つのへび日記

こなやぎのブログです。手仕事、語学、短歌、読書や映画など。

原書で読む『くまのパディントン』シリーズ(ほぼ)全レビュー

今も「出来る」とは言いがたいが、まだあんまり英語が出来なかった頃、リーディング力を鍛えるために選んだ教材が『くまのパディントン』シリーズだった。
その頃はまだ洋書コーナーが充実していた天神の丸善ジュンク堂書店で、一度に2~3冊ずつ購入し、1年くらいかけて『パディントン』シリーズをほぼ全部読んだ。

「ほぼ」というのは、同著者によるパディントンの名を冠する本は数多くあり(それこそ『パディントンと行くロンドン』的なガイド本まで)、それらすべてを追っているわけではないから。
挿絵がPeggy Fortnumによるシリーズ本編および、後継のA.W.Alley挿画による総集編的なものを1冊読んだ。

リーディング教材に「パディントン」を選んだ理由

英語読めねえなあ、と思いながら読んでいた行方昭夫『英文快読術』に紹介されていたことがきっかけ。

本文の短い引用とともに、「英米の子供が読めるのだからやさしい英語だろうとなめてかかると、背負い投げをくわされるかもしれない」とコメントがあり、じゃあ『パディントン』を読めればネイティブの児童並みの読解力が付くのか? と軽い気持ちで最初の1冊を買ってみた。
洋販の販促帯だかで、読者対象を確か「TOEIC460点以上」としていて(うろ覚え)、その時700くらいはあった自分は、楽勝じゃんと思った記憶がある。

ちなみに有名な話ではあるが、その手の販促帯の参考TOEICスコアは本当に参考にならないので注意。
個人的な感覚では、使われている語彙も表現も、クリスティの『オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)』の方がずっと易しいと感じた。

全11+1冊レビュー

邦訳が出ているタイトルについては、対応する福音館書店版の邦題も付した。
あらすじ引用も、福音館書店のWebサイトより。
そちらもやや大時代ではあるが味わい深い翻訳なので、ぜひあわせて楽しんでほしい。

A Bear Called Paddingtonくまのパディントン

ブラウン夫妻が初めてパディントンに会ったのは、パディントン駅のプラットホームでした。だから、クマには珍しい「パディントン」という名前が付けられました。暗黒の地ペルーから、1人で移民してきて、身寄りもなく駅の隅に佇んでいましたが、親切なブラウン夫妻にひきとられ、縦横無尽に活躍します。一度読み始めたらやめられない、おかしなおかしなクマのパディントンのお話の第1作目です。

記念すべき人生初の『パディントン』。ふつうに難しくてびっくりした。
倒置文もたびたび出てくるし、意味自体は易しいのに受験英語の上級単語帳にもないマイナー単語も多数、中には英国語彙ゆえに馴染みがないものもあったりと、かなり勉強になった。
こんな名詞知らん、と思って調べたら「(動物の)ひげ」だったりして(whiskers)脱力したのもいい思い出。
ネイティブの子どもが当たり前に知っていて、非母語話者に馴染みのない語というのがいかに多いかを確認するような読書だった。

しかし何より良かったのは、英語の勉強どうこう以前に物語がとても面白く、それ自体に推進力があるということだった。
パディントンのふるまいが一々可愛く周りの人間の切り返しも楽しく、「簡単な内容の本を嫌々勉強のために」という不毛な読書にならなかった。

More About Paddingtonパディントンのクリスマス)

ブラウンさん一家と共に過ごすパディントン。様々な大騒動を巻き起こしつつ、季節は夏から秋、そして冬へ向かいます。初めて雪を見たパディントンは大喜びですが、風邪をひいてしまい、介抱してもらいます。やがて一大行事のクリスマスを目前に準備にかかるブラウンさん一家。パディントンもバークリッジ(百貨店)に買い物へ同行するも、相変わらず騒動の渦中に……。パディントンが過ごした幸せなクリスマスのお話です。

相変わらず辞書や検索は必要で、文脈で判別した語も多かったものの、一冊目よりは楽に読めた。
ガイフォークスナイトをはじめ、(当時の)イギリス文化のカタログとしても面白い。
ロンドンに来たばかりの時に彼が初めて行った百貨店Barkridgesは恐らくSelfridgesが元ネタなので、今回の老舗百貨店はF&Mかな、などと元ネタ探しも楽しい。
パ氏は話し方こそルーシーおばさん仕込みの慇懃なロンドン英語を身に着けているものの、綴り方は苦手で自分の名をPadingtunと書いてしまったりもする。
本シリーズの対象読者は8~12歳とあるので、読者はパ氏に自身を投影させながら成長していくのかもしれない。

Paddington Helps Out(パディントンの一周年記念)

好奇心あふれるくまのパディントンが、必ず巻き起こす大騒動は、ピクニック、日曜大工、映画館でも相変わらず。そんな憎めないパディントンがブラウン家に来て暮らすようになってから1年とちょっとたちました。ブラウン家の一同は誕生日と1周年記念を合わせてお祝いしようと計画を立て、高級レストラン「ポーチェスター」でパーティーをすることになりましたが……。もちろんお約束の抱腹絶倒の大騒動が始まります。

友人で古道具屋店主のGruber氏に連れられてオークションへ参加し、次章ではうっかり競り落とした大工道具でDIYに挑戦するところが面白かった。
オークション特有の符牒みたいなものをこの章で何となく知ったが、ネイティブの子どももこういう場面から「大人の世界」を少しずつ知っていくのかもしれない。

ドジでも真心を評価されたり棚ぼたで何とかなるパ氏と対照的に、前作から登場の隣人Curry氏は非常に徳のない人物で何かと被害を受ける役回りなのだが、今回は彼にも怪我の功名的なラッキーが起こったのは良かったなと思った。

Paddington Abroad(パディントン フランスへ)

ブラウンさん一家が夏休みにフランス旅行をする計画を立てた時から、お決まりの大騒動が持ち上がります。まずは銀行へ行ったパディントンが、警察や消防まで巻き込んであわや逮捕の寸前。空港ではパスポートでひっかかり、国際スパイグマ疑惑をかけられる珍道中の末、やっとフランスに。現地でも次から次へと騒動の連続……。ついには自転車レースのツールドフランスパディントンが登場!

