのもよかった。
2017/9/26読了
カモ少年と謎のペンフレンド (白水uブックス―海外小説の誘惑)
- 作者: ダニエルペナック,Daniel Pennac,中井珠子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: 単行本
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黒田先生の『寝るまえ5分の外国語』で紹介されていたのが読んだきっかけ。児童文学ということもあって、すんなり読了の運び。カモとかあさん、ぼくと僕の両親や先生とのやりとりなども笑えるし、中盤以降の展開もドキドキ感があり最後まで飽きない。まだ仏語は勉強してないけど、原書探してみたくなってきた。四部作ということもあとがきで知り、そちらの残りも読んでみたい。
2017/9/24読了
ドイツ語エッセイ 笑うときにも真面目なんです (音声DL BOOK)
- 作者: マライ・メントライン
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/08/11
- メディア: 新書
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本書はまず語学講座テキストのために書かれた外国語(日本語)のエッセイがあり、それに母語(ドイツ語)を足して書籍化したものとのこと。初読として、左側のドイツ語ページの気になる単語を拾い読みしつつ、右側の日本語エッセイを楽しく読んだ。ドイツ語は今のところ優先順位低めだけど、いずれ学習のために再読したいなあ…。柔らかくキャッチーなテーマばかりで、Twitterで時折見る時事などへの鋭い視点を持った文章ももう少し読みたかったなあ、とも。音声データも聴けるとのことで、そちらも(学習の折には)楽しみです。
2017/9/19読了
Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis
- 作者: J. D. Vance
- 出版社/メーカー: William Collins
- 発売日: 2017/06/01
- メディア: ペーパーバック
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邦訳を読んだ後でのチャレンジ。いかにも教育を受けた人の文章らしく(自分には)語彙レベルがまあまあ高めだけど、その中に時折挿まれるヒルビリーらしい会話文やジョークが、ともすれば深刻になりすぎるようなテーマの本書のテンポをほどよく軽快にしている。こういう、一文が長い「賢い文章」のライティングスキルは是非とも身につけたいと思った。匆々と読み飛ばした箇所も少なくない割には読むのに時間がかかりすぎたので、もう少しスキルアップしてから再挑戦します。
2017/9/17読了
昆虫が苦手で写真を見るのもつらいという方には無理強いはしないが、「そこまで興味はない」くらいの人には是非とも勧めたい(そして虫好きにしたい)。美しいカラー写真や豊富な知識だけでなく、虫を求めて異文化圏に飛び込む著者一行の臨場感、素敵な収穫を得たときのわくわくや喜びなどがストレートに伝わってきて楽しかった。もっとこの本の世界に浸っていたい、本というものに終わりがあるのはつまらないな、という気持ちを物凄く久しぶりに味わった気がする。
2017/9/15読了
- 作者: サラローズ,Sarah Rose,築地誠子
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2011/12/01
- メディア: 単行本
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茶の木とその製法を最大の輸出物であり知的財産として頑なに守り、外部に漏らすまいとした清朝の中国。東インド会社に雇われそれらを盗み出すべく未知の中国内陸部へと分け入る、叩き上げのスコットランド人プラントハンター。彼の冒険を主軸に、貿易や紅茶産業の歴史、英国の園芸文化などをも広く描写したノンフィクション。最高に面白かった。今更ながら世界史に興味が湧いてきた。務めを終えたプラントハンター・フォーチュンが幕末の日本を訪れた際の旅行記もぜひ読みたい。
2017/9/13読了