ブラウンさん一家がいつものロンドンのおうちを飛び出し、フランスでバカンスを楽しむ回。
最後にはとうとうツール・ド・フランスにパ氏が参戦してしまうという旅の本編も面白いけれど、旅行前の準備の場面の、ウキウキとばたばたが同居する幸せな空気感が最高に良かった。
家族は顔を合わせると仏語で“excuse me”を言い合い、バードさんはパ氏のために迷子札を手作りする。
最高級の革で出来ているそれには、ブラウン家の住所にくわえ数種類の言語で「見つけた方には謝礼を(Finder will be rewarded)」との文言が。

パディントンは密航グマではないのか?海外旅行大丈夫?という謎が解ける回でもある。

Paddington At Large(パディントンとテレビ)

ブラウン家で暮らす、くまのパディントンはそそっかしくて好奇心旺盛。ちょっと思いこみが強くて融通がきかないために巻き起こる騒動の数々……。それでもブラウン家の人たちも、近所の人々も、なぜかみんなパディントンを好きになっていく。そんな愛すべきくまのお話。今回はテレビのクイズ番組に出演したパディントン。アナウンサーと抱腹絶倒の珍問答を交わしたあげく、みごとに賞金を獲得します。賞金の使い道とは……。

ブラウン家に初めてテレビがやって来た回、と言えば本シリーズがかなりのロングセラーであることが分かるとおもう。

安売りの種のミックスを買って園芸を始めてみたらgreen thumbsならぬ”green paws”の持ち主だと判明したり、お巡りさんに追われたかと思うと警察署へ助けを求めたり、救急車で病院に運ばれたりと今回もドタバタ劇が展開。
これまで分かる通り、パ氏がなんかやらかすことが物語の起点になるというのがお決まりのパターンなので、ドジっ子ヒロイン的な要素にイライラする人にはたぶん向いてないかもしれない。(私は「まあ子グマだからな……」で許せるタイプ)

時期を前後して『帳簿の世界史』を読んでいたため、パ氏が自分の帳簿を付けている(しかも複式)と判明してかなり興奮した。

Paddington Marches On(パディントンの煙突掃除)

ブラウン家で暮らす、くまのパディントンはそそっかしくて好奇心旺盛。ちょっと思いこみが強くて融通がきかないために巻き起こる騒動の数々……。それでもなぜかみんなパディントンを好きになっていく。そんな愛すべきくまのお話。今回も煙突掃除に、バス旅行に、クリケットの対抗試合に、大活躍。そしてペルーのおばさんの100歳のお祝いに、生まれ故郷のペルーへ旅行に出かけることになりました。その見送りパーティーで……。

大寒波のロンドンから始まり、グルーバーさんとのプチ観光、英国紳士の嗜みクリケットに挑戦(これが好プレー連発というご都合主義!笑)など。
Peggy Fortnum氏によるラフでユルい挿し絵が私は好きで、本シリーズの魅力はこれによるところが大きいと信じているのだが、本作ではフードにマフラーの極寒コーデ、煙突掃除の煤まみれ姿、クリケット装備などいつも以上に可愛いパ氏のコスプレ(?)を堪能できる。

最後はブラウンさん達のパディントンへの愛情に涙。
うちに来てどのくらいになると思う?と訊かれてI don't know, it feels like always.と答えるパ氏がいとおしい。

Paddington at Work(パディントン妙技公開)

ブラウン家で暮らす、くまのパディントンはそそっかしくて好奇心旺盛。ちょっと思いこみが強くて融通がきかないために巻き起こる騒動の数々……。それでもなぜかみんなパディントンを好きになっていくそんな愛すべきくまのお話。今回は、ペルーからの帰国の船旅にはじまり、なつかしいブラウン一家のもとにもどったパディントンが、前にもましての大活躍。株でご難にあったり、床屋になったり、バレエも踊ります!

前作終わりでペルーへ帰ることになり、皆に送り出してもらったパ氏。
いよいよルーシーおばさん登場かと期待したものの、本作は帰途の洋上から始まる。

パ氏には「11時のおやつ」をともにするグルーバーさんという友人がいるのだが、彼の営む骨董店に入り浸るうちにいつのまにかパ氏がアンティークの審美眼を身に付けていたのには笑った。
ところで、現代の私たちには「爆買い観光客」というと2010年代中頃あたりの中国人のイメージが強いかと思うが、このシリーズにしばしば爆買い観光客のアイコンとして米国人が出てくるのは興味深い。

Paddington Goes to Town(パディントン 街へ行く)

パディントンは、一度もクリスマスの飾りつけを見たことがありません。ある夜、ブラウン一家みんなで、街に繰り出すことにしました。車中、交通渋滞だったので、みんなでにぎやかなロンドン通りを歩きはじめました。頭上に吊り下げられた何百万という星のように輝くライトを見上げる人でごった返しています。すると、パディントンの身に、またもやひと騒動がふりかかりますが……。

さすがにマンネリ気味か、そろそろやめるかと思うものの、読んでると面白くてまた次を読みたくなる不思議。
病院での、精神科医とのコントみたいなやりとりはバスの中で読んでて笑いを堪えるのが大変だった。
Baked Alaskaや炉端で売っている焼き栗など、食べ物が美味しそうな場面が多い回でもある。
有能な家政婦バードさんのツンデレぶりも楽しめる。

Paddington Takes the Airパディントンのラストダンス)

そそっかしくて好奇心旺盛な人気者のクマ、パディントン。ミシンでズボンを直せば見るも無残な結果に。馬術競技で馬に乗れば後ろ向き。フェスティバル会場では、いつのまにか筋肉隆々男と対決することに……。はりきって出かけた舞踏会でも失敗ばかりですが、最後はたくさん練習した社交ダンスを踊り、拍手喝采を浴びます。

お手製のeverlasting toffee(なめてもなめてもなくならないトフィー)が原因で歯医者へ行く話に笑い、ミシンでお直しに挑戦する回ではダッフルコートのポケットに穴が空いて…という物語の発端に流れた年月を思い(そして毎回犠牲になるカリー氏の持ち物…)、最後はダンスパーティに招かれたりと、本作でも英国文化とその語彙を堪能できた。
クラシックカーや乗馬の回などはニッチな単語ばかりになるので、結構わからない語が多かった。

Paddington on Top(パディントンの大切な家族)

シリーズも10巻目を迎え、ますます目が離せないパディントン・ワールド。初めて学校に行ったパディントン、先生の出した問題にはりきって手を挙げたのはいいけれど、飛び出す答えはパディントン流。はたまた、ひょんなことから法廷の証言台に?! 水上スキーで宙を舞ったかと思えば、ラグビーの珍プレーでチームを救うなど、スポーツでも大活躍します。そして、いよいよペルーに住むルーシーおばさんの登場で、物語はクライマックスへ……。

遂に、遂にDarkest Peruからルーシーおばさんがやってきた!の回。
教養深くて意思が固くて情に厚い彼女は去り際もかっこよく、バードさんの次に好きなキャラになった。
消費者相談ぽい回もあり、雑誌の広告って昔からこんななのか、と失笑したが、当時そういうものが社会問題になり始めていたのかもしれない。

中流階級ブラウンさん一家の「金持ち喧嘩せず」的なおっとり感は本当に心地よい。
例えばルーシーおばさんの帰国後、彼女にもっと色々聞きたいことがあった、とパディントンの出自やペルーのクマの生態などについて詮索したがるジュディたちをバードさんが窘めて言う「Don't you think that in this world it's rather nice to have some things left unanswered?(世の中にはわからないままのことがあってもいいのじゃないかしら)」とか、そういうところ。