新渡戸稲造と斎藤秀三郎の章目当てで手に取ったけど、他の章に取り上げられていたどの人物も魅力的なエピソードに満ちていて、面白く読んだ。鈴木大拙の最後の言葉が英語だったなんて知らなかった。あまりに有名な白洲次郎とホイットニーのやりとりや岡倉天心のボストンでの事件など、どうしても派手な説話にばかり目が行くが、本書中のどの人も全くの天才肌というわけではなく、皆たゆまぬ努力をしていた点を見逃してはいけないと思った。幾度も挿入される著者の教育論には概ね同意するけどちょっと煩く感じてしまった。
2017/9/6読了
ちなみにこの頃(2017年9月)から読書メーターでの読んだ本分類をNDC準拠で始めています。自分でもちょっと気持ち悪いとおもう。
2017年10月(2冊)
『紅茶スパイ』で本書の存在を知ってその流れのまま読んだ。『紅茶スパイ』でのフォーチュンの活躍が彼のハイライトだとすると、本書で綴られた日本や中国での旅は「余生」ということになりそうではあるが、さても充実した余生であることよ。多くの有名無名の人との交流、山川草木の描写、そして(嫌味なのかどうなのか判らない紙一重の書き方による)中立で冷静な視点が一貫していて、とても良い。異文化と接した時の最も規範的な態度のひとつをも、本書には見た思いがする。
2017/10/16読了
本書は、トーマス・マンがWW2前夜から死の直前まで書き綴った日記を、池内紀がダイジェスト的に解説したもの。ダンディで冷静沈着、権力に阿らないマンの戦争への姿勢は、本邦の永井荷風のようだ。一方で後年自らの創作力の衰えを自覚し、巷で再評価されだしたカフカを読み漁っているのは微笑ましい。読後、各章扉の写真を年代順に見ていると物悲しい。亡命生活の不便や苦労は勿論、戦後のドイツ国民からの非難はさぞ堪えただろう。明晰だったマンも、晩年はかつての妻の両親同様ある重要な決断がすぐには出来ず鈍化していたのも印象に残った。
2017/10/4読了
2017年11月(4冊)
フィリピンを知るための64章 (エリア・スタディーズ154)
- 作者: 大野拓司,鈴木伸隆,日下渉
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2016/12/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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複数の書き手が様々なテーマから一つの国を論じたシリーズの一つ。(日本を含む)他国による何度かの占領をはじめとしたフィリピンの歴史や社会問題、料理や消費性向などの文化や経済、最終章では日本との繋がりまで、一通りを浚える。お仕事に必要…というほどではなく個人的な興味が半分以上で読んだが、概ね楽しめた。書き手によって章の質に差があるのはこの手の本の宿命なので、こちらが気をつけて読むほかない。「フィリピンのビジネス英語力は156ヶ国中で世界一!」とほぼそのまま書かれていたのには英米は?調査方法は?と呆れた。
2017/11/30読了
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/12/31
- メディア: 文庫
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序盤の構成から意表を突かれる。思ったよりずっと私小説で、読みながら田中小実昌の『ポロポロ』を想起した。読者は物語を外から見ることを余儀なくされるがゆえに、本作における時間旅行者というテーマはあくまでSFからの借用物にすぎないのだが、戦争やその周辺の人間を淡々と描くのにこれほど誂え向きの道具もあるまいと思わせられる。ヴォネガットの創作を読むのは『タイタンの妖女』『猫のゆりかご』に次いで3冊目。ハヤカワSFの電書半額セールのおかげで、「いつかは読まねばならない本リスト」からこのたびめでたく除外されたのだった。
2017/11/30読了
- 作者: アーネストヘミングウェイ,Ernest Hemingway,高見浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: 文庫
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原書を読む前にわざわざもう一度買い直して再読。案の定ほとんど忘れていて驚く。初読時は、とにかく青年時代を描く筆致のみずみずしさをまばゆく感じたものだったが、今読むとある種の哀れっぽさからくる滑稽さをも感じないでもない(その後の顛末を思うと不謹慎なのだが)。愛人を作ったことがハドリーとの、そしてパリ時代との離別を招くのだが、自業自得にもかかわらず妙に言い訳がましく被害者気取りで、そのあたりにも、甘やかな夢たる若い時代を振り返る晩年の作家の、救いがたい絶望さえもにじむようで。ともあれ、好きな本には変わりなし。