Paddington Takes the Test

福音館版の邦訳は上記の10冊のみなので、こちらは未邦訳(ちゃんと探したわけではないが、たぶん)。
タイトルの「パディントン、テストを受ける」は冒頭のエピソードである、運転免許試験場で実地テストを受ける場面を指している。
この回のように、パディントンが何の関係もないところからひょんな誤解でトラブルに巻き込まれるさまは落語の三題噺みたいで、そうくるか!と毎回にやにやしてしまう。

パ氏にお手伝いを頼んでは不運を一身に受けるケチのカリーさんは、今までで一番の生命の危機にさらされていた。
本作からは、パ氏のお小遣いが物価上昇に見合わなくなっているということでめでたく昇給。
そういうところがさすが長期シリーズだなあと感心したが、もしかしたら読者から指摘があったのかもしれない。

Love from Paddington

シリーズ全エピソードからいくつかを抜粋し、パディントン(代筆:ジュディ)と時々ルーシーおばさんによる書簡体でそれらを語りなおしたという趣向の、総集編的な1冊。
最後2篇で取り上げられたエピソードは上記までの11冊に含まれないため知らなかったが、面白く読んだ。

本作はすでに挿絵画家がバトンタッチしていて、こちらの絵もファンシーでザ・児童絵本って感じでかわいい。
でも私はやっぱりPeggy Fortnumさんの描くラフな挿し絵が味わいぶかく、吹き出すようなおかしみもあって好きだ。

最近ブロックメモのグッズを見つけて、かわいくて買ってしまった。

メモ用紙の絵柄は全部で4種類

おまけ:実写映画版も(1作目だけ)観た

filmarks.com

原作ガチオタらしい気持ちの悪いレビューを書いているけれども、総合的には好きだ。
特に原作にないスチームパンク的な雰囲気が良くて、2010年台に「古くて新しい」物語を実写映画にすることの創意工夫を感じた。
2も気が向いたら見てみたい。

おわりに

前からずっと書きたかったトピックではあったけど、当時の感想をベースに書いたので、今読めばまた違った発見があるのかもしれない。
また1年くらいかけてゆっくり2周目を読むのもよさそう。
とりあえず来年の目標のひとつに入れておく。

2021年に観て面白かった映像コンテンツ10選(アニメ、映画、Youtubeほか)

(最終更新日:2022/8/27)

家で動画を観る習慣のはじまり

2020年の春まではあまり家で動画を観る習慣がなかったのだが、コロナ禍から映画館へ行けなくなり、動画配信サービスを使う頻度が上がった。
ただ、当初は6インチのスマホで観ていたので、あまり集中すると目が疲れる。
「ながら見」でBGMにできるような既知の映画をもう一度再生することが多くなり、新しいコンテンツへは積極的には手を出していなかった。

状況が変わったのが今年の半ばのこと。
AmazonプライムデーセールでFireを購入したのだ。

8インチと小ぶりなのだが、もともとの目的だったKindle読書もはかどるし、手持ちのスマホスタンドに立てかけてもぐらつかない。
その後ノートPCも購入したことで出番は消えるかに思われたが、やっぱり持ち運び出来るというメリットは大きくて、今もなんだかんだ毎日使っている。

ちなみに使っているスマホスタンドはこれ。ハイタイドのシンプルなもの。

「とりあえず観てみる」へのハードルの低下

私はあまり連続視聴するコンテンツを完走できなくて、ドラマでも何でもすぐ途中で放置してしまう。
もしくは振り落とされてしまう。

アニメに関して言えば、たとえ2時間で完結する映画であっても今まで観たことがあるものはかなり少ない。
2020年時点で最後に観たアニメは「響け!ユーフォニアム」かまどマギのどちらかで、それだって日本語コンテンツに飢えていた中国留学時代(2015年頃)に視聴したのだった。
kn.hatenablog.jp

だけどFireを毎日使うようになって、ちょっとそのあたりへのハードルが下がったのか、割とどんなジャンルの動画でも軽率に再生ボタンを押してみることが増えた。
「最後まで読まなくていい権利」は読者の権利10ヶ条*1の一つだが、映像コンテンツにもそれは言える。

私たちにはコンテンツへ手を出す自由もスルーする自由もあるし、いったん手を出したものを放棄する自由もある。
合わなかったからと途中で観るのをやめても、誰にも怒られないし怒られる筋合いもない。
映画を倍速でどうのこうのしたり、あらすじだけ読んで満足するのはけしからんというのにしても、じっさい好きにすればいいのだ。
人の持てる時間をどう使おうが、その人の勝手なのだから。
(告白するが、私も6~7割の作品はプロットを知れば満足してしまうので「作品名 ネタバレ」で検索することがある)

2021年に観て面白かった映像コンテンツ

新作・旧作にかかわらず列挙した。

1.PUIPUIモルカー

Fire購入後、最初に観た連続テレビアニメがこれだった。
1話あたりの時間が短いのでちょっと観てみるか、という気になったのだが、面白かわいさにすっかりハマった。
シロモが不憫かわいい2話と6話、ストーリーが楽しい5話、10話、11話が特にお気に入り。

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2.ゴールデンカムイ

原作マンガにがっつりハマった延長で手を出した(2期まで)。
kn.hatenablog.jp
絵は粗いし、原作の醍醐味である大脱線や大風呂敷がそっくりそのまま楽しめないのは確かに残念ではある。
しかし、極力流れを壊さないように(かつ色々なものに抵触しないように)12話1クールの放送枠に落とし込む技術は相当なものだとおもう。
本作を観てあらためて、週刊連載漫画からTVアニメへというのもアダプテーションの一形態なのだな、と思った。

3.かげきしょうじょ!

アマプラのホーム画面によく出てくるので軽率に観はじめ、一週間ほどで第一期完走。
最初さらさちゃんのことをルフィ型の破天荒天然タイプの主人公なんだと思って、あまり好きになれなかった。
しかし、回を重ねるにつけ明らかになったのは「登場人物たちはみなこの物語の舞台に上がった時点で『選ばれし乙女*2』だということ」だ。
つまり何らかの才能があることは大前提で、なおかつ才能だけあってもだめなのであった。
その厳しさ、熱さに、思わず全員を応援したくなる。

ただし視聴の際は下記の点に留意されたし。


補足すると、ツイート中に「キモオタさん」と書いているのは、作中でステレオタイプなオタク容姿の男性をキラキラ女子(主人公)が直接そのように呼ぶシーンが(ギャグ文脈で)あるからです。

歌劇団がテーマのアニメなのだから、そりゃ全体的な世界観もある程度ルッキズムを肯定してしかるべきなのだろう。
でも、愛ちゃんの幼少期のつらいエピソード(性被害)は悲しいつらい!それと同時に、もさい男性をキモオタと呼んで笑いを取るのはOK!というのはさすがに何なの?と眉をひそめた。もやもや。

原作マンガは結構ストーリーが進んでいそうで、気になってます。二期まだかな!

4.映像研には手を出すな!