2017/11/20
回想小説、探偵小説、そして母恋いの小説と分類したくなる長篇。ある重要人物との再会には違和感が否めなかったが、両親との邂逅を試みる「儀式」に彼は必要なパーツであること、これが「かたりの小説」であることを考えると納得した。回想の1930年代ロンドンの二階建てバス、幼少期の小さな冒険、上海バンドなどに心くすぐられ、それだけ最終的に明かされる、両親失踪の真相や主人公が自ら獲得したと信じていたものの正体が残酷で堪えた。英語的には、回想の形を取るためit...that主体で進み、読みやすい。時系列の混乱に注意。
2017/11/14読了
2017年12月(10冊)
江戸時代の長崎。大店の植木屋で働く熊吉は、兄弟子たちから押しつけられる形で出島のある屋敷での仕事へ通いはじめる。仕事とは薬草園造り、そして屋敷の住人は蘭方医のしぼると先生。物語全体の構成も良かったが、特に熊吉の目を通して描写される登場人物の植物愛や学問への情熱、お滝や高野長英など実在人物のキャラクターがとても魅力的だった。 『紅茶スパイ』の読後なので、熊吉が考案したのはウォードの箱(的なもの)だなとか、『紅茶~』のフォーチュンは本書には登場しないけど日本でシーボルトに会ったんだっけなどと楽しんで読んだ。
2017/12/30読了
アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール
- 作者: 読書猿
- 出版社/メーカー: フォレスト出版
- 発売日: 2017/01/22
- メディア: 単行本
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ともかく全ての項目を要約しノートに取り終えたので、これを以て読了とする。古今東西の発想法の紹介が本書の主な内容ではあるが、だからといってクリエイティブで生業う人だけの物というわけでもなく、例えばさくらんぼ分割法などはタスク管理、スケジュールの立て方や実践などにも有用だったりする。つまり、およそ人の活動というもので全く創造的でないもの、発想する余地のないものというものはほぼないのだとも言える(例えば本の読み方ひとつにしてもそう)。年内の「読んでる本」消化キャンペーン第2弾。
2017/12/28読了
タイを知るための72章【第2版】 (エリア・スタディーズ30)
- 作者: 綾部真雄
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2014/07/29
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タイにはうるち米(炊飯)圏ともち米(蒸し飯)圏があること、チェンマイは京都をハイブリッドにしたような街だということ、93%は仏教徒だがムスリムやキリシタンも数%いること、仏教徒の中には華人も多数いて独自の宗教文化を擁していること、カンボジアとの長く続く領土紛争などを初めて知った。タイは本文中のことばを借りれば「中進国」で、先進国を自称する我々はついかの国の人たちを「純朴で、温かく、信仰心に篤い」などと一言でまとめがちなのだが、それもタイ王室が喧伝し都市部の人々が信じている幻想では、という視点が一番の収穫。
2017/12/23読了
英検1級語彙・イディオム問題500 (英検分野別ターゲット)
- 作者: 旺文社
- 出版社/メーカー: 旺文社
- 発売日: 2006/03/01
- メディア: 単行本
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年内の「読んでる本」消化キャンペーン第一弾。正答率はともかく、ひとまず模試以外は一周。別の語彙本を来年10ヶ月くらいで仕上げてからいずれ二周目をやる。
2017/12/20読了
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,Jr. Vonnegut Kurt,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 文庫