これも軽率に観はじめた。そして実は第3話まで観て止まっている。
それは単純に私の経験値が低いからであって、アニメにあまり親しんでこなかった身には情報量があまりに多いので、咀嚼しながら少しずつと思っているのだった。
げんに3話を観たあとで他のアニメを観ると、「ははあ、こうやって作画の省エネをおこなっているのね」と勉強になる。
脳のキャパに余裕があるときに、徐々に続きを観たい。

5.ダンベル何キロ持てる?

元々原作を数巻読んで好きだったので、アマプラのホーム画面で見つけてこれも軽率に。
まず、声がみんなすごく合ってる!本当にイメージ通り。
ひびきちゃんがめちゃ可愛いし、ギャグも原作同等かそれ以上に面白い!
女の子キャラそれぞれの違う魅力が存分に発揮されている。

音楽も全体的に(SE含め)好き。オープニングの曲が特に好き。
こういう「主題歌!!」って感じのテーマソングがあるとアガる。

金カムと並行してくらいのタイミングで観ていたので(比較的)絵がきれいだなーと思っていたけど、「映像研」で説明されていた省略の技法がたくさん使われていて合点がいった。

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原作も面白いし筋トレの知識も増える。けっこう男性向け描写(女性の身体のパーツを性的に強調したり)が多いので、苦手な方は注意。
私はこういう健康的なカラッとしたお色気描写は好きなので、楽しめました。

6.スーパーカブ

これもアマプラで。
普通自動車運転免許すら持ってないしバイクにもカブにも乗る予定は今のところないけど、今まで一度も行ったことのない北関東(舞台は山梨県北杜市)の地理や生活を垣間見れて面白かった。

風景描写がとてもきれいだし、ちょっと非現実的な設定なのもいい。
福岡市内が舞台だとまず成立しないタイプの物語(すぐ地下鉄か西鉄バスに乗っちゃうから)。

北杜市ふるさと納税をちょっと真面目に検討しかけた。
だって金精軒もシャトレーゼも選べるんだもの。

原作はライトノベルのようで、大学生編に続くみたい。二期あるかな~?

7.ひつじが好き

アマプラはわりと動物ドキュメンタリーが充実している。たとえば密着! ネコの一週間 (吹替版)なども、大人が真面目な研究を頑張る系で大好きだが*3、これは日本各地の牧場にいるひつじの生活を追っていて面白かった。

なんとなくひつじ=北海道と思っていたけど、意外と他の地域にもいた。毛刈りのシーンは気持ちよくてずっと見ていられる。
ニッターは高確率でひつじ好きだと思うので、ニッターにもおすすめです。

8.みんなで筋肉体操

アマプラのNHKオンデマンドは全部有料かと思いきやそうでもなくて、これは無料で1シーズン分を視聴できた。
テレビがないので、ようやくTwitterで騒がれていた筋肉体操を把握。

テレビ体操のようなゆるいものかと思っていたら、内容はずっとハードで、しっかり汗をかくかんじ。
好きなフレーズは「浅いスクワットは浅はかなスクワット」「頑張れなくなったら、超頑張ればいいじゃない!」です。

9.ほえる犬は噛まない

これはGYAO!の無料期間中に観たが、今はAmazonでもプライム特典入りしてる。

映画の感想はfilmarksに書いたが、GYAO!はとかく頻繁に広告が入る。
でも実際ぶつ切りにされても面白い映画は面白く楽しめるなってことが、本作の視聴でわかった。
なので時間がないときは小分けに観てもいいやって思えるようになって、映画へのハードルがまたひとつ下がった。
言うほどそれから観てないけど。

10.のがちゃんねる

私がこの一年でもっとも多く視聴した動画コンテンツ。
夜ごはんのあと「今日はどれにしようかな」と選んでその日のコンディションとか忙しさに合わせて決めてやって、プロテイン飲んで、というのがルーティン化しつつある。
未体験の方はとりあえずこの5分のをやってみて、できなかったら2分からやり直し、出来たら他の動画もってやってみるといいと思います。

www.youtube.com

長くなりましたが以上です。

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

*1:readingmonkey.blog.fc2.com

*2:これをタイトルに冠した第5話は2回観て2回泣いた。と同時に「パッと見平凡キャラ」もしっかり才能があるからここにいるんだよな…「普通の子」が到達できない場所なんだもんな…一体誰に感情移入したらいいんや…と打ちひしがれる思いだった。感情移入、別にする必要はないんだけど。

*3:この本を彷彿とさせるコンセプトだが、もっと大掛かりで科学的捜査なのが笑えて興味深い。

コロナ禍における宅トレの記録(1)ステイホームとアクション映画

体を動かすことが好きだ。
もっと言えば、一人で黙々と体を動かすことが好きだ。
何かを定点観測してその結果を確認することも好きだし、機能性のある物も、それを使いこなすさまを見ることも好きだ。
例えばマーシャルアーツ。殺陣。いわゆるアクション映画の、特にアクション成分濃厚なもの。

2020年の初め頃から映画館へ足を運ぶ代わりにAmazonプライムビデオで映画を見ることが多くなり、まずプライム特典の「イップ・マン」シリーズからドニー・イェンにハマった。

ドニー・イェンの「イップ・マン」シリーズは4部作で、どれもそれぞれ良さもツッコミどころもあるけど、私はこの2作目が一番すき。
しかしスローモーションの多用さえなければ3作目の「イップマン 継承」が一番だと思う。
「継承」はストーリー性も(比較的)高くて、アクション好き以外からも割合人気が高いように見える。

その流れで、「継承」のライバル役・マックス・チャン演じる張天志(チョン・ティンチ)が主人公のスピンオフ、「イップ・マン外伝 マスターZ」にハマった。

個人的にはさほど「イップ・マン」本編に思い入れがあるわけでもないというのもあり、どうかすると本編より好きかもしれない。
主人公のチョン・ティンチだけじゃなく、ヒロイン、その兄、界隈を仕切る女親分など主要人物がだいたいカンフー使いという異様なアクション濃度の高さが良くて、香港のネオン看板の上での戦いや、華奢なマックス・チャンがどう見ても力負けせざるを得ないパワー系ボスとの一騎打ちなど、いちいちシチュエーションが凝っている。
女親分演じるミシェル・ヨーも、気風のいい姉御の役がすごくハマっててかっこいい。
これを書いているうちに無性に観たくなったので、書きながらまたAmazonプライムビデオで流し始めた。プライム特典最高。

そしてごく自然な流れから「殺破狼2」も観る。そしてハマる。
マックス・チャンが悪役のめちゃくちゃ強い獄長(刑務所長)を演じていて、端正な見た目とスーツ姿から繰り出されるアクションが華麗。このまま香港版キングスマンを撮ってほしい。
そして「継承」でいかにも無理やり出番を作ったような「謎の殺し屋」役だったトニー・ジャーが本作のダブル主演の一人で、娘思いの心優しき看守(なぜかムエタイが超強い)を演じている。ダサい邦題の「マッハ」の部分はこの人のせいです(「マッハ!」という主演の先行作品(ムエタイ映画)があるため)。
もう一人の主演、ウー・ジンを交えた終盤の3人でのバトルシーンは、本当に美しくてスピード感があって最高だ。

そんなわけで思った。
私も体を動かしたい!あわよくばマッチョになりたい!!と。

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とりあえず「workout」かなんかで検索候補の上位に出てきた無料アプリをダウンロードしてみた。
部位別・難易度別に鍛えられるプログラムで、インターバルが長めに取ってある(調節可能)。そして1回あたりのセットも長め。
シンプルかつそこそこ親切な作りだし、プログラムも充実している。やる気が起きないときはストレッチのプログラムのみでお茶を濁すことだってできる。
しかし難易度が高まるにつれてトレーニング内容や量も増えるため、最高難度のセットは1セット30分近くかかる(これが後々のネックになる)。

とりあえず手始めに28日間連続のワークアウトセットを完了し、その後は徐々に低難易度のものから部位を変えながら日課として筋トレをするようにした。
ちなみにこの頃の目標は「トリプルX:再起動」出演時のドニー・イェン


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こんな50代いる?