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帰りのバスの灯りが暗いので、その時間は紙の本でなく電書を読むことに決め、これはその2冊目。しかしあまりの面白さに最後の方は家に帰り着いてからも読み続け、読み終えたのは今朝のあかるいバスの中だった。IQで序列された人々、自動機械化された生活、落伍者の末路は軍人かドジ終点部隊(公共工事請負)というアメリカで、持てる者たるポールの違和感は徐々に膨らみ、ついに秘密結社に担ぎ出されるが…。示唆に富むフレーズも多くあり、皮肉で妙に明るい結末が深く印象に残る。あとがきには著者のGE社での日々がモチーフとあり、笑った。
2017/12/12読了
例えば中国語の発音や語彙が地域によって違うように、スペイン語にも国や地域で違いがあるというのは、うっすら一年くらい独学している身には知識としてあったが、著者の留学体験としてこのように「メキシコのスペイン語」の具体例を挙げられると、本当だったんだ、こんなに違うんだ!と驚く。英語翻訳者ならではの学習の動機もいい。全体に軽妙で、さらっと読もうと思えば読めるが、メキシコの歴史への真摯な言及あり、スペイン語文法解説あり、ラテンアメリカ文学の紹介ありで、緩急自在でもある。巻末の文献リストや単語索引も得した気分になる。
2017/12/4読了
ユリイカ2000年6月臨時増刊号 総特集=田中小実昌の世界 みんなコミさんが好きだった。
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2000/06
- メディア: ムック
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小島信夫の寄稿が良かった。ウイリアム・サローヤンの創作心得。「O・ヘンリーのような落ちのあるものは書かない」等々。堀江敏幸と池内紀の対談も良かった。「浪曲師朝日丸のこと」は以前どこかで読んだことある。何かのアンソロジーだろうか。
2017/12/2読了
2017/12/2読了
死語を媒介とした再生の物語、というと些か陳腐だが、これは着想の勝利という他ない。ことばへの過剰な感受性から失語症となった女は、経験から未知の言語との邂逅がそれを癒すと信じ、カルチャースクールで古典ギリシャ語を受講する。講師の男は徐々に視力を失いつつあり、それを他人へは隠しながらも静かに受容しようとしている。薄い膜を隔てて世界と接しているような彼らが、偶然の事故からふれあうという すぐれたプロット。ボルヘスへのオマージュが随所で、主要人物二人が妙齢でなく中年という点、物語を寓話たらしめない生活感も良かった。
2017/12/2読了
- 作者: ドナ・ハート,ロバート W.サスマン,伊藤伸子
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2007/06/28
- メディア: 単行本
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かつての狩猟仮説(ヒトの祖先は能動的に他の生物を狩って食料とし、攻撃的で仲間同士でさえ闘争した)がもたらしたイメージ「狩るヒト」と真っ向から相対する「狩られるヒト」論を例証する一冊。二足でぺたぺた歩く脆弱なヒトの祖先は、主に大型ネコ科にとって恰好の獲物であったが、彼らは食べられる(狩られる)ことによって防衛手段として共同体での生活を覚え、知能を獲得していった…というのが「狩られるヒト」説の主旨。中盤は哺乳類・爬虫類・猛禽類による霊長類(ヒト含む)「食べられ」の事例が豊富。くどい箇所も多いが面白かった。
2017/12/2読了
この時田中小実昌づいているのは、前月読んだヴォネガットのスローターハウス5と『ポロポロ』が全くの無関係ではないように思われて「コミさんは『スローターハウス5』を読んでいたのかな?」と文学徒の血が騒ぎ図書館で調べものをしていたからです。結局ヴォネガットの別の作品についての解説エッセイしか見つからず、この件は保留になっています。
それから、日頃読書していると買ってちょっと読み始めたものの進まず放置する本が溜まっていくと思うのですが、去年の12月はその年のそんな「読んでいる本」に入れっぱなしの本を消化する月とする試みをやってみたらけっこう上手くいったので、今年もそれをやろうかと思っています。煤払い的な。新年の読書をすっきり始められる気がするのでおすすめです。
6~7月に読んだ本
6月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:874