ちなみに、「トリプルX:再起動」のようなドニー・イェンMMA(Mixed Martial Arts)を堪能したい向きには、「導火線 FLASH POINT」がおすすめ。
ルイス・クーとファン・ビンビンが画面に華を添えるものの、そこら辺含めた潜入捜査物のストーリーがスーッと薄くなる代わりに徐々にアクション一色になって、最後はコリン・チョウとの圧倒的な一騎打ちが延々続く、アクションオタクというかMMAオタクによるMMAオタクのための映画になる。そこがよい。

最近プライム特典に追加されているのですよ。このストーリーが二の次のアクションバカ映画が…。すごいことです。

ともあれ、上記のアプリで毎日トレーニングセットをこなすうちに、数か月後には最難度の腹筋プログラムをこなせるようになった。
私は体が固いので最初はインチワームがとても苦手だったのだが、続けるうちにだんだん出来るようになって、それがとても嬉しかった。
インターバルも、最初はデフォルト設定の30秒をまるまる使わないとへとへとで動けなかったのが、自分で設定を変えて短縮するようになった。

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7月頃から取り始めたボディサイズの記録。下腹と太もものサイズが落ちているのがわかる。
特に太ももは、鍛えるうちになんだか丸くてぽよんとしていたフォルムが、ひし形というか流線形のようになってかっこよくなった。
ボディメイクは自分の意志力と行動力の結果が比較的早く反映されるので、良い結果が伴うとますますやる気が出る。

話は反れるが、同じ理由から、私はすんなりと結果が出にくい遅効性の勉強(語学など)と筋トレは並行しておこなうべきだと思っている。
遅効性の勉強へのモチベーションが下がっても、同じ日数だけ筋トレを続けていれば可視化できる成果は何であれ手元に残っているし、それを確かめることで日々の勉強の積み重ねを実感できるので。

しかしながら、10月頃から忙しかった仕事がますます多忙になり、筋トレへ割くエネルギーとモチベーションが生み出せなくなってくる。
前述のとおり、高難度のトレーニングメニューは量が多くて時間も長い。
次第に低難度で短時間のトレーニングやストレッチでお茶を濁す日数が多くなり、とうとう連続日数も途切れ、筋トレをやらない日が増えてきた。
そして11月末ごろ、心身の調子を崩してしまった。

kn.hatenablog.jp

続く!

清廉でうつくしい、中国映画『胡同の理髪師(原題:剃头匠)』感想文

市役所での転入手続きも済んだので、先日さっそく市の図書館で貸出カードを作りました。
図書館のサービスはなかなか良くて、もう少し使いなれたらそのうちこれで一つ記事を書こうかなーと思っています。


総合図書館は大きくて、中に喫茶店、学習室、飲食スペースのほかミニシアターも入っていて、収蔵している映像資料・作品から月替わりでプログラムを組んだものが上映されています。

今月はアジア映画名作選ということだったので、気になる映画の上映に合わせて、貸出カードを作りに行ったというわけです。

その映画『胡同の理髪師』のあらすじはこちら。(引用:福岡市総合図書館映像ホール・シネラ 映画解説から)

93歳のチンさんは12歳の時から北京の古い街角で理髪師として働いてきた。客は馴染の老人たちだが,知り合いは次々に引っ越していく。そして近く家が取り壊されることを通知される。北京市の胡同に暮らす老人たちを丹念に描いた作品。チンさんは俳優ではなく,胡同に暮らす現役の理髪師。消えつつある街並みを哀惜を込めて描き出す。

予告編はこちら。

映画 「胡同(フートン)の理髪師」 (06 中/0802 日本公開) 予告編


この映画は上海国際映画祭でメディア大賞、インドのゴヤ国際映画祭で「金孔雀賞(映画通でないので、それがどのくらいすごい賞なのか解りかねますが…)」を受賞したということで、日本でも2008年に岩波ホールなどで上映されたようです。

以下の感想では内容に触れますので、ネタバレが嫌な方は読み飛ばしてください。




映画は剃刀を当てる音から始まります。丹念に顔を剃られている男性が、最後にタオルで顔を拭かれて「舒服啊(気持ちいい…)」とつぶやく。そんなシーンから幕を開ける本作は、物静かで、ノスタルジックで、衒いのない美しさに満ちています。

主人公のチンさん(敬大爷)を演じているのは、本物の「剃头匠」である靖奎氏で、登場する近所のホルモン屋なども実在する(した?)ようです。幹線道路は大きな輸入車で渋滞する一方、チンさんがリアカー付き三輪車で往来する「老街」の界隈はまだ昔ながらの狭い胡同が残っています。つけっぱなしのテレビからは北京五輪まで1000日弱のニュース、その沸き立つ声を聞きながらのんびり麻雀を打つ老人たち。話題は亡くなっていく友人のこと、心配な子どもや我が身のこと……。

チンさんはまさしく清廉潔白といった人物で、どんなに物価が高騰しても理髪代はいつも5元(90~100日本円)、子への不満をもらす友人には「彼らの世代も大変なんだよ」とたしなめ、愚痴をこぼす息子にはそっと自らの蓄えを渡すなど、温厚そのものです。同志の訃報に接するたびに、やがて来る自らの死を思い、できるだけ迷惑をかけず、さっぱりとしていなければと決意を新たにし、役人から自分の家を「取り壊し」と認定されても「なあに、自分が生きているうちはありえないよ」と嘯く一方で、身分証の更新で「20年有効」の新しいIDカードを受け取ってしまうところなどに、おかしみがあります。

北京市郊外に住む子世代の生活(潔癖なくらいにきれいな家に住み、フォルクスワーゲンに乗る)とチンさん達の胡同の対比もよくできていたと思います。それから、ご覧になった方で上記の「息子に自らの蓄えを渡す」シーンで、息子がろくに礼も言わずにチンさんの元を去ったところに違和感を感じた方も少なくないかもしれません。中国だと、家族や親しい間柄では、あまり感謝のあいさつはしないんですよね。本作中でも、殊更に「ありがとう」「すまないね」とチンさんが何度も声をかけていたのは、自分の肖像画を描いてくれた「友人の孫」の美術学生という、少し遠い間柄の人物くらいです。