ナイス数:13
イスラーム入門 文明の共存を考えるための99の扉 (集英社新書)の感想
面白く読んだ。イスラーム世界について、日本では必要以上に異化されがちだと感じる。例えば「神のみぞ知る」と訳されることもある「インシャーアッラー」、俗に言われる責任逃れの常套句というよりは「自分一人で何もかも成し遂げられると思うな」という自戒のフレーズであり、そう考えると「人事を尽くして天命を待つ」とも換言でき、急に親しさを覚えてしまう。通勤中に一周しただけなので、用語や人名などはまだきちんと把握できていない。二周目はノートに図示しながら読んでみようかな。
読了日:06月09日 著者:中田 考
アブサロム、アブサロム!(上) (講談社文芸文庫)の感想
第二章まではしんどかったけど、そのあとだんだん面白くなっていった。樋口一葉かよ!みたいな一文の長さ、原文もこんなんなんだろうなと想像しつつ。様々な人物による語り=騙りの体裁を取っているが、今後新たな語り手にバトンが渡るのだろうか。下巻も楽しみ。
読了日:06月21日 著者:ウィリアム・フォークナー
基礎から学ぶ 音声学講義の感想
とりあえず今の自分に必要そうだった17章まで読んだので、一応の読了とする。これを読み始めた当初の狙いは、英語をなめらかに発音するための手がかりを得ることだったが、実際それ以上の収穫があった。たとえば中国語の一部の音の、子音の舌の位置を勘違いしていたことがわかったり、発音はまるきりノーマークだったスペイン語の音声について知れたりなど。今は破擦音がきれいに出るように練習しているところ。
読了日:06月30日 著者:加藤 重広,安藤 智子
7月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2386
ナイス数:40
役に立たない読書 (インターナショナル新書)の感想
すべてに首肯したわけではないが、面白かった。『学文(がくもん)の置き所、臍の下よし、鼻の先わるし』いい言葉だな。読書は基本的に自分だけのいとなみなので、すぐに人から言われたとおりにあれこれできるものでもないし、それにしたがう必要もない。本書に対してもそれは同じ。自分も、読書より面白いことがあれば明日にでもやめてしまうかもしれない。でもそのくらいでいいんだとおもう。見返りを求める行為は基本的に報われないので。
読了日:07月02日 著者:林 望
アブサロム、アブサロム!(下) (講談社文芸文庫)の感想
上巻でフォークナー文体を受け入れる準備が整ったので、下巻はだいぶ読みやすかった。上巻で複数の人物から語られたサトペンやジェファソンの歴史が、下巻では主たる語り手のクェンティンと学友によって自在に語られ、そこから新たな物語が立ち現れてくる。最後の系譜、年譜と対照させると面白いが、その系譜、年譜は「真実」だと果たして言えるのか?などと考えるのもまた楽しい。
読了日:07月04日 著者:ウィリアム・フォークナー
ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たちの感想
前書きにあるように、本書はごく私的で主観的な回想記だ。しかし私的な随筆であっても、その書き手が十分な知性と論理性を備えている時、そこには並ならぬ価値が宿ることになる(それこそが読まれるべきエッセイの条件だと私は思っている)。そういうわけで、読み始めの印象は
少し予想外だったものの、「ケンタッキーのがばいばあちゃん」的中盤を経て至る自己実現と同時に浮き彫りになる周囲とのギャップ、生まれ育ったコミュニティとの心理的隔たりなどの鮮明な描写は面白くも切なくもあった。地方出身者は多少身につまされることもあるはず。
読了日:07月08日 著者:J.D.ヴァンス
現代中国経営者列伝 (星海社新書)の感想
あとがきにある「好きか嫌いかではなく、中国は『面白い』」という著者の弁に大きく同意。本書に登場する経営者達の軌跡は多分に誇張も含まれているだろうけど、破天荒なエピソードの多くに「中国ならさもありなん」と思わされてしまう。コラムや本編の随所に見られる最新(刊行時)トピックも有益。都市/農村戸籍の廃止、著作権保護への急速な動きなど、中国も今なお着々と変化している。個人的には、HUAWEIへの好感度が前より上がった。
読了日:07月12日 著者:高口 康太
その他の外国語 エトセトラ (ちくま文庫)の感想
現代書館から出ていた同名書籍の文庫化ということだが、そちらを未読だったので新鮮に楽しんだ。とはいえ、単行本収録分の文章は今の自分には違和感を覚えるくだりも少なくなかった。氏の他の著作と既視感がある、自称変わり者アピールが鼻につく、という向きには、第四章のチェコ講演旅行記だけでもぜひ読んでいただきたい。
読了日:07月21日 著者:黒田 龍之助
リオデジャネイロに降る雪――祭りと郷愁をめぐる断想の感想
昔大学のゼミの指導教官から言われた「巧い文章が書けるということは、論文を書くにあたっても何よりの強みになる」という言葉を思い出した。著者はエモい論文を書くことでも(一部の界隈で)知られているが、やはりというかなんというか、こうした散文では本領発揮というところだろうか。底抜けに明るいリオの風景を愛着たっぷりに描写しつつ、それが回想録という点によって愛着は別の色、つまり本書で幾度も登場する「サウダージ(哀愁)」をも纏うことになる。引用される数々の詩や紹介される楽曲からイメージが何層にも広がるのもまた愉しい。
読了日:07月23日 著者:福嶋 伸洋
Murder on the Orient Express (Poirot)の感想
買って放置していたものの、実写映画リメイク版を製作中と知り再挑戦。鑑賞前に読み終われればと気長に取り組むつもりだったけど、面白くて思ったよりずっと早く読み終わってしまった。原書の効果かどうかは判らないが、読み進むにつれ「この物語を何の前情報も無しに享受できた人々はなんて幸せだったんだろう!」と思い、当時の書評などを読んでみたくなった。さすがに粗筋や結末は知っていたが、幕切れがこんなにあっさりだとは思わず驚いた。現代だとPC的にアウトよね、という民族主義的、性差別的な描写はかなり多く、時代だなあ、と。
読了日:07月30日 著者:Agatha Christie
オリエント急行の殺人 (創元推理文庫)の感想
ペーパーバックで読んだ内容の細部確認用に古本屋で購入し、追いかけるようにしてこちらも読了。何しろ古い…。保母だとすべきnurseが看護婦とされていたり、原書でかなりテンションが上がった場面も説明が無さすぎて、これ当時の人は置いてきぼりだったのでは?と心配になったり。自分は普段翻訳ものの小説をあまり読まないのでこれが古さゆえかどうかはよくわからないが、作中の欧米人が「おじゃんになる」とか「小田原評定」とか慣用句使ってるのを読むと奇妙な感じがして気が散ってしまう…。
読了日:07月30日 著者:アガサ・クリスティ
読書メーター
通勤時間に本を読む習慣がついたので、先月はよく本を読みました。
先々月やそれより前は、どちらかといえば英語や中国語の勉強をすることが多かったのですが、語学の勉強はやっぱり好きなだけ声を出せる環境でするのが一番だとこのごろ思っているので、勉強は家でやり、それ以外の場所、交通機関の中や、朝の始業前や昼休みの会社では本を読むことが多いです。この頃は。
最近の語学の勉強について。
英語や中国語にはシャドーイング用の教材を使い、それ以外はDuolingoなどのアプリでマイペースに勉強してます。前者は、シャドーイング用音声教材を通勤時に聞きながら口を動かしてみるというようなことをこの前まではしていたものの、実際に音声に出す訓練とは似て非なるものだと気づいたので最近はそれはあまりやっておらず、先に書いたように家でやる時間をなるべく確保できるように努めているところです。結局スピーキングというのは口の形+息の振動が具現化したものなので、息=声量が不十分な状態での口パクのトレーニングではあまり意味がないのではないかという結論に至りました。
英中以外では、最近は広東語とポルトガル語を物見遊山的に楽しんでいます。
2月の短歌の目、自作のふりかえり(解題) +読書メモなど
tankanome.hateblo.jp
kn.hatenablog.jp
元ネタがあるものだけ、簡単に種明かしというか解説を。
鬼は外出て行ったきりふるさとの人ただ老いてゆく節分会(せつぶんえ)
好きな寺山修司の短歌、「かくれ鬼の鬼とかれざるまま老いて誰を探しにくる村祭り*1」から連想しました。
たましひがちょっと抜け出ては戻るやうにシ♭ドレソレドシ♭鍵が波打つ
ここ数か月の「短歌の目」では、あんまり自分で納得のいく出来のものが詠めなかったり、思いつくのにやたらと時間がかかったり、かかりすぎて締め切りに間に合わずに参加できなかったりと散々だったのですが、今月はぱっぱっと出来ました。トータルでも一時間かからなかったくらい。自分で好きだなと思うものも多くて、満足です。畢竟ことばとことばの連なりは化学反応のようなもので、長考してもいいものが出来ない時は出来ないし、いい組み合わせを引き当てられるのに、かけた時間はあまり関係しないのかもしれません。