ネタバレ終わり。

くすっとするシーンあり、しみじみと美しい場面もあり、とても引き算が美しい映画だなあと思いました。
監督はハスチョロー(中国語表記:哈斯朝鲁)。珍しい名だなと思いましたが、蒙古族なんですね。百度百科によると、ハスは「玉」、チョローは「石」を、それぞれモンゴル語で表すそうです。モンゴルでは父親の名を自らの姓にするそうなので、どちらかが彼自身のファーストネームなのでしょう。

ちなみに、主演の靖奎氏は今でももしかしてご存命なのかしら、と調べてみたところ、2014年11月付で訃報を伝えるニュース記事がありました。
101岁“剃头匠”靖奎离世_北京新闻·城事_新京报电子报
享年101歳、前月の下旬から肺炎で入院されていたとのこと。入院中も自分の子どもたち(実際は3男3女をもうけていた)の電話番号をそらで言えたりとしっかりされていたそうです。
記事によると、2007年からは近隣友人の逝去や自身の体力の低下のために、出張の散髪はせずに、もっぱら来た人に施術していたとのこと。映画のヒットのおかげで、テレビに取り上げられたり、国内外から会いに来る人がいたりと、ちょっとした有名人になっていたようですね。

映画の原題は「剃头匠」ですが、剃头刮脸といえば、昔ながらの理髪と顔そりをセットで行う、今の日本の理容店でおこなう施術を指すようです。現代中国では「理发(理髪)」ばかりを目にします。中国語の理には「いじる、かまう」の意味があるので、ヘアセットとかパーマとか、オプション的なことを元々指したのかもしれません(あくまで個人の印象で、未検証です)。

中国語のセリフについての解説等はこちらのサイトに面白いものがあります(ネタバレもあります)。
胡同の理髪師(剃头匠)_人民中国
このサイトにもあるように、劇中で話される北京語は、「老北京(生粋の北京っ子)」特有の、語尾のr化、nとngの顕著な区別などがたくさん味わえます。私は上海よりの地域に住んでいて、テレビもほとんど見なかったので、とても耳新しく、面白く聴きました。

この映画、DVDも出ているようですが、大きな声では言えませんがYouTubeで全編見れることを発見してしまいました。(ただし、英語と中文の字幕のみ)

The Old Barber 剃头匠 HD国语中字1280高清

これだけでも雰囲気は十分味わえるかと思います。
福岡市の総合図書館でも今月あと一度上映があるようなので、お住まいの方はぜひぜひ(料金は大人500円です)。

胡同の理髪師 [DVD]

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胡同物語(フートン) 消えゆく北京の街角

胡同物語(フートン) 消えゆく北京の街角

ようやく中国のポップカルチャーに手を出し始めました

語学上達の近道は諸説ありますが、中国語で「多听多说」と言われることがあります。 「たくさん聞いて、たくさん話す」ということですね。

片方はインプット、もう片方はアウトプット。

このうち、相手がいなくても一人でできるのがインプットの勉強です。

 

私が中国に来たばかりのころ、留学先の先生に強く勧められて、家にテレビを置きました。

新しく買ったのではなく、お世話になっている人から譲ってもらったものです。

聞く練習になるから、毎日見なさいと先生に言われました。

そこでしばらくは頑張って見ていました。一日15分必ず見ると決めていたときもあります。

 

が、長続きしませんでした。

面白くないからです。

 

中国のテレビが特別面白くないというわけではないのかもしれません。私は日本にいたころからテレビを持っておらず、手放して久しいので、もう「テレビ的なノリ」が体に合わなくなっているのかもしれません。ニュースはインターネットで見られるし(記事だけでなく映像ニュースも)、音楽番組にしろドラマにしろ、大して興味がないのだから面白くなくて当然なのでしょう。

ことばというものはまず第一に道具であり、何かをするための手段なので、好きなこと(あるいは必要なこと)をするための道具でなければ上手くならないのです。私は中国語の勉強がしたくて中国語の勉強をしているという、語学の勉強をするには一番上達しない動機で勉強しているので、もうそれだけで真っ当な動機がある方とくらべてハンデがあると考えていいでしょう(もちろん勉強は人と比べるものではありませんが)。

ちなみに中華料理のメニューは覚えるのめちゃくちゃ得意で、一度知った料理名はほぼ忘れないので、漢字の読み方を忘れた時は料理名を思い出して頭の中で逆引きしたりすることもあります。

 

とにかく、そんな私にも救世主が現れました。

ディーン・フジオカさんです!

 

基本的にベリークールな感じでやっているこのブログなので(少なくとも本人は)、なんか好きな俳優というか好きになった俳優について書くっていうのがだいぶ恥ずかしいのですが、このトピックを書かないことにはどうにも他のことについても書けないような心持ちなので、続けます。

 

私が10年ぶりくらいに朝ドラを見ているということは以前のエントリに書きましたが、ほぼ毎日見ているうちに五代様ことディーン・フジオカさんのファンになってしまいまして。 それで、台湾ドラマはじめ中華圏で活躍していらしたという情報を知って「そうだ、この今の自分の気持ちを利用して中国語を勉強できるのでは?これを逃したら、自分から恋愛ドラマを見るということなんてないのでは?」と気づいたのですよね。

 

というわけで、このエントリは、それらの彼の過去出演作をいくつか漁ったあとで書かれています。 文字通り「漁った」程度で深いレビューではないし、まだまだ全部見たわけではないのですが、原題と、有るものには邦題と、簡単な紹介をそれぞれ載せておきますので、各種動画サイト等で検索されるなり、ご自由にお使いください(中華系動画サイトは量は豊富なのですが、スパム型広告なども多いし、抵抗がある方も多いかなと思うので、あえてリンクは張らないでおきます)。これから何か見てみたいわとお思いの方や、中国語学習者の方のお役に立つことができれば幸いです。

どちらにも興味のない人には、今回若干キモいエントリになってしまいお詫び申し上げます。次回はエモいエントリを目指してがんばります。

 

 

 

 

ドラマ

 

 

『转角*遇到爱』(邦題『ホントの恋の見つけ方』、2007年):お嬢様ヒロインと熱血系主人公?とのラブコメです。台湾ドラマなので発音等はほぼ北京語と同じです。ディーンさんはヒロインが勤務する一流ホテルの宿泊客・人気ピアニストの安藤楓という日本人役で途中から登場します。劇中でピアノ演奏シーンと、日本語ほか英語・中国語・フランス語をしゃべるシーンがあります。