別のエントリで書こうと思って準備中ですが、いい作用をもたらしたものとしては自分の環境の変化がありそうです。できるだけストレスのない生活を、と内向きに、守りに徹していたのをやめたのです。あまりにもストレスのない生活は、同時に刺激も足りなさすぎたのかなと反省しました。
それから、この本を読んだことも、おそらく良い作用をもたらしました。
- 作者: 池澤夏樹,穂村弘,小澤實
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/24
- メディア: 単行本
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詩と短歌と俳句を選んでいるのは、それぞれ池澤夏樹氏、穂村弘氏、小澤實氏です。知っているものも知らないものもあり、楽しめました。
特に短歌でいえば、個人的に印象的だったのは次の歌です。
吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ
この短歌は、林芙美子の短編「清貧の書」の作中に、とても印象的に挿入されていたことから、ずっと覚えていた大好きな一首だったのですが、この本で初めて若山牧水の作であることを知りました。
- 作者: 林芙美子
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「清貧の書」は、短くてすぐに読める、しみじみと佳い作品ですので、未読の方はぜひ。
青空文庫のWeb版はこちらから。
他に『近現代詩歌』に収められている短歌で好きだったものおよび作者は、以下に。
わが胸の鼓のひびきたうたらりたうたうたらり酔へば楽しき 吉井勇
美しき亡命客のさみえるに薄茶立てつつ外(と)は春の雨 岡本かの子
シルレア紀の地層は杳(とほ)きそのかみを海の蠍の我も棲みけむ 明石海人
春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ 前川佐美雄
*1:私はこれで覚えていたのですが、「かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて~」「かくれんぼ鬼のままにて老いたれば~」と、上の句が微妙に違うバージョンもあるようです。本で確かめようにも、売ってしまったのか見当たらず…。
『暮しの手帖』84号のダーニング(繕いもの)をやってみました。
先月か先々月に、かなり久しぶりに買った『暮しの手帖』84号。
- 出版社/メーカー: 暮しの手帖社
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土井善晴先生の新連載とか、入船亭扇辰師匠の記事とか、いくつかお目当てはあったのですが、お料理ページも唐揚げ、サンドイッチ、炒め物など私ごのみのものが多くて、これは買いだな、と。
そのくせ、いまだにどのレシピも試してないのですが。まあそのうち。
この号には、靴下などの穴やほつれをかがって直す技術「ダーニング(darning)」の紹介記事もありました。私の第一印象は、まあ面白そうだけど自分はやらないなー、でした。つまり、特に今号を購入する要素には入っていなかったわけです。あまり興味が持てなかったのは、よっぽど元がいい服などならまだしも、繕ったところでかえってみすぼらしいだけじゃない?と思ったからです。その時は。
でも、結局数日後だか数週間後だかに挑戦していました。中国で買ったユニクロのネルシャツがあったのですが、買ってすぐくらいのときにボタン穴のほつれに気づき、不便だなーと思いつつ我慢して着ていたのを思い出したからです。中国でわざわざユニクロ?という感じですが、自分で買ったのではなく正確には友人の両親に買ってもらったものなのです。
よくよく考えると、元がいい服ほど素人が針を入れると台無しになってしまうのだし、ユニクロのB級品のネルシャツなら別にどうなってもいいんじゃ?*1じゃあせっかくだし、こいつを実験台にしてみるか、と思いつきました。
糸を縦と横にそれぞれ渡し、布のような「面」にすることでほつれや穴を覆い隠してしまうと、こんな感じになりました。
同系色にするよりも、差し色になるようなビビッドな糸で刺した方がむしろ面白いかなと思い、刺し子用の赤い糸で。
ボタンを閉じてもちらっと赤が見えていて可愛いです。
『暮しの手帖』の記事のなかでは、ニットの靴下やセーター、ズボンのポケットなど色々なところに施されたダーニングを見ることができます。