中華圏ではこの役の印象が強いようで、「あさが来た」を見た人が「これって转角遇到爱の安藤楓じゃない?」とネット上にコメントしているのをよく見ます。全部見たかったのですが、熱血系主人公(速水もこみち似)が顔も行動もしつこい上にドラマも全部で39集と長く、途中でリタイアしてしまいました…。日本では全23話で放送されていたようですね。気になってWikipediaの他の言語のページを見てみたら、スペイン語版では20話、フランス・イタリア・英語版では全16話とありました。ドラマを見るというのがやっぱり得意でないのか、他の出演作はそれからまだ見ていません…。

ホントの恋の*見つけかたDVD-BOX

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映画

『八月的故事』(邦題『八月の物語』2005年):香港制作の映画で、全編にわたって主に広東語が使われます。こちらは映画のダイジェスト版というか、長めの予告編のようなものを見ただけです。学校に入学するまでの一ヶ月(中華圏の学校は九月はじまり)、家のテーラーを手伝うヒロインと見習いとしてやってきた青年(ディーン・フジオカ)との交流を淡く描いた作品です。字幕をざっと追っただけなので間違っていたらすみません。

一通り北京語ができるようになってから、広東語の勉強にあらためて見ようと思っています。

 

『夏天的尾巴』(2007年):台湾の映画。10代向け青春ムービーで、ディーンさんはアキラという日本人を演じています。これも予告編を見たきりです。

 

『痞子英雄首部曲:全面开战』(邦題『ハーバー・クライシス<湾岸危機>』、2012年):はみ出し者の刑事「英雄」が活躍する人気ドラマシリーズの映画版第一部です。前にも後にもこれだけしか見ていませんが、十分楽しめました。本作は二時間半とちょっと尺が長めですが、署内では煙たがられている直情型の主人公と黒社会のセコい小物がひょんなことから悪を追うというバディ物で、ドンパチあり、アクションあり、ハイジャックありと、なんというかものすごい正攻法の超大作って感じです。 ディーンさんはリー捜査官という、エリートぽい捜査班のサブみたいな役で、これはこの班のボスが黒幕でリー捜査官はこのままフェイドアウトする感じなのかな…と思わせておきながら、実は…!みたいな、なかなか美味しい役です。ちょっと長いけど、最後までちゃんと見てよかった。あと北京語超ペラペラです。

 

 

 

MV

 

王心凌『这就是爱』(2007年):恥ずかしながらまったく存じ上げなかったのですが、シンディー・ワン(ワン・シンリン)は日本でも人気がある歌手らしいですね。台湾の歌手のMVにもいくつか出演されているディーンさんですが、こちらは「こんなヒモを飼いたいなー」と思わせてくれる素晴らしいMVです。

私はめでたく、この曲で初めてC-POPを歌えるようになりました。調子に乗ってクリスマスパーティのカラオケ大会でも歌いました。会話と違って声調が介入しないという問題があるものの、歌を歌えるようになると、口が慣れるのか、前よりスムーズに中国語のフレーズが口から出てくるようになった気がします。シンディー・ワンの曲は音域が自分に合ってるということもわかったので、とりあえずレパートリーを10曲に増やすのを目標に、色々聞いています。次は『爱你』歌えるようになりたいなー。かわいい。興味を持たれた方は、ぜひyoutubeなどで検索してみてください。

 

ということで、ポップカルチャーと言っても挙げたものの多くは10年近く前のものだったりするのですが、思わぬところで私の中国語生活がぐっと充実するようになりました。おおきに五代さん!もとい、ディーン・フジオカさん、ありがとう!

 

一時帰国の感想とか、やったこととか。

先月下旬に、土日を挟んだ4泊5日の日程で、中国から一時帰国しました。

今回のエントリは備忘録や反省も兼ねて、その時のことを書きます。

 

南通に来たのが今年の四月。

私は二か月間の夏休みにも帰国しなかったので、今回は半年ぶりの帰国です。

周りには結構ひんぱんに帰る人もいるのですが、何しろ上海の国際空港まで行くのにバスで3時間かかるので億劫で……。実際のフライトは、九州までなら一時間半くらい、東京でも二時間くらいなので、飛行機に乗ってしまえば楽なのですが。

 

今回は、夫が日本で用事があったので、それならついでに衣替えもしようということで、冬物衣類を取りに行くのが主な目的でした。

 

そのようにモチベーション低めな帰国ではあったのですが、福岡空港の入国管理の担当の方が私のパスポートを見て「帰国は久々ですか、半年ぶりですね、お帰りなさい」と笑顔で声をかけてくださったのがうれしくて、日本に帰ってきたんだなーという感じがしました。特に夫は上海の空港での殺伐とした対応に若干参っていたようで、それもあいまって件の対応に感激したようすでした。

あと、車が止まってくれる!すごいことです。中国はバリバリ自動車優先でしかも右折は常にフリーなので、歩行者信号が青でも油断ができませんので。福岡の街を歩きながら、横断歩道で止まってもらうたびに、日本だー!と実感していました。

 

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帰国直後、思わず撮っていた福岡空港二階レストランの食品サンプル

 

以下、今回の帰国中にやった主なこと。

  • 衣替え、もとい冬服の回収。とにかく寒くなるそうなので、防寒性の高さを優先。
  • グーグルが使えるので、気になっていたアプリをダウンロード。 
ディープリラクゼーション ヨガニードラ 寝たまんまヨガで簡単瞑想

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  • アーティスト: 執筆・ナレーション:今津貴美,音楽:Ty Burhoe(タイ バーホー),著作:スタジオ・ヨギー,販売元:株式会社ロハスインターナショナル
  • 出版社/メーカー: (株)ロハスインターナショナル
  • 発売日: 2011
  • メディア: CD
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  • この商品を含むブログ (1件) を見る
 
 

 なぜかアプリが検索できませんでしたが、これのアプリ。

無料のものしか今のところ聞いていませんが、すこーんと寝れます。おすすめです。

猫と学ぶ将棋の定跡

猫と学ぶ将棋の定跡

 

 将棋の定跡を勉強するために、調べて目星をつけておいたアプリ。

とりあえず、棒銀を使えるようになりました。

 

  • 本を買った

 来月のHSK対策に。

中文版を中国で買ったほうが安上がりでは、という向きもあるでしょうが、私は巻末の少しの分量とはいえ日本語解説があったほうが安心なので、こちらにしました。自分の能力が足りない分、余分にお金を払うことになるのだというのを素直に認めて心に刻みつつ、勉強頑張ります……!

MP3付 耳を鍛えて合格! HSK5級リスニングドリル

MP3付 耳を鍛えて合格! HSK5級リスニングドリル

 

 同上。

 将棋が強くなりたいので(以下略

まだ読んでません。

 

  • 来年のカレンダーとノートを買った

 このシリーズを使うのも三年目です!