やっぱり、あからさまに見えるところのは、外で着るのにちょっと勇気がいるかなーと思わなくもないですが(失礼)、実際に一着やってみると、服全体の傷みや着古しがないものや、お気に入りの部屋着とか靴下、布巾やミトンなどの布小物にならアリかもと思っています。
細かい作業のわりに単純なのでそんなに時間がかからないため、「もうちょっとやりたい!」という物足りなさがあるのも高ポイントです(あまりに終わりが見えない手芸は飽きちゃうから)。
また、なにか手頃なものに穴が開いたらやってみたいなと思ってます。「ダーニング」でちょっと検索したらミシンがいくつかヒットしたんですが、ミシンを使えばさくっと繕えるのでしょうか。縫い物はあまりやらないのでミシンも持っておらず、そのあたりはよくわかりません。色々できる人になりたい。ミシンも気になってます、ひそかに。
kn.hatenablog.jp
主に編み物、時々料理の「手仕事」カテゴリ。
今年の編み物はじめ(すべり目を使ったニット帽)
編み物はじめました
さてさて、寒露を過ぎてすっかり秋めいてきましたね。日が短くなり、虫の声が聞こえてくると編み物欲がむくむくと湧いてきます。
涼しくなってきたので、今年も編み物はじめました(軒先に幟を出しながら) pic.twitter.com/eABaXJK0LR
— いさましいちびのこなやぎ (@tnhby) 2016年9月25日
これまで、9月中はまだ暑いからと毛糸を触る気になれず、もうちょっともうちょっとと先延ばしにした挙句、完全に秋になってから(ちょうど今くらいの時期)わー!編み物しなきゃ!と火が付くというのが常だったのですが、それだとニットが編み上がるよりも冬の到来の方が先になっちゃうんですよね。そして、シーズン2作目、3作目が完成するころには年が明けていたり、下手すると立春越えていたりして、その年作ったものをあまり使えないまま暖かくなっちゃったりして。
今年はその教訓を踏まえ、ちょっと早めに編み始めてみました。たまには完成ほやほやのニットを用意して冬将軍を迎え撃ってみたいと思いましてね!!
というわけで、今シーズンの第一号ニット、「雲と山の帽子」です。
オリジナルではなく、三國万里子さんの書籍から。
- 作者: 三國万里子
- 出版社/メーカー: 文化出版局
- 発売日: 2013/10/19
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雑誌『毛糸だま』で以前すべり目技法の特集をちらっと読んで以来、気になっていたんです。
毛糸だま 2014年 冬号 No.164 (Let’s Knit series)
- 出版社/メーカー: 日本ヴォーグ社
- 発売日: 2014/11/05
- メディア: ムック
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この帽子の場合、ガーター編み部分とメリヤス編み部分を間違えないように気を付ける必要はありますが…(調子に乗ってバーッと編んで、間違えて何度か後戻りしました)
糸はまるで買ってきたかのように本の作品写真そのままのカラーなのですが、家にあったものを使いました。
以前友人にミトンをリクエストされて作った時のものです。
色や柄はお任せでと言ってもらえたので、友人をイメージして編みました。今も使ってもらえてるといいなあ。
この帽子が完成したのは実はもう10日ほど前のことで、今は同じく三國万里子さんの『編みものともだち』から別の大物に取り掛かっています。
それが終わったら、いよいよドイツのソックヤーンを使ってみたいなあなどと思いつつ…。
kn.hatenablog.jp
ちょっと近況
最近、お仕事で文章を書くことが多くなるにつれ、余暇に文章を書くことから遠ざかりつつありました。
だけどこれはこれとして、楽しみでも訓練でもあるけれども、やっぱり余暇として書くことは大事ですよね。
編み物みたいに、語学学習や読書みたいに、時間を決めたりしながら書く時間を少しでも確保したいです。
訓練といえば、短歌も久しぶりすぎて詠み方をちょっと忘れてしまったような感じもします。短歌筋?短歌勘?そういうのがなまっているのかな。
kn.hatenablog.jp
ちょっとおまけ
帽子、今まで一番作っているアイテムかもしれない。エントリ上げたもの以外にも過去に色々作ってます。
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