岩合さんの作品には展示にも写真集にも一枚ずつ、写真の下に岩合さんの一言コメントがついているのですが、私はそこまでが作品の一部だと思ってます。もちろんカレンダーにもついてます。

  • キングスマンを観た

キック・アス」のファンなので、絶対にこれは観たかったのです。四月に映画の情報を知ってからやきもきしていたのですが、帰国時期と上映時期が重なって本当にラッキーでした。予告編ではおもしろ道具カタログみたいになってた感がありましたが、ストーリーも重厚でとてもよかったです。

ここまで書くと、予告編動画を貼らなければいけない気がしますが、YouTubeが使えない国から書いているので、出来ません…。悪しからずご了承ください。

 

食べものに関しては食べたかったものを着実に食べて行けたので満足です。あん肝、焼き牡蠣、焼きガニ最高。

ちなみに帰国して一番はじめに食べたのは、博多駅「だるま」のラーメン+明太子ごはんです。

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以下、やりたかったけどできなかった、あるいは忘れていたこと。

  • 万年筆のインクの買い足し
  • 蔵書(特にニット本)の回収
  • ショートブーツの買い足し
  • 猫ともう少し長く遊ぶ
  • 猫の爪を全部切る(半分くらいしか切れなかった)
  • キングスマンをもう一度観る

 

次回は関西やほかの場所にも行って、人に会ったりしたいです。

代理購入もほどほどにしよう。今回も、頼まれそうな人には知らせずに行ったり、一部断ったりもしましたけどね。そもそも買い物が好きではないのだと、再確認できました。

中国の映画館でインド映画『PK』を観ました


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留学生活ももうすぐ丸二ヶ月になんなんとしており、早く映画館デビューしたいなーと思いつつも、どうせならちゃんと好みの映画を観たいなーともじもじしていて、やっと観たい映画が出来たので、満を持して行ってきました!
 
特に熱心なインド映画ファンというわけではないのですが、アーミル・カーンの主演作は『きっと、うまくいく』が長尺ながらめちゃくちゃ面白かった覚えがあったので…。
原題は『PK』。中国語タイトルは『我的个神啊』。そのまま、oh, my god! みたいなニュアンスの語です。後でさわりだけ筋を紹介しますが、内容に沿っていて、結構いい題だと思います。ネイティブ的にはどうなんだろ?そして邦題はどうなるんでしょうか。
 
中国の映画館で映画を観るのは、「定価」は一本60元~80元くらいです。日本の1800円と比べると、あまり大差ないものの、若干安いですね。
ただし、そのままのお値段で買う人は少なく、オンラインで座席の予約+電子決済までしてしまうと2~3割り引き、時には半額以下で買えるそうで、ほとんどの人はそれを利用するのだとか。
 

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地域や映画から絞り込んで、時間の確認~席の確保まで出来るサイトです。決済には本人名義の銀行口座が必要だったので、今回は大学の友人に買ってもらい、60元→45元で観ることができました。
ちなみに上の画像にあるように、今はドラえもんの映画がヒットしており、ショッピングモール内のシネコンでは30分に一度という郊外のJRみたいなペースで上映されてます。若者にもドラえもん好きは多くて、たくさんキャラクターグッズを見かけます。ドラえもんグッズだけを扱ったショップもあります。(正規品か?については、まあ突っ込まないで下さい…)

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のっけから一人映画館にチャレンジするので、友人から決済兼予約画面のスクリーンショットを送ってもらい、あとは映画館に行くだけ!今回は繁華街のはずれにあるクラシックな映画館にバスで行きました。間違って一駅乗り過ごしたものの、なんとか到着。
映画館に着いてからは、券の引き換え機の場所が判らずおろおろしましたが、スタッフの女性が助けてくれたので、無事に発券できました!
 
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チケットです。ぺらっとしてます。レシートみたい。もぎられたあとの半券です。完全なうちに撮るのを忘れていました…。
 
今回のシアターは50席弱くらいの小さなところで、革張りのちょっといい感じのソファーで、全席カップルシートでしたw一人で来ている身としては、ゆったり使えて快適でした。お客さんも全部で10人いないくらいだったし。
 
いよいよ上映開始。日本のみたいに開始時間から優に15分はダラダラとCMが流れるということもなく、さっと始まるのが良いですね。
 
かくして本編が始まりましたが、ここで思わぬ誤算が…。
字幕がない!
吹き替え版であることは承知だったのですが、私は字幕も表示されると思い込んでいたのです。
 
なぜかというと、テレビ番組のドラマやバラエティだと字幕があるから。日本の番組の効果みたいなのではなく、普通のフォントでテロップが全文表示されるのです。
少し前のエントリの普通話のはなしとも繋がるのですが、書き言葉にはさほど差がないため、地方話(方言)のみしか解らなくても、テロップで内容が解るのです。
私もまだリスニングが弱いので、テレビを観る時はそれにあやかっていたのですが…。
 
まあ、ないものはしょうがないので、腹をくくって鑑賞しました。
さすがにディテールは解らないものの、普通に楽しめました!これが『おとなのけんか』みたいな会話劇なら絶望的ですが、まあインド映画なので!
 
今回の映画でアーミル・カーンが問題提起しているのは、なんと宗教。インドで…大丈夫なのか?と心配になりますが、実際あちらでは大成功したようで、彼自身の主演作のヒット記録を塗り替えたとのこと。
主人公のPKは地球外生命体で、事情がありインドの街をさまよう彼は、人々が口にする「神様」って誰だ?どこにいる?と素朴な疑問を持ちます。時を同じくして、恋人と運命的に出会った女の子ジャグは、彼がパキスタン人のムスリムであることから、父親に交際を反対されてしまい…。この2人が出会い、ジャグの父親が信仰する宗派の金満宗教家とガチンコ対決!という筋書きです。
 
《ここから少しネタバレしますので、前情報要らない!という方は飛ばして下さい》
 
 
 
 
宇宙人であるPKの目を通して、宗教だけでなく例えば貨幣制度や服装などの人々の常識を根っこから捉え直すという手法は、古典的ながらシニカルで楽しく、また、宇宙人というからには地球人にはない特殊能力があってしかるべきで、彼PKも例に漏れず、相手の両手を握ることで心を読むという力があるのですが、それによって物語の方向はハッピーなエンドへと決定づけられるのです。『きっと、うまくいく』同様、伏線の配置アンド回収も見事で、『きっと~』の時は「伏線すげえ!」という思いと「そりゃこんだけ長けりゃ(確か4時間弱)伏線張り放題やがな…」という思いが交錯したのですが、今回は文句なし、すっきりきれいです。
 
 
 
《ネタバレここまで》
 
日本は映倫さんがバリバリ仕事をしておられるためかなかなか新作映画の公開が遅いようで、日本の公開日ベースで情報をチェックしていると、今秋上映予定のものが中国では3月に終わっていたりと、時空のポケットに入ってしまったような悲しさを味わうことがあります。今回はたまたま百度で映画情報を漁っていて見つけたのでラッキーでした。
これからも現地の情報をうまくキャッチ出来るように、多聴多読で語学力を上げていきたい次第です。がるばんぞー。
 
あ!あとこれだけは書いておきたい!エンドロールに入ると同時に場内が明るくなって係員の人も掃除にきたのが、エンドロール最後まで観る派の自分にはツラかったです!思い出したので追記!
 
⇒2016/5/8追記
日本での公開が2016年秋に決定したようです。待ち遠しいですね!